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胸骨正中切開で縦隔腫瘍を摘出した話(2:大学病院)

大学病院へ

大学病院へ通院するまでの1週間はあっという間に過ぎた。
気持ちとしては落ち込みと開き直りが半々で、「俎板の鯉」とずっと唱え続けていた。
実際、もう自分で出来ることなどほとんど無い。
ここに来いと言われれば行き、ここに寝ろと言われれば寝るしかない。

大学病院の診察は、地方の総合病院に比べてとても丁寧だった。
まずは医師が自己紹介をして、「わからないこと、不安なことはなんでも聞いてください。時間はたっぷりとってあります」と言ってくれた。
先週撮影したレントゲンとCTをじっくりと見て、腫瘍があることを再確認。診断は先週とほとんど変わらなかった。
「腫瘍があることは間違いありませんが、問題はこれが良性か悪性(癌)かということです」と、医師は言った。「良性であれば手術で取って終わりです。ですが悪性となると一筋縄ではいきません。抗癌剤を使ってできるだけ腫瘍を小さくして、手術が可能かどうか見極める必要があります。そのための検査として、血液検査、PET-CT、造影MRIを受けていただきます」

※血液検査
いわゆる腫瘍マーカー検査。体内に癌があれば特徴的なタンパク質などが検出される。どの部位に癌があるのかまではわからない。

※PET-CT
いわゆるPET検査。造影剤を点滴しながら受けるCT検査。細胞分裂が活発な癌に造影剤が集まり、体内のどの部位に癌があるのかわかる。

※造影MRI
造影剤を点滴しながら受けるMRI検査。血管の状況が正確にわかるため、癌や腫瘍など「かたまり」を作る病気に有効。


この時点で自分のカルテには「病名:癌」とはっきりと書かれている。
医師が一時的にでも癌と診断しないとPET-CTや造影MRIなどの検査は全額自己負担になる。自費で行う癌検診が高額なのは全て自費診療になるためだ。
当日は腫瘍マーカーの血液検査を含め9本もの血液が採られた。
その後、PET-CT、造影MRIの予約。
全ての検査結果がわかるのは2週間後。

健康診断への疑念

レントゲンでわかるほどの腫瘍である。
大きさは約4〜5センチ。
しかし今年の5月に健康診断を受けた時には、なにも指摘されなかった。
医師も「4ヶ月でここまで腫瘍が急成長するものは見たことがない」と気になっているらしく、5月に健康診断を受けた病院に連絡して胸部レントゲンのデータを出すように依頼していた。
職場では結構な騒ぎになり、産業医も交えて来年の委託先の変更を真剣に議論されたらしい。
しかし結果的には5月の胸部レントゲンにはうっすらとした小さい影があるものの、これを指摘するのは至難という結論に至った。
結果的に自分の腫瘍は「4ヶ月でここまで腫瘍が急成長するものは見たことがない」ものだったのである。




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