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ussan
2021年6月20日 00:36
ー芥川龍之介「羅生門」に敬意を表して また或る日の暮れ方のことである。一人の男が羅生門へと向かっていた。下人である。四、五日前にこの羅生門で、女の死骸から長い髪を抜き取っていた老婆と出会い、その老婆の着物を引きちぎるようにして奪って、ひと匙の粟がゆに変えた。草履の紐にしかならない薄汚れた老婆の着物は、一時の腹を満たす糧にすらならなかった。 ふと、老婆が引き抜いていた、死んだ女の長い髪を思
2021年9月4日 23:08
ー小泉八雲「雪女」に敬意を表してー 雪女は殺せなかった。老人と少年を吹雪で山小屋に追い込んで眠らせて、二人まとめて命を奪うはずだった。でもできなかった。その少年、巳之吉が美しかったからだ。老人の方は迷わずいけた。氷と雪の妖は、美しいものを愛してしまう。巳之吉は彼女たち妖の一族にもひけを取らない美貌を持っていた。憂いを帯びたまなじり、黒く澄んだ瞳、形よく通った鼻筋に小ぶりで細い唇。 「ああ、