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ワインに言葉のスパイスを効かせる


これはワインに限らずレストランで提供される全ての料理にも言える事。

さらにはレストランというジャンルも飛び越えて、すべてのものに付加価値をつけるという意味でのスキルアップに繋がるのではないでしょうか。


商品や贈り物など、何か一つ誰かの手に渡す時にこのスパイスを最後の仕上げに一振りするかしないかで、全くそのものの価値を変えてしまう事があります。


実体験
を元に、今回はこの言葉のスパイスの重要性についてお伝えしたいと思います。


さまざまな場面で物に付加価値をつけるという上での、インスピレーションの源になっていただけたならば幸いです。


1. 同じワインなのに、持っていく人で味が変わる現象

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ワインが非常にお好きな常連様が、突然フラリとお店に寄っていただいた事がありました。


いつも私が担当をしていたお客様だったのですが、その日はたまたま非番でお休みをいただいていました。



常連様の事にすぐ気がついたスタッフが、いつも美味しそうに飲んでいるワインの事を思い出し、それと全く同じワインをご用意したところその日は何故かあまり気に入っていただけなかったそうです。


「私の思い違いだったのでしょうか?」


と、不安な思いをしたようなのですが全く間違ってはいないと伝えました。


こういう例はとても日常的に起こる現象で、ワインは栓を開けて注ぐ人が違うだけで同じものでもその印象を、ガラリと変えてしまう事があります。


2. 言葉の威力

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そもそもワインとは非常に感覚的繊細な感性を使って楽しむ飲み物です。


私たちソムリエはそういった性質をよく知っているので、そのワインに少しだけコメントを添えて出来るだけ良いイメージをお客様にもっていただけるよう気を配ります。



そこで多く喋り過ぎればウンチクっぽくなりますし、あっさりしすぎても物足りなさが残ります。



対応しているお客様をよく観察して、その方にフィットした力加減でコメントを添えます。


最後にレモンを一絞りだけ加える、というような感覚です。


3.例えばワインに添えるスパイス

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実際にはこういう事を、サービスしながらコメントします。


◆ 「最初の飲み始めは、少し控えめな印象を受けるかもしれませんが、注ぐ度に酸素をどんどんと含んでいき、次第に香りが花開いていきます。飲み終わるまでに変化していく印象をぜひお楽しみください」


◆ 「イタリアのワインはそのお国柄か、お食事と合わせていただく事で真の魅力が発揮されます。単体で飲むには少し弱い印象かもしれませんが、食事に優しく寄り添って料理の美味しさを引き立たせる役目を果たします」


◆ 「白ワインはしっかり冷やして飲むものですね。さっぱりと飲むのならばそれが正解なのですが、このワインは非常に芳醇で柔らかい、とても魅力的な香りを持ちます。その魅力を最大限引き出す為に、こちらは少しだけ温度を高めてご用意させていただきました」


こういった一言を添えるか添えないかで、


「このワインなんだか薄いかな?」


とか、


「この白ワイン冷えてないんじゃない?」


という印象が全く違うものになります。


4.料理に添えるスパイス

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ワインだけではなく、これは料理についても同じ事が言えます。


例えば、「暖かいうちにお召し上がりください」は基本として。


「最初は塩で素材の良さを味わっていただき、次に濃いソースでお召し上がりください」
だったり、


「野菜は今朝採れたてのもの使っています。シェフの実家の畑からとどいたものなんです!」


例えばこうして食べたほうが美味しいであったり、その料理の食材の魅力あるディテールなどを伝える事が、そのものにどれだけの情報的な価値を生む事ができるでしょうか。


そこで添えるか添えないかでは、きっと雲泥の結果になるでしょう。


5. 仕上げに付加価値を一絞り

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一言添えることで、そのものに付加価値が付く。これはレストランに限ったものではないはずです。


あらゆるものに転用してみると面白いでしょう。


添えた事で特に好印象を得る事ができたものを、冷静に判別して自分の中にどんどんプールしていく。


ソムリエでいえばそれが自らのスパイスの引き出しとなり、使い慣れた口調で毎度のサービスに添えます。


ワインのウンチクと同じで言い過ぎると返って逆効果を産みますが、その力加減に気を付けながら一言を添える事が大切です。


6. 付加価値という名のスパイス

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何かを渡す時に一言を添えるという事は、渡すそのものに付加価値を添えるという事が出来ます。


それは最後の仕上げで、素材が持つ魅力を最大限に引き出すという事が可能になるでしょう。


そんな時にこそぜひその一言を前もって準備しておく事を、オススメ致します😊


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