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【in my book_#11】 町山智浩 『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』

「アメリカの今を知るTV」でおなじみの町山智浩さんのコラム集だ。

内容はTVと同じく、いつもの鋭い切り口で「本当のアメリカ」をズバズバとさらけ出している。

町山さんを知ったきっかけは2009年にTOKYO MXで放送されていた「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」だった。

この番組は、アメリカの闇を暴くような映画が紹介され、その映画についての解説を町山さんがするスタイルだった。
その解説を聞いて、「本当に色々なことを知ってるなあ」と感心しながら番組を観ていた。

それと、もうひとつ理由がある。
町山さんがカリフォルニア州バークレー在住ということだ。

兄弟ともに高校時代、カリフォルニア大学バークレー校に1ヶ月間の語学研修に行ったことがきっかけで、アメリカという国に興味を持っていた。
その興味はその後も冷めることはなく、兄弟で同じ場所に観光に行ったりした。
弟にいたっては、ニューヨーク州立大学に進学したので4、5年はニューヨークで暮らしながら大学を卒業したのだから大したもんだと思う。

この「大したもんだ」というのがポイントで、見ると聞くとは大違い。

アメリカは「自由の国」でもないし、「アメリカン・ドリーム」もないと知るのは経験しなければ気づかない。
しかし、アメリカは多くの人にそう思わせるイメージ戦略みたいなことはズバ抜けて上手い。これは日本との文化の違いである。

日本だと「やり方が汚い」「非人道的だ」と揶揄されそうなことでも、目的達成のためなら正当化(キャプテンやヒーローが現れて)して遂行する。
これが、僕が思うアメリカの嫌いな部分だ。

しかし、実際にアメリカで暮らしてみると、アジア人だと差別する人間もいれば、朝起きるとパンツやシャツをたたんで置いておいてくれるようなホームステイ先のお母さんもいる。忙しい中、時間をつくってサンフランシスコを案内してくれるような大学生もいる。

人は、人間も文化も違う外国に、どうしても偏見を持ってしまうことがある。

でも、よくよく考えれば、全員が悪者なわけがない。

けれど、まわりには善人も悪人もいる。そういう多様な人間に囲まれて自分の居場所を見つけ出す。
これが、アメリカという国に「チャレンジ」を感じる価値だと思う。

だから、「アメリカの今を知るTV」のように理想と現実を肌で体感した弟は、何をどう思っていたのだろう?
きっと、西海岸と東海岸でも違ったはずだ。

そして、結局のところ日本人だから、憧れて寄り添っても、離れても外国は外国だったんだと思う。

本書のタイトルを読んで、気づいた人は気づいたと思う。

「東京で暮らす人の半分は東京生まれじゃない」
みたいな真実味のある話を、様々なテーマに合わせて解説している。

しかし、野次馬みたいな感情を持ってしまうと、綺麗な思い出まで消えそうなのだ。時には「知らぬが仏」。

弟とのバークレーでの経験は、最高の人生経験として、いつまでも憧れ続けることにしている。

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