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記事一覧

朝顔

私は夜 深い悲しみの中で死に耐え
歓喜の朝に産み落とされる

閉ざされた黒い種の中から
怯まずに蔓を天へ伸ばし
その先に赤や紫色の美しい花を咲かせて

夕べに萎み
闇に落ちて
種子を妊む

来る朝ごとに
約束を果たすため

私達は
生まれてきた目的に染めあげた
鮮やかな花を天へと咲かせ

命の謳歌を歌いあげて
主へ捧げるのだ

今朝も
明日も
命の樹から実が落ちるその時まで

願い事は

本当になれたのかな?
心の声に素直になっていたら

ここまで迷わず来たけれど
もう何も解らなくなった

正しいとか間違っているとか
善いこととか悪いことなんて

私がちゃんと気がついていたら
夢じゃなくて
こんな現実じゃなくて

なれてたのかな?
本当の自分に

そうしたら
どうなっていたの?

一人で出来ることなんて
小さいことかもしれない

二人ならどうなの?

あなたとなら
魔法が解けても

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星の泉

月揺れて 星こぼれ
水面をすくうと光あり

雫空へ放てば弧を描き
月の上へと戻りけり

自由と自立の歌声

ある日 ある時 ある人の
一言が僕を変えた

それらは そっと僕を離れてしまい
今は季節の亡骸の様

けれど僕の胸にはずっと、灯火が点っている

大人は信用出来ないと憎み、牙を剥いて尖っていた時に

怒りや、不信にまみれていた僕らを受け入れてくれた人よ

人としての有り様を教え、自ら立つように導いてくれた人よ

全てを捨てて放浪していた頃に、温かい飯を喰わせてくれた人よ

それは

大人と世の中の

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心の故郷

気がつけば 道を間違えて家に帰れない

どうすればいい?

誰か連れていってくれないか

故郷の田舎道に

周りの景色が変わりすぎて、ここがどこかも分からないのさ

話を聞いてくれる友も居ない

何か欠けたままで

大切な物も見失って

一体どうやって戻れっていうんだ?

記憶もおぼろげな故郷に

愚か者だと笑う者も居ないだろう…

もしあの村に帰れたら

要らない物は全部捨てて

代わりに昔

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詠み人知らず

銀の馬走り 金の鈴鳴る…チリン

地平の向こうに 碧い月揺れて

木々は幹を反らせて 星屑を拾う

ピカリピカリ光り合う 枝の狭間に

何が宿るかお楽しみ

悩む貴方に幸来たれ

想い報われ成就して 自由な翼 羽ばたいた

波間に踊る哀しみや 昔の恋の 欠片達

小さな粒に相成って 溢れる想い 鳴らし合う

緑の額

ままならぬ世に
ままならぬ体と

伏せた筈の気持ちが伸び縮み
土の臭いと草の香りが雨伝いに広がる午後

夏の風鈴ならし
君振り返る

天狐

どの町にも どの土地にも 不満が澱となって 吹き溜まっている
それは人の目に、仕草に、見て取れて 垂れ込めた空から 何かが舞い堕ちてくる

気がつけば、幼い頃から一人だった
教えるものも誰もいなかった
そんな別れの積み重ねのような人生にも、出逢はあったのだ…
それが縁と言うものだった

こんなことをやっていられるか

昔から、そう思っていた
気がつけば 己の弱さと向き合っていたのだった

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6月の恋

言葉を紡ぐ船を出し
文字の波間に揺れてみる

覗く瞳が瞬いて
暖かな海に滲む色が映り込み
指の間に愛おしくつづれた
あなたの言葉が溢れだす

ありがとう

羽ばたく想いが光るあの空へ
通り過ぎた春を 連れ去った

あの日
あなたは小さな私を抱きしめてくれて
大きな暖かさに わたし
思わず埋もれてしまった

やがて日々が過ぎ、大人になってしまっても
忘れないだろう

埋もれながらそっと出した手の先に触れた
さらさらと流れる時間と冷たさを
艶やかな新緑の伸びてゆく先に
初夏の匂いが満ちて、胸を染めた事を

大きな私は微笑みながら今も待っている

遠星

遠星

心もなく魂もないまま

空を見上げては 散らばる星達の腕を求めている

春も過ぎたというのに 時は薄っすらとほこりをかぶり

無効になってしまった切符の様に上着のポケットから出てきて

唇は乾き 心はなぜかむなしい

感情は開ききった花びらの様で 朽ち始めた匂いが漂い

暗闇に光る鏡にちろりと映る舌が 深夜の想いにそっと影を差し込むと

びろうどに紅が灯り 心なげに飛び回る

松籟

松籟

雲があり、風がある

窓からの光はやわらかで、しっとりと潤い、時おり硝子がカタカタと鳴っている

時は 思いもよらない早さで駆けめぐり
陽だまりは春飛び越えて初夏の様

薄墨色の壁に吸い込まれていく思いに
松風は老松の枝をさざめかせ 心をやさしく奏でてくれる

こころゆるく待ちながらえば 君来たらんか

想いは虚空を削り 今はただ身を持する為にあるのみ

水がほどけ溶け出す頃を待ちながら
くつりく

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アーキテクト

アーキテクト

頭を高く上げよ

感化は世界に拡がり
疑う者を信じる者へと変える

及ぼす力は限り無い

思考を深くし
知恵を求めよ

精神は神を模して造られた

言葉に力が宿るならば
思考には世界を変える力がある

見え方を変えると世界は回り始め
新しい現実が誕生する

心を高く上げよ
全てを天へゆだね
開いた心を解き放つ

それは多の集まりの中に見いだされる
全てが混じりあい、繋がりあい
結び付いた思考の網を

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柳影

柳影

日差に柳が 別れを告げるかのように小さくそよぎ

うっすらとまとった葉の やわらかな重なりが目に優しい 

舞い落ちた花の 透き通った道を淡い緑がふちどって 

ひそひそ声で 次の季節を案内してくれる午後