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#小説

編集者は情報のDJであり、ソムリエでもある。

編集者とは、クリエーターをサポートする役割だ。それは、今も昔も変わりがない。

サポートとは、具体的に何を指すのか?

シンプルに言うと、作家の価値を最大化することだ。そして、価値を大きくするとは、影響力が大きくなるようにすることでもある。

昔はメディアが、影響力の拡大装置だった。なので、編集者は、社内で調整をして、そのメディアにクリエイターを載せるだけで、影響力を大きくすることができた。

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新しい感情と孤独の関係について、または大人は本当に鈍感なのかについての考察

新しい感情と孤独の関係について、または大人は本当に鈍感なのかについての考察

『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』という本を出してから、孤独というものについてより深く考えるようになった。

孤独とは、どういう感情で、どういう時に生まれるんだろうかと。

高校・大学の頃の僕は、自分がすごく孤独だと感じることが多かった。でも今は、一人でいても孤独だという気持ちになることはない。

子供であることと、大人であることに、孤独は関係しているのだろうか。

子供

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そこに想いはあるのか? 拙さの揺さぶる力

そこに想いはあるのか? 拙さの揺さぶる力

僕たちはメッセージを伝える時に、うまく伝えないといけないと思う。

しかし、メッセージが伝わるかどうかは、伝え方のうまさではなく、そこに想いがあるかどうかが一番重要だと実感させられる、ふたつの映画に出会った。

そのふたつの映画の中にあるメッセージは、拙い英語と拙い歌だったが、「心に届く」ものだった。

ひとつは、インド映画の『パットマン 5億人の女性を救った男』。

インドの小さな村で新婚生活を

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みんなが僕に「ケアが足りない」と言う意味が、ようやくわかった。

みんなが僕に「ケアが足りない」と言う意味が、ようやくわかった。

昔から僕は、「人に対してケアが足りない。佐渡島は人に厳しい」とよく言われる。

でも、僕は僕なりに相手のことを誠実に思い、一生懸命ケアしているつもりだった。

このギャップは、一体どうして生まれるのか?

その長年の謎が、臨床心理学者の東畑さんの新刊『居るのはつらいよ』を読むことで、ようやく理解することができた。

この本は、「ケアとセラピーについての覚書」という副題がついているが、僕が他人に対し

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水をすくうのではなく、水を交換する

水をすくうのではなく、水を交換する

新しいコミュニティに参加した時に、あるアドバイスをされた。

「水をすくうのではなく、水を交換する」のだ、と。

シンプルな言葉だけど、この言葉は僕の胸に刺さった。この前開催したコルクラボのマンガ専科でも、この考え方で参加してほしいとお願いをした。

コミュニティにこれまで蓄積された知識や智恵が、大きな樽に水となって溜まっていたとする。

参加費を払ったからと言って、空のコップを持ち込み、樽から水

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「ヤバい」から「エモい」へ。言葉から浮かび上がる時代の変化

言葉は、集団の無意識が、現実に表出したものだ。ほとんどの流行り言葉は、水泡のようなもので、現れては消えていく。でも、一部の言葉は、社会がどのように変化しているのかを指し示してくれる。

数字の指標よりも、一つの言葉が雄弁に社会の変化を示唆することもある。

「ヤバい」も「エモい」も、僕は好きな言葉ではない。書き言葉では基本、使わないし、「エモい」は自分で言うこともほとんどない。

でも、コルクラボ

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