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無責任かもしれない


社会人になって3年目に入った春、
わたしに初めての後輩ができた。


まさかうちの部署に新人が入ってくるなんて
と、思ったがちょっぴり嬉しかった。

配属先では1番年下、年齢が近い人もおらず
上司や先輩はみんなわたしを可愛がってくれた。

しばらくはこのまま1番年下として働くんだなあ、
それもいい環境だなとは思っていたけど
おつきちゃんより年下の子がくるよ!と言われたとき
先輩!と呼ばれるのも悪くないな〜とか考えて
嬉しかった。


配属されたのは2個下の男の子。

初日に職場に来たとき
がっちがちに緊張していて今にも倒れそうだったのを
昨日のことのように思い出す。


彼は少し変わった部分がある子で
なかなか仕事が覚えられなかったり
すべきことができなかったり
職場の人間に馴染めなったり

なかなか大変な思いをしていた。


最初の方はまだ不慣れだからと周りも対処していたけど
なかなかそれもできなくなって
みんな彼に対してぴりぴりし始める。

わたしの前で1度も怒ったことのない菩薩のような上司も
怒って今にも匙を投げそうになったこともあった。



あ、これは彼のメンタルケア必要だな。
お昼休みにご飯を一緒に食べながらしばらくの間彼の話を聞くことにした。


自分で言うのもあれだけど
彼はわたしには多少馴染んでくれていた、と思う。
少なくとも他に比べればだけど。

彼も彼なりに悩んでいたらしく
わたしに相談、質問してくれた。


ある日、彼が大きなミスをしてしまった日。
いつものように一緒にお昼ご飯を食べていると
こう言ってきた。

「さっきはすみませんでした。おつきさんにもご迷惑おかけしてしまって、、」

「正直、この仕事向いてないのかな、と思って。辞めたほうがいいんじゃないかなと思いました。」


俯きながら、バツの悪そうな顔で。



一瞬悩んだ。


なんと答えるべきか、何が正解なのか。

大丈夫だよ辞めないで、が正解?


少し迷った挙句、わたしは彼にこう言った。


「わたしは辞めてほしくはないよ。仕事はサポートしてあげるし、いなくなったら寂しいなと思う。でも、辞めたいって言うのなら止めることはしない。大きな決断をしたら、その決断を受け止めて、背中を押すよ。」



なんて無責任な言葉だったんだろうか。

でもわたしなりに考えた結果だった。

無責任にこの言葉を渡したわけじゃなかった。


辛いことをやらせ続けて、いつか心が壊れてしまうなら。
うまくいかないと悩み続けて、自分に自信を持てなくなるのなら。


上を向いて歩けなくなるのなら。


それだけは避けてあげたかった。
そうはなって欲しくなかった。




明日で、わたしは異動になる。
彼は、まだ仕事を続けている。



最後に何を伝えられるだろう。

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