The Beatles 全曲解説 Vol.8 〜Please Please Me
手応えバッチリ!初のNo.1シングル “Please Please Me”
本日は『Please Please Me』のタイトル曲をご紹介!
タイトルで “Please” という単語が2度登場しますが、
1度目のPleaseは「どうぞ〜してください」
2度目のPleaseは「喜ばせる」ということで、
「お願い!僕を喜ばせて」という意味になります。
非常に印象的で覚えやすいタイトル。
言葉を操る才能に長けたジョンの面目躍如です。
この曲、元々は大人なバラード曲を目指して、リリースされたものより非常にスローテンポに作られていたそうです。
スローバージョンは音源が出回っていないのですが、こんな感じにしたかったそうです。
ところが、ジョージ・マーティンはスローバージョンを聴いた途端、「ちょっと退屈な曲だなあ…」と一言。
デビューシングルの “Love Me Do”(次回解説します) がチャートTop10を逃したことで、マーティンは出来るだけ早くNo.1シングルを出したいと考えていました。
おそらくそのためには、落ち着いた感じではなく、もっとインパクトのある激しめの曲が相応しいと思ったのではないでしょうか。
かくして、マーティンは曲のテンポアップを提案し、ジョンにハーモニカを吹くことも指示します。
それがバッチリはまった結果が、このリリースバージョンなんですね!
イントロのハーモニカはもちろん、覚えやすいタイトルに加え、サビの「Come on! (Come on)〜♪」の掛け合いなど、初期ビートルズナンバーの中でも最も覚えやすく、親しみやすい曲のひとつとして変貌を遂げることになります。
完成した瞬間、マーティンはメンバーにこう呼びかけました。
「おめでとう!初のNo.1シングルの出来上がりだぜ!」
その予言通り、この曲はイギリスでグループ初のチャート1位に輝くことになります。
ちなみに、楽曲中にはビートルズらしい笑い要素も。
最後のAメロの途中「I know you never even try, girl〜♪」の歌い出しの「I know you」を、ジョンが間違えて「Why do I」と歌ってしまっているのが分かると思います。
さらに続く「Come on」の掛け合い。
自分のミスに気づいたのか、ジョン、笑っちゃってます(笑
この「細かい間違いなんて関係ないぜェ!」という勢いも魅力にしてしまう4人。
当時のファンが虜になってしまったのも頷けます。
補足情報〜ステレオとモノラル
特に初期ビートルズナンバーに顕著なのですが、ステレオバージョンとモノラルバージョンで、大きな違いが見られる曲がいくつかあります。
ここで、 “Please Please Me” のモノラルバージョンを聴いてみましょう。
ステレオと比べると音が一つにまとまっていて、先程紹介したジョンの歌い間違いもありません。
これは、1960年代中頃まで、一般リスナーの殆どがモノラル機器を使用していたことによります。
当然作り手側も、モノラル向けに曲を仕上げることに注力していたため、まだ主流ではなかったステレオ向けのレコードは、ほとんどおまけ程度に作られていたそうです。
したがって、現在主流になっているスレテオバージョンで初期のビートルズを聴くと、ボーカルが片側しか聴こえないなど、やや聴きづらい面があったりします。
(一部の曲は現代向けにリミックスされて、自然に聴こえるようになっています)
実際ジョージ・マーティンは、「モノラルバージョンを聴かないと、本当にビートルズを聴いたことにはならないよ」と発言しています。
確かに、モノラルバージョンを聴くと、音が分離せず一つに固まった状態が意識されているからか、勢いが何倍にも違って聴こえますし、こんなパワフルな音がたった4人の手で作られていたのか!と改めて驚愕させられます。
現在、フィジカルの媒体でビートルズアルバムのモノラルバージョンを聴くには、わりとお高めのボックスセットを購入する以外方法がありません。
いやあ、さすが商売上手…。
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