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お気に入りの記事まとめ

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好きだな、とか、また読みたいな、と思った記事たちをブックマーク代わりにまとめています。どの記事もとっても素敵なので、良かったら見てください。
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2022年9月の記事一覧

【短編小説】ドクダミの家

「日本全国に空き家は846万戸あり、その数は増えている。空き家はやがて老朽化し、廃屋となる」 驚いたな。空き家ってそんなにあるのか。スマホの検索画面を閉じる。さて、どうレポートをまとめようか。目をつぶって考える。 「現代社会の住宅課題」という大学のレポート課題に、僕が選んだテーマは「空き家問題」。自宅周辺でも、空き家が増えているような気がしていたからだ。現地を調査することがレポートの条件で、「工学は理論と実務の結晶だ」が口癖のあの教授らしい。 我ながらいいテーマを見つけ

オランダで自分が好きなものを取り戻した話

「オランダの音楽院に留学して一番よかったことはなんですか?」 こう質問されていつも困ってしまう。何を挙げればいいか迷うほど、たくさんの答えがあるからだ。 その中でも、自分がかわいいものが好きであることを思い出し、それを自分に許すことができた経験は、いまでも私の生きる糧になっている。 最初のきっかけはカササギだ。ハトほどの大きさで、真っ黒な頭に、黒とブルーと白の三色の翼、エメラルドグリーンの長い尾をもち、脚も黒い。そして白いおなかがなんともぽってりとしているのだ。飛べるか

カンボジア警察に捕まった話

カンボジアに来て一ヶ月ほどがたっただろうか。カンボジアは素晴らしい国である。 ガッツリポーカーをするために来るような国ではないが、飯、サウナ、マッサージ、酒。 滞在費も安く、まったりするにはこれ以上がない。そんなふうに思える国なのだ。 合わせて人もいい。英語がしゃべれない僕にもみんな良くしてくれる。現地語とも少し覚えて英語力もあがった。一ヶ月しかないVISAを延長して少しゆっくりしよう。そう思えるぐらいの国で僕はパスポートを代行業者に預けた。そんな夜だった。 僕は警察に

「ドのつくストレートやから」

「わたし、ちょっと前まで彼女みたいな子がおって」 幼馴染にそう告げられたのは、大学一年のころだった。平然を装った何気ない調子で切り出した彼女には、それでも少しの緊張感が漂っていた。 へえ、それはどこで出会ったん? それってどうやって付き合うみたいな感じになるん? なんで別れたん? 私は興味津々で聞いた。女性が女性と付き合うのが物珍しかったからではない(そういう友達は他にもいる)。そもそもの話として、私は恋愛話が大好きだったのだ。性別がどうであれ、その手の話はぐいぐいのぐい

自分で学ぶって・・・、どうやって? ーー学問とソーシャルワークと生きることとにある学びとしての共通点

大学では、自分から学んでいかないと、高校までのように学校があれこれ用意してはくれない、といったことをよく耳にします。けど、自分で学ぶってどうやって? っとなる人もいるのではないでしょうか。 最近は、大学もオリエンテーションなどいろいろしてくれるようになってきているし、「アカデミックスキル」のような科目も用意してくれてはいます。ネットでも、けっこう情報は出ているようです。 ただ、少し大学内の講義を受ける心構えとか、どう単位をとって卒業するか、という内容によっているようにも感

小説『ママのまほうのにんじんホットケーキ』(再掲)

ショリショリショリショリ。 だいどころからおとがするよ。 これはママがにんじんをけずっているおと。 ショリショリショリショリ、おとがする。 ママはあたしのために、いつもたくさんのにんじんをいれてホットケーキをやいてくれる。だからできあがるホットケーキはいつもほんのりあかい。たべてもでも、にんじんのあじはよくわからない。だけどほんのりあまく、このあまさが、ママがいうにはにんじんの、おやさいの、しぜんなあまさということらしい。 まあるいあまさね、とママはよくいう。へえ、そう

猫を拾って世界が変わった話

この作品は、保護犬・保護猫 Welcome Family Campaignとnoteで開催する「#うちの保護いぬ保護ねこ」の参考作品として主催者の依頼により書いたものです。

【毎週ショートショートnote】「二重人格」「ごっこ」

私の中には二人いる。いることにしている。 イチカとフタバ。 二人の得意分野はそれぞれ異なり、イチカは文系で芸術に秀でている一方でフタバは理系で運動に秀でている。 「ここは私に任せてください」 「ここは僕に任せな」 タスクが降ってきてはその時々で得意な方に振り分ける。怒られたときも、感情的に泣き落とすならイチカに任せ、論理的に対抗するならフタバに任せてしまえばよい。どちらも結局私だけど主観と客観を交えることでストレスなく生きてきた。 ところがこの方法ではなんともし難い事態に直面

文体を決めるには音を鳴らす/作家の僕がやっている文章術156

文章を、読むときには、頭のなかで音声が鳴るような感覚を抱くものです。 文例1・2・3は書いてある内容は、ほぼ同じです。 違うのは文体です。描き方です。 頭のなかで鳴る音声のリズムが異なります。 今回は、文体を音節を使って作り上げるテクニックをご紹介します。

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