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見えなくても触ってわかる人は意外と少ない

もう何十年も前だが、視覚障碍者用のカセットデッキを買ったとき、点字の取り説と
一緒にそのデッキの絵図を点字の点で表したものが入っていた。

こんなの触ってわかる人いるのかいな、見えてる人の自己満足なのじゃないか?!

駅に備わっている点字の案内図も私たちのために考えてくれているのはうれしいけれ
ど、正直全然わからない。

小さいころから盲学校で教育を受けている優秀な友達に、これらの事について質問し
てみた。

始めはリンゴやミカンのような簡単な縮図から始めるそうだ。それから段階を経て、
複雑な図形へとレベルを上げていくそうである。
「手で見る」訓練である。

私のような中途視覚障碍者はこのような訓練を受けていないので、とにかく触って全
体像を把握することができない。
-簡単な点図もわからなければ、造形もよくわからない。

ところで、中途障害じゃなくても、この訓練からドロップアウトする視覚障害児童は
かなりの数いるのではないだろうか。
事実、マッサージ課程の学生で、背骨をまっすぐたどれないとか、タオルを三つにた
ためない生徒がいるという話を聞いたことがある。

その点、中途障碍者は見えていた時の経験値があれば、見えなくなってもタオルを三
つにたたんだり、ちょうちょ結びができたりする。


一方チート君たちは、小さなピアスや箸置きが何の形かわかってしまう。
解剖学の時間に回ってきた骨標本の向きがわからなくてうごうごしていた私に全部説
明してくれたのも隣の席の全盲チート君だった。

ここでも視覚障碍者の半端ない個人差が露呈してしまうのである。

そしてこれも、見えていれば何でもないことが、見えないと山よりも高いハードルに
なる一例である。


そんな私のような触覚がいまいちな視覚障碍者でも触ってわかるピクトグラムが作れ
ないかという試みをしてくれているのが電気通信大学の研究室。


ピクトグラムとは、「意味するものの形状を使ってその意味概念を理解させる記号を
意味する」と書いてあったが、要するに非常口に描かれている簡略化された逃げてい
る人の絵みたいなやつの事である。

目で見れば、ユニバーサルに「走っている人」の絵だが、いくら浮き出ていても、あ
の絵を触って、一発で走っている人とはわからない。

私は点字が多少読めるし、最近駅のトイレも音声で案内してくれているので、単独歩
行時にはかなり助かっている。

でも点字を読めない重度視覚障碍者は多いし、音声案内は外国人や耳の悪い視覚障碍
者には届かない。

触ってわかるピクトグラムがあったとしても、見えなければそこにある事すらわから
ない。

音声信号も見えなきゃ見つけられないという事で、最近は薄く「ここにあるよ」と音
声サインを発信してくれている。

以前も書いたが、障害の種類によって利害が真逆だったり、同じ障害でも個人差が半
端なかったり、障害が重複していたりする人もいるので、ユニバーサルの妥当な落と
しどころは悩ましい。
とにかく複数の選択肢を置いて、自分に合っているものを選べるようにすればいいの
かな。

一触即解のピクトグラムができたら、視覚障碍者だけではなく、意外と思いもしない
処にニーズがあったりするかも。

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