見えなくても料理

見えないからと言って毎日外食とかコンビニ弁当と言うわけにはいかない。

私はずっと実家であまり台所に立つことなく目が見えなくなってしまったのだが、見
えていた頃なぜか趣味でお菓子作りを習っていた。

友達に紹介してもらった教室だったのだが、一人1ホール作るというかなり本格的な
教室で、来ている人もめっちゃグルメだったり、料理学校の講師だったりするような
人もいて、私はお呼びでない感が半端なかった。

しかも当時から私は視覚障害の自覚はなかったものの視力0.1と0.01というすっかり
バッチリ弱視であった。

しかし人生何が功を奏するかわからない。

ケーキも料理も基本動作は変わらない、ここでの修行で私は料理の基本スキルをマス
ターしてしまったのである。

おかげで今私は一週間に1回、ヘルパーさんに一品作ってもらっている以外、ほぼ自
炊している。

職場にお弁当も作って持って行っている。

・・こう書くと料理が好きな人のようだが、決してそんなことはない。

バランスと味だけを考えて、煮たり焼いたりしているだけである。

食材はほとんど生協に持ってきてもらっている。

都会なのでお店はたくさんあるのたが、生鮮食品はどれが新鮮だか旬だかわからない
し、それ以前に何が売っているのかわからない。

お店の人に何が売っているのか全部聞くわけにもいかない。

そして、いざ料理である。

麺類、丼ものは炭水化物に偏るので家では基本作らない。

煮物やスープはグザイを切って鍋に入れて味をつけて煮込んでしまえば勝手にできて
しまう。

食材を切るのは大きさを合わせるために指3本とか4本とかを当てて大きさをそろえる


みじん切りは散らかって後片付けが大変なのでなるべくやらないようにはしているが
、必要な時は少し切って皿に移すようにしている。

これを何度も繰り返すのは面倒だが、後片付けの方がもっとイヤなのでちまちまやっ
ている。

まな板も軽いものにして、鍋屋皿の近くまで持っていけるようにしている。

みじん切りは手の感覚だけで全く見てはいないのでネギでも玉ねぎでも涙が出で大変
なんてことはない。

ネギなんかはつながっていたりもするので後で手で確認してバラバラにする。

魚はグリルが勝手に焼いてくれる。

問題なのは炒め物である。

豚肉などは火が通ってないとよろしくない。

かと言って赤い部分が見えるわけではない。

私の場合、食べるのは自分だけである。

なので、もう熱くて触れなくなるまでお箸ではなく手で炒めている。

触れなくなったらトングなどに変えて、しばらく適当に炒めて皿に盛る。

触れるくらいに覚めたら触って確認してから他に炒めた野菜と混ぜたりそのままお弁
当に入れたりする。


よく、カレーが簡単だからとも言うけれど、カレーは後かたずけが大変なので作らな
い。

揚げ物も油が跳ねるからという事もあるが、後かたずけがもっと大変そうなのでやら
ない。

揚げ物を作るという視覚障碍者もいるが、揚げるのはともかく、残った油の処理とか
片づけはどうしているのか、いつか聞いてみようと思う。

油でベタベタになったキッチンとか、もう想像するだけでゾッとするし、油をこぼし
たりしたら1週間くらいは立ち直れない気がする(獏)


自分が作った適当な惣菜に納豆やら漬物屋ら、調理が必要ではないおかずを加えると
、かなりバランスのいい食卓になる。

そこにヘルパーさんが作った一品があったりすると、もう定食屋さんレベル!


料理が大好きという視覚障碍者もいて、圧力鍋とかフライヤーとかいろいろ持ってい
る人もいる。

障害の有無は関係なく料理が趣味な人は面倒くさい凝った料理を作ったりもする。

でも今は一般的に女性も仕事をしている人が多いので、料理本も「10分で食卓に出せ
る簡単レシピ」みたいな盲人フレンドリーな手がかからなくておいしいレシピ本がも
てはやされているようである。

ネット上にも、意外な一工夫でおいしさアップの簡単レシピが紹介されていたりもす
る。

そういうレシピにはナツメグだのカイエンペッパーだの、うちにはない謎の調味料は
出てこない。


料理が好きなわけではないけれど、さすがに同じルーチンでは飽きてしまうので、た
まにネットで新たな簡単メニューを捜索したりもしている。

食品ロスも出さないように、買った食材はちゃんと使い切っているよ。

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