見出し画像

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』汐見夏衛

⚜あらすじ⚜
親や学校、すべてにイライラした毎日を送る中2の百合。母親とケンカをして家を飛び出し、目をさますとそこは70年前、戦時中の日本だった。偶然通りかかった彰に助けられ、彼と過ごす日々の中、百合は彰の誠実さと優しさに惹かれていく。
しかし、彼は特攻隊員で、ほどなく命を懸けて戦地に飛び立つ運命だった――。
のちに百合は、期せずして彰の本当の想いを知る…。─本書あらすじより


⚜感想⚜
死ぬことが決まっている人、死ぬことに誇りを持っている人と、どうやって向き合えばいんだろう。
それが自分の大切な人だったら尚更どうしたらいいのだろう。
考えても、考えても答えは見つからなくて、物語の百合と一緒に動揺していました。
でも、彰の遺書を見た時に、それを超えて涙が溢れました。
現在(いま)ここで彰の気持ちが百合に伝わって、本当に良かったです。
そして、更なる奇跡に感動しました。
そのおかげで読後は暗くならずに済みました。だから、恐れず、気軽に、たくさんの人たちに、「戦争とは何か」を知るために読んで欲しいです。

私達が今、当たり前に明日を迎えれる日々を手にできているのは、本書に描かれていた様な惨憺たる思いをした人々、「戦争」という何も生まれない悲惨な戦いに征った人々の犠牲の上に成り立つ平和だと思うと同時に、特攻という不条理に納得がいかない自分がいました。
死ぬことを前提に生きるなんて絶対におかしいです。
死ねることに喜びを感じるなんて虚しすぎます。
そういう風に国が洗脳していったことにも憤りを感じます。
百合や彰の様な残酷な別れ方をさせられた人々がきっと沢山いらっしゃると思います。
二度と同じ過ちを繰り返さない為にも、若者を中心に読むべき作品だと思いました。
ラノベなので読み易いです🙂
読みながら、BGMに松任谷由実さんの「風たちぬ ひこうき雲」が流れてきて、切なくなりました。

♡こころの付箋♡
p72他の誰かを救うためなら、誰かが死んでも構わないの?
誰かを救うためなら自分の命を失ってもいいの?……そんなのおかしいよ
p85お国を護る為と言いながら、結局は国の財産を失っていったということじゃないか
p146……これが戦争なんだ。
国と国の争いで、政府が始めた争いで罪も無い普通の人達が命を、家を、大切なものを奪われていく。
この目で見て初めてその恐ろしさと愚かさを実感した
p173こんなにも理不尽な目にあったというのに、何もかも仕方ないで済ませてしまう。
そんなの、受け入れちゃいけないのに。
どうして怒らないの?
この時代の人達は、とにかく何でも仕方がないということまで黙って受け入れてしまう。
家を失っても、大事なものを焼かれても、家族の命を奪われても。
死んでしまった家族の前で涙を流して嘆く人はたくさんいたけれど、理不尽すぎる仕打ちに憤る人は一人もいなかった。
本当に、そう思っているのだろうか。
仕方が無いって?
大事な人の命が奪われたのに?
私にはどうしても理解できなかった
p178数日後に確実に死ぬということが分かっているなんて、異常だ。
そんな異常な状態に置かれている人達に、どんな顔をして向き合えばいい?
p182人間だから。自分の意思とは関係なしに命を奪われてもいい人なんて、いるわけない
p183誰にだって、自分の意思で生きる権利があるのに。
誰にだって、生きたいと願う権利があるのに。
この時代では、そんな当然の権利も認められていないんだ
p185特攻なんて、やっぱり不条理だ。どう考えたっておかしい
P187板倉さんは死にたくないんじゃない。
生きたいんだ。
生きなきゃいけないんだ。
愛する人のために。
たとえ自分がどんなに責められても、罵倒されても、軽蔑されることになっても、愛する人の為に生き抜くと、板倉さんは決めたんだ。
それは間違いなくとても尊いことだと思った
p189死んだら、誰も守れないよ。死んで守るなんて、間違ってるよ
p190板倉さんの生きたいという秘めた思いを聞いた今となっては、お国のために死ぬことを、崇高だとか誇りだとかいう加藤さんの言葉が、本当に本心からのものなのか、疑いたくなる
p192生き恥なんて言葉、使わないで!
生きたいって思う人を否定する権利なんて、誰にもない!
生きようとする人を止める権利なんて、誰にもない
p200私は言えない。
お国のためなら仕方ないんだなんて。
大切な人が国のために死んでも仕方がないなんて、言えるわけがない。絶対に。
p202私はワガママで自己中心的な人間だから、他の誰かが死んでも、彰だけには死んで欲しくないと思ってしまう。
でも彰は他人が死ぬのを見るくらいなら、自分が死んだ方がいいと思うのだ。
どうしても理解しあえない
p203でも……敗けるかもしれなくても、俺たちは征かなければならない。
このまま何もしなければ日本は確実に敗けてしまう。
だが、俺たちが征けば、一機でも一艦でも多く撃墜できれば、たとえ万にひとつでも勝てるかもしれない。……だから最後まで粘るんだ
p209当たり前のような、またねの言葉。
未来が来ることを、こんな時代でも人々は信じて疑わない
p218悠久の大義。
軍人たちが好んで使う言葉だ。
戦争に行って死ぬことを大義だと言っているのだ
p242私たちは、日常的に命の危機を感じながら生きたりする必要はない。
こんなに満ち足りた生活をしていて、あの頃の私は、一体何が不満だったんだろう。
現代の日本は、本当に幸せだ
pたくさんの苦しみと悲しみと犠牲の上に築かれたこの新しい世界で、私達は、これからも生きていく

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』汐見夏衛


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?