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私の「何も考えない日」

私には1年で1日だけ、「今日は絶対に何も考えない」と決めて過ごす日がある。

例えば、レストランに行ったら、いつもは「これ美味しそうだなぁーでも高いなー」と悩んでは結局頼まない料理を、この日は食べる。

例えば、本屋さんに行ったら、いつもはあれもこれもと買ってしまうのが怖くて、できるだけ目的の本棚だけに行くようにしているけれど、この日は、そんなことしないでぶらぶら本の森を散歩する。気になったものは積極的に手を取るし、いつもは見ないようなジャンルの本棚に立ち寄ってみたり。時間は気にせず、ゆっくりゆったりと、好きなだけ本を抱えて歩く。

例えば、カフェに行ったら、いつもは飲み物だけだけど、この日はケーキを頼んでちょっと贅沢な時間を過ごしてみたり。

例えば、いつもは「ダラダラしてないで何か建設的なことをしなくては!」なんて思ってしまうけれど、この日は、ダラダラしたくなったら好きなだけだらけて、退廃的な午後を過ごす。

例えば、いつもは自分にダメ出しばかりしてしまうけど、この日は自分に評価なんてしないで、頭を空っぽにして、ただ目の前の出来事を楽しむ。難しいことも、嫌なことも、向き合わないといけないことも、全部投げ出す。お金のこともなかなか進まない書きかけのnoteも将来設計も、この日だけはどうでもいい。投げ出したものは明日拾えばいいから、ただ、楽しむ。

そうやって過ごしていると、普段自分がどれだけ窮屈に過ごしていたのか、なんとなく見えてくる。そんなに我慢ばっかりして、なんで自分が苦しいことにも気がつかないんだろう、なんて。でもまあしょうがないよね、毎日贅沢するわけにもいかないんだもの。明日も生活は続くんだから、考えないわけにはいかないものね。

でもまあ、今日だけはいいでしょう、1年に1回しかないんだから。ちょっと贅沢なランチにさらにデザートを追加したっていいし、抱えた本の山に一冊二冊足したってちっとも怖くない。カフェで頼むのは一番安いブラックコーヒーじゃなくてラテやカフェオレだっていいし、なんならトッピングも追加しよう。何もしたくなくなったら家に帰ってゴロゴロするし、掃除や片付けなんて言葉は辞書から消してしまえ。こんな自分をどう思ってるかなんてことより、読みかけの本の方が断然面白い。一度読み出すと止まらないし、お腹いっぱいだから夕食はいいや。読み疲れた頃にお風呂に入って寝よう。おやすみなさい。

そうして、休暇が終わったら昨日投げ出したものを拾いに行く。昨日は楽しかったなぁ、なんて思いながら。

そんな私の「何も考えない日」は、私の誕生日だ。昨日投げ捨てた残骸を、一個また一個と拾い集めながら、あくびをしている。昨日買った本があまりに面白かったから、つい夜更かししてしまった。今日疲れることなんて分かりきっていたのに、と昨日の自分に文句のひとつも言いたくなるけれど、でもまあ、何も考えない日だったからいいか。

誕生日、おめでとうございました。

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