The Beatles 全曲解説 Vol.5 〜Chains
イントロの「ひと工夫」の凄味 “Chains”
このアルバムでジョージが初めてリードボーカルを務める本曲。
こちらもカバー曲です。
オリジナルは、クッキーズというアメリカのガールズグループが1962年に発表した曲。
ジェリー・ゴフィンとキャロル・キングという、のちに「ロコ・モーション」を生むことになるコンビが作詞作曲しています。
少し重ためのビートとハンドクラップがクセになる、上質なR&Bです。
アメリカでもそこそこ売れたようです。
ビートルズによるアレンジも、ロック色が強まった程度で、オリジナルを踏襲した色となっています。
ジョージのボーカルは基本的にはクールで淡々としていて、ジョンやポールほど感情やその昂りを表に出すタイプではないのですが、
「好きな人に近づきたいのに、鎖が邪魔をして動けない」鬱陶しさ、もどかしさを丁度よく表現してるような気がしますね。
ジョン&ポールが歌うと、少し大袈裟に聴こえるのかも知れないと思いました。
さて、このカバーバージョンの聴きどころ。
そこはなんといっても、イントロのジョンによるハーモニカで間違いないでしょう。
本曲でハーモニカが演奏されるのはそのイントロだけ。あとは一切出てきません。
初期のビートルズナンバーでは頻繁にハーモニカが出てくるにも関わらず、イントロでしか演奏されないのは本曲だけです。
おそらくジョンは、オリジナルを聴いて物足りない部分を直感で見抜いたんでしょうね。
4人の中で最も本能型で芸術家気質のジョンですが、過ぎたるは及ばざるに陥らないところ、後の「世界のジョン・レノン」の片鱗を感じさせますよね。
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