占い師の記憶

うら‐ない〔‐なひ〕【占い】
うらなうこと。 人の運勢、物事の吉凶、将来の成り行きを判断・予言すること。 また、それを職業とする人。 卜 (ぼく) ・筮 (ぜい) ・占星術・トランプ占い・人相見など、古今東西、さまざまの形式がある。

古びた布で等間隔に仕切られている、占い師が集まる市場のような場所。
決められた区画に向かい、ホームセンターで安く見繕ったテーブルに、えんじの布を被せた簡素なステージに三種のタロットを並べて迷い人を待つ。

「すみません、良いですか？」

ずたずたに縦に割かれた、これまたえんじ色の暖簾を押し上げて、髪が長い50代位であろう女性が顔を覗かせる。
女性をパイプ椅子に促し、着席させる。

「息子の成績が悪くて、希望する学校に入れないかもしれない。何かアドバイスが欲しい。」

依頼の内容を受け、いつものように雑談を始める。

50代の主婦。旦那は公務員で息子は高校受験生。
話口調は大人しく、丁寧な敬語を織り交ぜた笑顔の優しそうな面長の女性だ。
話をしている最中に時折、乱れてもいない長い髪をかき上げ、笑う際に口元を隠す癖が、女性の自信のなさを伺わせる。

現在家庭内では、旦那とは会話は無いが、占いをする対象の息子とは食事の時に話す事がある位で、あまり家ではコミュニケーションが行われていないらしい。
中学2年までの成績は上の中程で良かったが、3年になってから調子が悪く、中の下と成績が下がり志望校への入学が少し不安。
息子の趣味はパソコンで、勉強もパソコンで行っているらしいが、成績が下がっているので、勉強の他に何をしているのか気になっているとの事。

家庭内でコミュニケーションが希薄で、息子の状況もよくわからない。こういった家庭は多く、特段変わった状況でもない…
タロットカードと自分の能力に任せ、依頼を遂行する。

並び終えたすべてのカードをオープンし、優しく、そして影を感じる微笑みを向けながら女性の手を握る。
その時不思議なエネルギーが彼女の周りに漂うのを感じた。
それはまるで暗い影が彼女の心を覆い隠すかのよう。

「不思議ですね。何故だかカードは息子さんではなく、あなたを導いてくれているようです。
あなたの心は、何か闇を抱えているようですね…」

言葉は穏やかだが、その背後には不気味な予感が漂い始めている。
暗闇が迫ってくるような重苦しい雰囲気が辺りを包み込みこんだ。

女性は戸惑った表情で、時折かき上げていた長い髪が顔を震わせるたびに少しずつ顔に垂れ、彼女の表情を隠す。

「闇？何のことを言っているのでしょう？」

深くため息をつき、

「私は自身の力で人の過去を覗くことはできませんが、あなたの心には何か封印された過去の記憶があるとカードが教えてくれました。
あなたはそれを直視しなければ、真の幸せにはたどり着けないかもしれません。」

その言葉がトリガーとなり、女性の内なる闇が次第に姿を現し始めたようだ。
隠れた彼女の表情は見えないが、口元を覆う手や、肩が震えている。
思い出せない記憶の欠片が少しずつ蘇り始めている。

徐々に、女性の隠れた表情が、顔に覆われていた髪を口元に置いていた手が、少しずつ広げられるたび顕になり、彼女にとって恐るべき事実を思い出していく様子が見て取れる。
寂しさと苦しさを埋めるために、年月と共に長くなった長い髪に隠れていた強張った表情は、安価な化粧で覆う様に、彼女の記憶も深い闇と共に隠してしまっていた。
過去の罪悪感が頭を支配し、タロットの絵柄に導かれて行くのか、次第に彼女の心の闇が浸食していく。

恐怖と罪悪感に苛まれた彼女は、垂れた髪を振り上げると、動物の鳴き声の如く奇声を発し、勢いよく座っていた椅子を跳ね除けた。
発狂したまま身体を激しくくねらせて闇のオーラを頭部から解き放つように、タロットに背を向けその場から離れていく。
まるで闇に完全に取り込まれてしまったかのように狂気的な笑みを浮かべていたのだろうか、悲嘆する顔には涙が溢れていたのかは伺い知れない。
狂気に塗れた彼女の乱れ髪の隙間から見える口から小さくも激しく呟かれるのは、歪んだ自己嫌悪の叫び。

しかし、彼女の選んだ運命は、因果の法則によって決まっていた。彼女が家族に行った行為が、今や自分自身への報いとして姿を現わす。

大きな音が彼女の向かった未来の方から聞こえたので外に出ると、建物の出口脇に血を流しながら地面に突っ伏している彼女の姿があった。
彼女の運命が因果応報の意味を象徴するように、そこにはまだ新しく湯気立つ黒いタイヤの跡。

深くため息をつきながら女性の姿を見つめた後、ゆっくりと目を閉じて彼女の弔いの言葉なのか、意識外に

「避けられない運命の輪」

と呟いた唇に少しはっとして指を触れる。

そして、彼女の物語は闇のように暗い幕を引いた。

全てはタロットカードが教えてくれる。

〜終わり〜

にゃの一口タロット占い

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

タロットカード
「運命の輪〜WHEEL of FORTUNE」

回避出来ない運命の訪れ

☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆ ☆☆

この小説をここまで読んでくれたあなたは、普通の人生を歩みつつも、少しばかり不思議な出来事が起こる未来を思い描いた事は無いでしょうか？
自分にはあまり起こってほしくないけど、周りに不思議な出来事が起こったら気になりませんか？
真面目に生きているつもりでも、人と違う事をしたらどうなるだろう？もしかしたら、人と違う変わった人生を歩んでいたのかもしれない。
なんて思いつつ、安定で安全な毎日を選んでしまう。

さあ、タロット占いを少し体験してみましょう。

そんな貴方が、ふと手に取ったタロットを捲ると、目の前には「運命の輪」のカード

少しだけ人と違う人生を夢見る貴方に、
あなたの力、想像が及ばないような出来事が起こるでしょう。
チャンスなのか、はたまた…
全ては運命に導かれるまま、あなたが求めていたものがすぐ目の前に迫っているのかも知れません。
心の準備をして下さい。きっとその準備はあなたに訪れる運命に順応出来るアイテムになる筈です。
幸か不幸か、あなたの運命は回り続けます。
また、車輪は人を巻き込む可能性も秘めていますので、あなたと共に、運命を共にしてくれる人が居るのであれば、一緒に立ちはばかる事柄にむけて準備をする事でお互いの理解を深めあえそうです。

あなたの運命が、素敵な人生を運んでくれる車輪に導かれますように。

以上、タロット占いの物語をお楽しみいただきました。
運命の輪によって訪れる不思議な出来事や運命の導きを感じることはありませんか？安定した日常を送っている方も、ほんの少し変わった人生を体験してみてはいかがでしょうか。
タロット占いを通して、素敵な人生の幕開けを想像してみてください。また、このnoteの他の記事もぜひご覧ください。

最後まで読んでくれてありがとうございました。