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『向日葵の咲かない夏』道尾秀介


向日葵の咲かない夏  道尾秀介


本格的な夏を迎える前に
どうしてももう1度読みたかった本
19年間の人生で 1番の本


初読時に感じた、読み進めるほど重くのしかかってくる気味悪さと、それに伴って私自身の感情がひどく高揚しているという不思議さが妙に癖になって、月日が経ってもどうも忘れられずにいた。

高校生の頃の初読から2年ほどが経って再読。
初読から時間が経っていた分、感覚が私の記憶の中で美化されているのでは という不安が少しあった。しかしこの本はやはり、やはり裏切らなかった。描写の細かさ故に、文字通りの情景が自分の周りに鮮明に広がっていた。そこから抜け出すために栞を挟もうとする度に、勿体なさを感じざるを得なかった。この感覚は何度味わっても楽しい、楽しいというよりも嬉しい。
初読と違ったのは、私が終盤で何故か自然と泣いていたということ。『いけない』を読んだ時は恐怖からの涙だと自覚したが、今回の涙は自分の感情が分からなかった。恐怖なのか 切なさなのか 愛情なのか 少しばかり自分に尋ねてみたが、どの言葉もどうも当てはまらなかった。

正常と異常の境目が曖昧になって、狂気じみた言葉に次々と脳を蝕まれていくような感覚。読み終えたあとの日々がどこか物足りなく感じるほどに、一日のどこかにこの本との時間がある日々がただただ好きだった。まだこの本を読んだことがない人たちを羨ましく思ってしまう。私にとってはそれほどに傑作だった。


色んな人におすすめしてる本でした
イヤミス好きな人、是非に
今はこの前観た映画の原作を読んでいます
優しさと温かさで包んでくれる心地のいい言葉たち
イヤミスとは程遠い、けどこれもまた好き

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