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半年の空白期間に、わたしを救ってくれたもの。

自炊が好きです。でも一人暮らしを始めたばかりの頃は、「お金がかかってめんどうくさいもの」だと思っていました。

最近、自炊料理家の山口祐加さんのnoteをよく読ませてもらっています。「一汁一菜」という言葉に出会ってからハードルが下がり、ますます楽しい自炊生活です。

大学生から始めた一人暮らし。
最初の頃はほとんど自炊していませんでした。コンビニのお弁当やおにぎりを食べる毎日。

そんなわたしが自炊を始めたきっかけは、「することが何もなかったから」です。

大学1年生の晩夏、部活を辞めました。
高校から始めた弓道を大学でも真剣に続けたくて、練習が厳しい部活動に入部。週5日道場に通いつめ遅くまで練習し、土日は自主練。授業の時間にも運営ルールを復習して、部活漬けの日々でした。

いろいろな要因が重なって、ある日、道場に行けなくなりました。行かなきゃと思うのに、足が動かない。呼吸が変になる。

退部届が受理され、わたしはぽつんと空白の日々に投げ出されました。

「部活」に占められていた時間がごっそりなくなり、授業とバイトと家の往復だけになりました。部活に合わせて早朝バイトをしていたので、授業が終わったらやることもなく。土日もほとんど予定が入らず。

精神的に少し参っていたのもあり、まず最低限「生活」を整えることにしました。掃除、洗濯、布団干し、そして自炊。

自炊は始めひどい出来で、とにかく食材を焦がしていました。レシピもろくに見ず、切って炒めて焼き肉のタレをかける。早く作って食べられればいい、と強火で熱するせいで肉もたまねぎも黒コゲ。

適当に卵と乾燥わかめでコンソメスープを作り、食卓に並べてもそもそ食べる。焦げてるものは美味しくない。生活を整え回復しているはずなのに、なんだか心が荒む味でした。

そんな食事を続けるうちに、嫌になりました。

節約のために自炊は続けたい。でも、なんで自分でまずいご飯を作らなきゃいけないんだろう。

部活に熱中していた頃は気にならなかったことが、ひどく気になり始めました。

かろうじて実家から持ってきていたレシピ本を開き、自炊と向き合い始めました。とにかくレシピに逆らわず、よく出てくる「料理酒」「みりん」(年齢確認されてびっくり!)をそろえ、野菜の切り方から練習しはじめました。
固形コンソメだけでなくお味噌も買い、薄かったり濃かったり味の安定しないお味噌汁を作ってみたり。

火加減との戦いは長引き、なかなか「じっくり待つ」ができませんでした。すぐに強火にしてしまい、焦がす。中火まで我慢できるようになり、ちょい焦げくらいになる。だんだん弱火、ついにとろ火を覚える。「コトコト」を楽しめるようになる。

煮物やポテトサラダなど、ちょっと手の込んだ料理(当時のわたしにとっては…)にも挑戦するようになり、少しずつ自炊が楽しくなり始めました。

そのうち、箸置きを買ってみたり、季節の野菜や果物を積極的に買ったりするようになりました。
毎年食べたことのない果物を買ってみる、という自分ルールを設けたりと、いつの間にか「食」そのものを楽しんでいる自分がいました。(5月なら枇杷がおすすめ!)

今年の誕生日には、部署の人たちからサプライズで土鍋をプレゼントしてもらいました。炊飯器を卒業し、土鍋でごはんを炊くまでになりました。お米を研いで、30分水にさらして、沸騰したら見逃さず火から下ろして20分蒸らす。「待つ」ができなかった時代には考えられないなぁと思います。

自炊と向き合ったことで、こころにも変化がありました。

がさつなところ、相手に強く当たってしまう癖が弱まり、「丁寧に接する」「寄り添う」が意識的にできるようになりました。

「早く使える人間にならなきゃ」「早く役に立たなきゃ」を、少しずつ自分でコントロールできるようになりました。今なら、「すぐには出来なくてもいいんだよ」と自分に声を掛けてあげられます。

自分で作ること、それが美味しいこと。「美味しい」のために待てること。

そうやって自炊し続けたことや、そのほかの家事に丁寧に向き合ったことで、知らず知らずこころは潤い、整い、新たなチャンレンジができるようになっていました。

大学1年生の夏から、大学2年生の春。

新しい居場所を見つけるまで、あの空白の半年間にわたしを支えてくれたものが自炊でした。自分のための料理が好きになれたから、誰かのための料理にもこころを込められるようになりました。

自炊がわたしにくれたものは、今思うととても大切なもの。
今もほとんど一汁一菜の自炊の日々です。いつかまた誰かとごはんを作って食べる日を楽しみに、今は自分の「美味しい」のために続けていこうと思います。

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