見えなくてもパソコン

私が最初にパソコンに触れたのは盲学校を卒業してから。

つまり私にとってパソコンは見えなくなってからの文化であり、見えていた時の経験
は全く役に立たなかった。

しかも根っからの文系人間である私にとって機械類は最も避けて通りたいものであっ
た。

そんな私がなぜパソコンをやろうかと思ったかと言うと、たまたま家から5分くらい
の所で全盲の先生が視覚障碍者にパソコンを教えてくれる教室をやっていると教えて
もらったからである。

習い始めてしばらくはパソコンは買わなかった。

安い買い物ではない上途中で挫折して、家の中にでかいオブジェが残ってしまっても
邪魔なだけだと思ったからである。

しかし習っているうちに、家で復習しないと次に進めないと思い、先生についてきて
もらい、デスクトップパソコンを買った。

今から25年以上昔、MS DOSの時代である。

しかし、もともと好きではないので結局メールやワープロ機能くらいしか使っていな
かった。

それでももう文字処理ができなくなっていた私には画期的であった。

その後Windows95が出てきて階層構造だのツリービューだの言われても全くついてい
けず、相変わらずメールとワープロくらいしか使えずにいた。

インターネットが出てきた時もはじめによくわからない広告や項目があって、自分の
欲しい情報にたどり着けずすぐにあきらめてしまった。

しかし、うまく活用している人はインターネットを使いこなし、ネットショッピング
などで今まで手に入らなかった物を外出することもなく手に入れたりしていた。

これはかなりハードルは高いが勉強する価値はあると思い、詳しい友人や先生に教え
てもらい、少しずつできることが増えていった。

そのおかげでいままではバカだからできなかった部分がほとんどだったところ、見え
ないからできないことが増えていった。

そうこうしているうちに、パソコンはなくてはならないものにはなったがやはり苦手
である事には変わりなかった。


友人曰く、いまは障害の有無よりパソコンができるかどうかの方が就職には重要だそ
うである。

パソコンができるとできないでは同じ視覚障碍者でも昔の晴眼者と視覚障碍者くらい
の情報格差があるそうだ。

しかし、見えない人のパソコン習得のハードルは見える人の5倍10倍になる。

まずキーボードのどこに何のキーがあるか覚えなければならない。

この時点でドロップアウトする人も結構いるとか。

マウスが使えないからカーソルであちこち探して決定しなければならない。

しかもマウスでなければ動かせない場合も少なくない。

スクロールできないから余計な広告や情報も矢印キーでいちいち追っていかなければ
ならないので見えれば5秒くらいでたどり着く所に5分くらいかかってしまう事もしば
しば。

見えれば一目瞭然の評も、音声だけだと構造を把握するだけでかなり時間がかかり、
結局わからなかったりすることもある。

HPなどは音声で対応していない部分もあり、見たい芝居の日時がわからなかったりし
たこともあった。

それでも今はパソコンがない生活は考えられない。

ネットショッピングはもちろん、SNS、好きなタレントが出演する番組、電車の時刻
表から料理のレシピ、ジーンズの右にある謎の小さなポケットの由来まで何でも検索
できるようになった。

しかしまだパソコンの設定など中身のいろいろはわからない部分が多い。

詳しい人に教えてもらいつつ、経験値を積み重ねてスキルアップしていかねばと思っ
てはいるが、やはり好きにはなれそうもないな。




という事は



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