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災害発生時の傷病者の疾病構造

災害による傷病者の疾病構造はある程度予測することができます。
それぞれの災害や事故発生時および予防時に役立てるために理解しておきましょう。


自然災害時の死者・傷病者の特徴

地震

地震による死傷の原因は3つに大別されます。
①建造物の崩壊や、家具・家電の転倒・落下によるもの
②地震発生後の火災によるもの
③地震発生後の津波によるもの
特徴としては外力による外傷が原因です。

地震による死亡には、
①即死
②早期死
③遅延死
に分けることができます。

①即死

  • 建造物の崩壊や家具・家電の転倒・落下による頭部/胸部の圧挫損傷

  • 大出血

  • 津波による溺死

②早期死

  • 建造物の崩壊や家具・家電の転倒・落下による外傷性圧迫/胸部圧迫

  • 低体温

  • 大量の出血や脱水・外傷・熱傷等による循環血液量減少性ショック

③遅延死

  • 建造物の崩壊や家具・家電の転倒・落下によるクラッシュ症候群(挫滅症候群)

  • 脱水

  • 夏場などの高温多湿が原因による高体温

  • 冬場などの低温が原因による低体温

  • 感染症(創部感染、破傷風、ガス炭疽、誤嚥性肺炎、レジオネラ肺炎、肺炎球菌性肺炎、マイコプラズマ肺炎、百日咳、インフルエンザ、腸チフス、疥癬、結核、麻疹、水痘など)

  • 身体的・精神的ストレスに伴う交感神経の亢進による心疾患

災害初期では外傷による傷病者が大半を占めています。特に骨折や圧挫滅、内臓損傷、頭部損傷、クラッシュ症候群(挫滅症候群)です。
災害発生から1週間経過した頃には、避難所等で感染症が蔓延したり、身体的・精神的ストレスによって慢性疾患が悪化したり、避難所生活によるエコノミークラス症候群などの傷病者が発生します。
災害慢性期には、災害による心的外傷後ストレス障害(PTSD)や衛生状態の悪い場所で長期間過ごすことによる感染症の発生にも注意が必要です。

津波

津波による死亡者の殆どが溺死です。
傷病者の多くは海水を大量に飲んでしまうことによる誤嚥性肺炎や、長時間水の中にいた・濡れた衣服を着用していたことによる低体温を引き起こします。
また、海水は瓦礫を大量に含んで押し寄せるため、多発外傷や骨折、異物による挫滅などの外傷を伴うことが多いです。

津波によって壊滅的な被害を受けた地域では、ライフラインの断絶、下水等を含んだ海水が押し寄せたことによる衛生状態の悪化などが原因となって、感染症の蔓延、脱水、熱中症が多く見られます。

また、繁華街や市街地では大規模な火災を伴うため注意が必要です。

台風・竜巻

台風や竜巻は予測可能な災害であるため、死者は少ない。
台風においては

  • 倒壊した電信柱等の影響による感電

  • 飛行機/航空機の墜落

  • 船舶の転覆

  • 高波、河川の氾濫による溺死

などの関連死が大多数にのぼります。
また、竜巻では、巻き込まれてしまうと、倒壊・損壊した建造物などの破片が勢いよく身体に接触するため外傷が多発します。

火山・噴火

①火砕流(図1)・火山泥流によるもの
火砕流による死傷の多くは、火砕流の爆発による外傷や熱傷です。高熱の爆風による気道熱傷や顔面熱傷が主です。

図1:火砕流


火山泥流は高温の固まる前のコンクリートのようなものであるため、飲み込まれてしまうと身体の広範囲に熱傷を起こします。

②火山ガスによる被害
火山ガスには様々な物質が含まれているが、特に二酸化炭素(CO2)と硫化水素(H2S)は凹みのある場所に停滞する性質があるため、吸い込んでしまうと人体に重篤な危害を及ぼします。
他にも二酸化硫黄(亜硫酸ガス、SO2)、塩化水素(HCI)、フッ化水素(HF)、一酸化炭素(CO)なども含まれており、これらも高濃度になると、気道・粘膜に対する刺激症状に加え、意識障害や痙攣、肺浮腫(肺がムクむこと)

③噴石による被害
 噴火後走って逃げる場合が多いため、後頭部および背部に致命傷が認められる場合が多い。特に噴石(火山礫)による被害が大きい。

洪水・水害

直接的な被害による死者のほとんどは、河川の氾濫・洪水による溺死です。
2018年に発生した平成30年7月豪雨(俗称:西日本豪雨)で、岡山県倉敷市真備地区の浸水した地域で死亡した方々の約9割が溺死でした。

洪水・水害発生超急性期には、土砂崩れの生き埋めや外傷、水による低体温などの傷病者が多く見られます。
また、梅雨時期に多く発生する水害では、慢性的な感染症予防などの公衆衛生面での管理が重要となります。



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