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年末年始にオススメNetflix作品3選

 年末年始に、まとまった休みがある人も、そうじゃない人もコロナの感染拡大に伴い、外出し難い状況下で、配信されているドラマや映画を観るのが一番じゃないかという事で最近観た中で特に素晴らしかったNetflix作品を3本紹介したいと思います。


『クイーンズ・ギャンビット』

 この作品に興味を持ったきっかけは、スティーブン・キングのツイートです。

「今年、本当に良かったテレビ番組は何でしたか?」という質問に対するキングの答えが『クイーンズ・ギャンビット』でした。

 人気の海外ドラマだと必然的に長尺になるので中々触手が伸びないのですが、本作はリミテッドシリーズ(1シーズンしか作られない事が最初から決まっているドラマ)で全7話という事もあり観始めたら、最高に面白く一気に観てしまいました。

【あらすじ】

 時代は1950年台、母親との心中で生き残った少女ベスは養護施設に入所します。そこで施設の用務員のおじさんにチェスを教わり天才的な才能を開花させます。当時の養護施設は人権意識も低く、子供達に精神安定剤を飲ませてコントロールしていたのですが、ベスはそれを飲むと覚醒しチェス台が無くても天井などにヴィジョンが浮かび上がりイメージトレーニングが出来るので大量に服用した結果、薬物中毒に陥ってしまいます。その後、養子として引き取られた先の母親がアルコール依存症で一緒に飲んじゃったりして、これまたアル中になったりと大変な事になる訳です。そんな中、男社会のチェスの世界でメキメキと頭角を現しマスコミにも注目されるスタープレイヤーにのし上がっていきます。


 美しい映像、熱く燃える展開で、しかも泣ける話なのですが、特に注目すべきは主役のベスを演じるアニャ・テイラー=ジョイの魅力です。

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一度見たら忘れられない個性的な顔立ちで、僕が彼女を認識したのはM・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』で多重人格の超人に誘拐される主人公の少女役だったのですが、その頃から独特の存在感を放っていました。

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その後『ウィッチ』というアニャ・テイラー=ジョイ主演の、これまたホラー作品を遡って観た時にNewホラーヒロインとして、これからも活躍して行くと確信したのですが『クイーンズ・ギャンビット』では、もはや映画界全体を背負って立つ役者の風格を纏っていました。


『Mank/マンク』

 『ハウス・オブ・カード 野望の階段』、『マインドハンター』など昨今Netflixのドラマシリーズを手掛けており、映画からしばらく離れていたデヴィッド・フィンチャー監督の新作『Mank/マンク』が劇場公開・配信されました。

 映画史に残る名作『市民ケーン』の脚本を手掛けたハーマン・J・マンキーウィッツの視点から『市民ケーン』制作の舞台裏を描いた本作の脚本はデヴィッド・フィンチャーの父親、ジャック・フィンチャーが生前書き上げた物です。

 『市民ケーン』と言えば25歳の若さで監督・プロデュース・主演・共同脚本を務めたオーソン・ウェルズの作品というイメージが強かったのですが、デヴィッド・フィンチャーパパの見立てでは、ハーマン・J・マンキーウィッツの才能と個人的な執念によって歴史的傑作の脚本が完成したと言う事になっています。

 アメリカで最も影響力があった映画評論家ポーリン・ケイルという人がいます。

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彼女の著書『スキャンダルの祝祭』は『市民ケーン』におけるハーマン・J・マンキーウィッツの功績を再定義する内容で(読みたいので復刊して欲しい!)それを基にジャック・フィンチャーが『Mank/マンク』の脚本を手掛けた訳です。

 デヴィッド・フィンチャー自身も『市民ケーン』には強い思い入れがあるようで、マーク・ザッカーバーグのFacebook立ち上げを描いた『ソーシャル・ネットワーク』は公開当時、21世紀の『市民ケーン』と評されました。


『シカゴ7裁判』

 『ソーシャル・ネットワーク』の脚本を手掛けたアーロン・ソーキンが自身のオリジナル脚本を自ら監督した『シカゴ7裁判』は元気が出る素晴らしい傑作でした。

 あらすじは凄くややこしい政治的背景があるので端折りますが(笑)いわゆる裁判劇で役者同士の演技合戦が本作の見所になります。

『ファンタスティック・ビースト』シリーズでお馴染み、エディ・レッドメイン、

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近年のスピルバーグ作品の常連、マーク・ライランス、

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『500日のサマー』のジョセフ・ゴードン=レヴィット、

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などなど芸達者どころが揃っているのですが、その中でも異彩を放つのがこの男。

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サシャ・バロン・コーエンというコメディアンなのですが、彼が演じる役はスタンダップコメディをしたり風変わりなデモを行う政治活動家でアビー・ホフマンという実在の人物です。サシャ・バロン・コーエン自身も本作のアビー・ホフマンのように権力をおちょくるトリックスターのようなコメディアンなのですが、奇しくも『シカゴ7裁判』と同時期にAmazonプライム・ビデオで配信された『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』という作品でサシャ・バロン・コーエンはカザフスタン人のキャスター、ボラットに扮しコロナ禍の中、一般人から政治家までにドッキリを仕掛けていました。

これがとんでもない作品で、ちんちんとか色んな物が出てくるんですけど、下ネタや差別ネタがやり過ぎで笑えない領域に達してるんですね。日本のTV芸人がやるような、悪く言うとぬるい笑いに慣れていると、ちょっと絶句するレベルなのでこちらも必見です!

 『シカゴ7裁判』と『続・ボラット』の配信されたタイミングは、この前の大統領選直前にぶつけています。『続・ボラット』は散々ふざけ散らかした後に「選挙に行こう!」で終わります。『シカゴ7裁判』も1968年に起きた史実を、現在の政治的状況と重ねて描いています。

 『シカゴ7裁判』のラストは非常に感動的なのですが、この場面の感動に一番似ていると思うのは『いまを生きる』のラスト、少年達が机の上に立ち上がる所です。

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