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『全人的医療を支える共感的コミュニケーション・NVC』 Humanizing Health Care 翻訳出版しました。

noteはじめました



こんにちは。NVC大学ナビゲーターの、CNVC認定トレーナーの今井麻希子です。
NVCは、自分も相手も大切にする、人生を豊かにするコミュニケーションです。このたび、その医療の現場での実践とその可能性について紹介する本
『全人的医療を支える共感的コミュニケーション・NVC』 (原著:Humanizing Health Care - Creating Cultures of Compassion with Nonviolent Communication)を翻訳出版しました。

このマガジンでは、医療現場を豊かにするためにNVCがどのように貢献できるか、その可能性について、現場や実践者の声を踏まえてご紹介していきます。

まずは、翻訳者(宮崎大学医学部大学院教授 横山彰三・CNVC認定トレーナー今井麻希子)が本のあとがきに添えたメッセージをお届けします。

この想いをともにする多くの方と出会っていけたら、とても嬉しく思います。

本への想い


NVCの学びの場で医療に携わる方たちとご一緒することがよくあります。生命への奉仕に情熱を燃やしながら、多忙さや高いプレッシ ャーの中でこころにゆとりを持つことができず、人間関係がギスギスし てしまう。他者に奉仕しようとするあまりに共感疲労やバーンアウトが起こり、離職率も高い。殺伐とした職場環境の中、事故につながりかねないミスも起こりうる。緊迫した状況で、心理的安全性を築くこと が難しい...。本書は、米国の看護師である著者メラニー・シアーズが 医療現場に身を置き、こういった葛藤を抱える中でNVCと出会い、その実践が患者さんの治癒や職場の人間関係に大きな影響をもたらすことの実感から生まれました。

NVCの創始者マーシャル・ローゼンバーグ博士は「パーソン・セン タード・アプローチ(人間性中心療法)」を提唱したカール・ロジャーズ のもとで研究に従事しました。「診断して病名をつける」ことより、その 人の内面に息づくものに関心を向け、寄り添うことに治療の本質があ る。その上でものごとの捉え方や言葉の使い方に着目することが非常に重要であるとNVCは提唱しています。メラニーはNVCの実践を 通じて、医療の現場に「人間らしさを取り戻す」ことが可能だというこ とを実証したのです。

自分の内的反応やその奥にある大切なものを受けとめることで (自己共感)、こころに落ち着きやゆとりを取り戻す。そして、そのよう な寄り添いを他者に広げる(他者共感)。このように感情への理解 (感情的知性)を高めながら、個人の体験に耳を傾けることは、NBM (Narrative Based Medicine:物語りと対話に基づく医療)の実践においても非常に有効といえるでしょう。何を大事にしたいのか(ニ ーズ)という価値に意識をむけること。起きた出来事を客観的事実として冷静に受けとめる(観察:解釈と区別)。そして、実現可能な具体的方法をともに見出す提案を差し出す(リクエスト)といった観点は、 医療安全マネジメントにおいても非常に重要です。
力で支配する「パワー・オーバー」構造から、お互いをいかしあう 「パワー・ウィズ」構造への変化は、各所で起ころうとしています。どの ような変化にも、心理的葛藤はつきものです。だからこそ、この移行 期において本書のもたらす意味はとても大きいといえるでしょう。

原著が出版されたのは2010年。現在の日本の状況とは異なる部 分も多々あることでしょう。そして、著者の提示する視点が唯一の回 答であるとは私たちも思っていません(それは彼女自身も同様でしょ う)。それでも尚、この本が今こうして皆さんに届けられるものになっ たことに、大きな希望を感じています。この本が医療の世界をより豊 かにすることに日々情熱を注ぐ皆さんに役立つものであることを心か ら願っています。

最後に、この本の出版にあたり、日本の医療現場で働く複数の NVC実践者の方々より、貴重なフィードバックをいただきました。こ の場を借りて感謝の気持ちをお伝えします。

今井麻希子・横山彰三


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