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野田佳彦追悼演説への賛辞に対する違和感、そして焼肉(安倍総理を追悼する⑬)

安倍総理の国会の追悼演説を、野田佳彦が行った。

保守系論者も絶賛評価する声は多かった。しかし筆者は特に評価しない。追悼演説としては常識的なもので、それだけ野党の愚劣な批判が多すぎたことの反動だ。弔意に対してケチをつけるのもどうかと思ったが、社会通念としての通常の感覚がここまで持ち上げられるのは違和感しかない。銃弾に倒れた政敵にまともな敬意や弔意すら表せない野党に出るのは反吐だけだ。

そもそも、野田が総理の事績を同時に振り返って検証しないメディア報道がオオアマだ。前任者2人が余りにも無茶苦茶すぎたために野田の評価が相対的に高いことには筆者は強く違和感を感じる

筆者が野田内閣を評価しない理由として、対韓外交において、「慰安婦」問題を日本側から蒸し返しの確認をしたド素人外交で、野田が「悪化させた」張本人である点だ。(他にも尖閣「国有化」の不手際などもある)

2011年12月の日韓首脳会談(野田-李明博)ここで野田から不用意な「知恵を絞る」発言が出ている。

慰安婦問題に関し,李大統領からは,この問題が解決されれば様々な問題の解決に資する,この問題解決のために真の勇気が必要である等,慰安婦問題の 重要性,対処を求める話があった。野田総理からは,本件について我が国が一貫して明らかにしている法的立場に基づき,我が国の立場はご承知のとおりである 旨述べた上,これまで我が国は人道面での努力を行ってきたし,これからも人道的見地から知恵を絞っていくことを伝えた。在韓国大使館の前に建設された碑に 関して,野田総理から李大統領に碑の建設は残念なことである旨伝え,早期に撤去するよう求めた。

2011年12月18日日韓首脳会談(概要)外務省HP

野田本人は社交辞令のつもりだったのだろうが、そうはいくわけがない。案の定、これ以降は韓国側から「知恵を出せ」との督促を受ける構図に陥ってしまっている。民主党政権の素人外交そのもので、むしろこの尻ぬぐいで安倍内閣になってから非常に苦労している。鳩山の沖縄問題に匹敵するエラーだ。この点をメディアが意図的に無視している

そもそも要求は被害者側から出るのが一般的というか常識だが、この野田発言は韓国側にとっても渡りに船だった。なぜなら、慰安婦の一部支援団体が拒否権を持っている状態で韓国政府が当事者責任能力が無かったからだ。なお最終的拒否権を挺対協が持っている(いた、と過去形にしたいが)は
韓国側も実は認めていて趙世暎・元東北ア局長が2014年6月23日『産経』で告白している。

その後相手は朴槿恵大統領に代わる。彼女の父親・朴正熙が日韓基本条約の当事者でもある。韓国側も憲法裁判所での判決もあり、引くに引けない上に「知恵を絞る」約束をした野田発言があったゆえ、韓国側も慰安婦問題の解決なしに会談なしと条件つけた。この条件のクリアに非常に多くのエネルギーを費やした。この点を野田はどうとらえているのか問い詰めたい。
尻ぬぐいの2015年11月の安倍-朴槿恵の日韓首脳会談(ソウル)では激しい応酬もあった。

この交渉を踏まえてようやく2015年12月の日韓合意に至る。このとき事前に何度も安倍総理が「大丈夫なのか」と岸田外相に繰り返し確認の電話もしている。筆者には安倍総理が泉下からも電話したくてたまらない現在の状況があるように感じてならない。

そもそもは2011年8月10日に韓国憲法裁判所が「韓国政府が元慰安婦の賠償請求に関する日韓間の協定解釈の相違をめぐる争いを解決しないことは憲法違反」と判決を下したことに始まる。司法判断で外交が振り回されるのは、現在の旧朝鮮半島労働者訴訟判決問題と形が似ている点は重要だ。(拙稿参照)

現在も、韓国側はとにかく首脳会談をやりたがっている点は見逃せない。
これは、韓国側からすれば、かつて野田の不用意な発言を引き出せたことで日本側に対応責任を押し付け当事者責任を免れた成果と見ているからだ

日韓合意については筆者は当初から反対で疑問視したし、不本意ながら安倍総理が決断したなら最終的には、、と言うことで、非常に消極的ながら賛成した。おそらく岸田内閣で同じ内容だったら国内の保守派や党内保守系議員の反対でできなかっただろう。(逆に野田内閣で変な合意を作らずに退陣し安倍内閣に引継した点だけは辛うじて評価できるのかもしれない)

ここで追悼に戻ろう。2015年11月の日韓首脳会談は激しい応酬があったが、終了後のこと。朴槿恵大統領が安倍総理に「これからどうされますか」と聞いたという。正午前だったが、会談後の朴大統領との昼食は当初から予定にはなかった。「焼肉を食べに行きます」と答える安倍総理を、朴大統領はけげんな表情で見送ったそうだ。(産経新聞)

韓国だと1人の食事が非常に良くないので、安倍総理に批判的な韓国メディアも、来客に一人飯とはナニゴト!のようなノリで朴槿恵批判にも至った。

しかし、食べた焼肉店。ソウルの日本商工会関係者との会食だったようだ。仁寺洞(インサドン)という筆者には懐かしい界隈だ。

結構な高級店でもある。激しい応酬の後の焼肉とビールが旨くないはずがないのは常識だろう。

日本語のグルメガイド

安倍総理も焼肉が好きだったようだ。

過去形で語らざるを得ない寂しさは、焼肉の煙では隠せない。

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