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JO1最狂曲『Safty Zone』徹底考察

気をつけて 
誰かが 永遠に君を苦しめ続けるだろう


じっとりとした昏い目で、
こちらを見つめる11人。
楽園へおいでと執拗に手招きをする、
この曲のキーワードは、反転。

はじめまして。
アイドルオタクのマーと申します。

ハロプロなどの女子アイドル一筋だった私が
サバイバルオーディション番組
Produce 101 Japan Season2にハマり、
「男子もええやん……」となり、
更にSeason1で生まれた11人組アイドル、
JO1に気づいたのが今年6月のこと。

そこからぐんぐん彼らに惹かれ、気づいたらファンクラブ入会、ライブ参戦、プラメ購読(プライベートメールの略。月額440円でアイドルからメールが届くオタク垂涎サービス)……と分かりやすく沼っていきました。
JO1、おそろしい子……!

JO1はデビュー2年目にして、既に30曲以上の持ち歌があります。そのすべてが非常に洗練されていて、キャッチー。
それもそのはず。どれも韓国の第一線で活躍する作家陣が本気で作っている曲なのです。

その中でも、私が特に魅了された一曲が
『Safty Zone』

JO1のファーストアルバム『The STAR』に収録されている一曲です。

デビュー年のアイドルは、元気!さわやか!フレッシュ!海賊王に俺はなる!みたいなイメージの曲を与えられがちですが、この曲は全く様子が違います。

なんたって陰湿な間男の歌です。
この曲を新人アイドルのファーストアルバムにブチ込むラポネ(所属事務所)すげぇ。当時、末っ子の豆原一成くんは高校生やぞ。

タイトルは『Safty Zone』=安全地帯ですが、
歌詞を見ていくと、どこが安全じゃ!とツッコミたくなります。
もはやDanger Zoneだよ!
というのは、JAM(JO1のファンの名称)の間でよく言われる話です。

しかし、私はこのタイトルの付け方は実に秀逸だと思います。理由は後述します。

まずは出だしの歌詞を考察していきましょう。

こころ惑わす笑み 危険な甘い香り
一歩間違えればVIRUS(害悪) 痛みに変わるんだ
You're in a danger, girl(君は危険な状態だよ)
気を付けて 
誰かが 永遠に君を苦しめ続けるだろう

※カッコ内は筆者訳。

いきなり様子がおかしい。
どうやらこの曲の主人公は、
girl=君の身を案じているようです。
「永遠に君を苦しめ続ける」という極端な言葉を遣う割には、彼女を苦しめる犯人を名指しせず「誰かが」と代名詞にしてぼかすちぐはぐさを持っています。

ダンスの振付も、なんだか怖い。

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「永遠に君を苦しめ続けるだろう」と歌う箇所で
銃を模した指を喉元に当て、
絶命するような仕草。

「君がオレを無視して今の恋を続けるなら最後はこうなるよ」という主人公からの警告でしょう。

迷ったら ここに戻ればいいさ
Here can only save you
(君を救えるのはここだけ)

「ここに戻る」ということは、
彼女と主人公は以前、親密な関係であったと推察できます。
主人公は彼女の元カレでしょうか。

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甘い言葉の箇所なのに、
振り付けは後ろ手拘束&首絞め。
主人公の常軌を逸した独占欲を暗示しています。

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また、途中でこのように閂(かんぬき)を通し、門を閉めるような仕草があります。
このパートは
束縛を連想させるダンスが多いです。

よく見て Paradise(楽園) 
キミに送る Sign(合図)
Where you want,(君が求める場所)
When you need yeah(必要な時)
特別な人 守りたいよ Shine(その輝き)
I'll give you all, say the word oh
(君に全て捧げる、だから言ってよ)

自分は(彼女が熱を上げている彼と違って)極上だよ、尽くすタイプだよ、と畳み掛けるようにアピール。
熱っぽく訴える割には「奪う」「オレのもの」などの強い言葉は遣いません。
あくまで「サイン」を送るに留めます。
主人公が言って欲しい〝the word〟は「あなたの彼女にして」でしょうか。

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YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)
YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)

ここだけいきなり全部大文字で超怖い。
「DANGER(危険)」ではなく
「NOT SAFE(安全ではない)」という表現に、主人公の厭らしさが爆発。
あえて「NOT」をつけることで、陰湿さと必死さが際立ちます。この主人公、絶対陰キャ。

漂う闇 時に人を惹きつける
追うほど見える Mirage(幻影)
その先は何だろう

彼女の恋には、フィルターがかかっているよ、と言いたいのでしょう。
「あなたの好きな人って、そんなにイイ男ですかねえ?」と煽ります。
〝その先〟である「永遠に君を苦しめ続けるだろう」を冒頭でハッキリ言ったにもかかわらず、
しらばっくれムーブをカマしてきます。

You're in a danger, girl
(危険水域に達しているよ、ねえ)
痛みになる前に
もう止めよう Delusion(妄想)
もっと似合う場所がある Baby

人の恋心を「妄想」呼ばわりです。
そして出ました。お得意の婉曲表現。「もっと似合う場所がある」。それはオレの隣って言いたいんでしょハイハイ。

ここでは、歌っている人が前で踊る二人に割り込み、繋いでいた手を引き離します。
これは彼女と彼を破局させたいという願望のあらわれでしょう。
また、手を繋ぐ二人は、一人がもう一人を操るような仕草をしています。
彼女が彼に恋しているのは本来の意思ではなく、洗脳されているからだ、と主人公は解釈しています。

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君は Special(とくべつ)
守られるべき人
Here can only save you
(君を救えるのはここだけ)

彼女を「Special」で「守られるべき人」と大げさな言葉で修飾する主人公。
人の恋心を「幻影」「妄想」と言い放った主人公こそが妄執に囚われていると分かります。

秘密の Paradise(楽園)
オレと二人の
Where you want,(君が求める場所)
When you need yeah(必要な時)

「秘密のParadise オレと二人の」……えっ、パラダイスって、おまえん家のことなん??
珍しく「オレと二人の」と言い切ります。
ここらへんから、彼女をオトせる自信が湧いてきたのか、婉曲表現が減っていきます。

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心ゆくまで
癒すといいよ
I'll give you all, say the word oh
(君に全て捧げる、だから言ってよ、ねえ)

YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)
YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)

これは彼女、パラダイス(という名の家)に来ちゃいましたね。
心なしかさっきより主人公に余裕があります。

ここで一気に落とさねば!と、呪いのように
「YOU ARE NOT SAFE WITH HIM」を繰り返します。

たぶん、遠くからひっそりと唱えていた1番とは違い、今回は彼女の耳元で囁いているのではないでしょうか。

いつでもここで君を待ってる
苦しい時は
そう、忘れないで

I'll settle you down,
Settle you down(もう離さない)
I swear(君に誓う) 誓う
永遠に 泣かせない

彼女の完落ちが見えてきました。
主人公が勝者の笑みを浮かべている様がありありと想像できます。

I'll settle you down(もう離さない)は超意訳です。
直訳だと「君を落ち着かせる」になりますが、調べたところ、同じ「落ち着く」という意味のCalm downは精神的なニュアンスが強く、対するSettle downは「身を落ち着ける、決着を着ける」という意味合いが強いそうです。
直後が「誓う」なので、プロポーズに近い宣言なのかな、と解釈しました。

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「苦しいときは、そう忘れないで」と歌う所で
メンバーが作ったアーチを次々とくぐり抜けていきます。
このアーチは彼女の心理的障壁でしょう。
「この人でいいのか」「これは許されない恋なのでは?」と戸惑う心。そこに主人公は甘い言葉を畳み掛け、心を開かせていきます。
そしてついに……。

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「永遠に 泣かせない」と歌いながら、
彼女を抱きしめます。完落ちです。おめでとう。

さあ、ここから幸せな日々が始まる……と思いきや暗雲が立ち込めます。
ダンスもそれに呼応し、
文字通りくるりと「手のひらを返し」ます。

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You know me I like the danger danger
(ヤバイことに惹かれるんだ。知ってるでしょ?)
君はまるでAngel angel(天使)
オレの言葉信じさせるから
覚悟決め全部賭けれるから

ええ……(ドン引き)
さっきまでの控えめ人格はどこいったの??
これから始まるらしい危険行為の免罪符を求めてきました。

ダンスも激しさを増していきます。

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Girl, it's all about you
(ねえ、君のことしか考えてないよ)
ヤツから着信鳴る

イイ所で彼女のスマホが鳴って頭にくる主人公。
最初は恋敵に対して「誰か」とぼかしていたのに今や「ヤツ」呼ばわり。
なぜ着信の主が分かったかを考えるとめちゃくちゃ怖い。
たぶん、主人公はスマホを取り上げて画面を見ていますよね。

ここで彼女は怯え始めたのでしょう。
主人公は慌てて優しい顔を見せます。

オレは絶対泣かせない Yey Yey
大事なのは絆 信じ合う
I'm gonna take you to my world,
(オレのものにするよ)
bae(愛しい君)

おそらく彼女は以前、彼氏に浮気をされて苦しんでいた。
主人公は、自分だったら絶対にそんなことはしないと猛アピールします。

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Come into my zone(オレの元へおいで)
光るキミを
誰も汚せない
Just lock the door(ドアに鍵をかけるだけ)

(((( ;゚д゚))))
光るキミを誰も汚せない(オレ以外は)というカッコが見えるようです。
主人公の異常性に気づき、逃げようとする彼女を、物理的に閉じ込めます。

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よく見て Paradise(楽園)
キミに送る Sign(合図)
Where you want,(君が求める場所)
When you need yeah(必要な時)
特別な人 守りたいよ Shine(その輝き)
I'll give you all, say the word oh
(君に全て捧げる、さあ言ってよ)

抱きしめ合ったけれど、おそらく彼女はまだ決定打を口にしていないのでしょう。逃さないために自分の良さを再度アピールしつつ、言質を取ろうとしています。

YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)
YOU ARE NOT SAFE WITH HIM
SAFE WITH HIM
(彼といるのはよくない)

主人公は血走った目で、怒りを滲ませながらこう言っていそうだなと思います。
薄暗く鍵のかかった部屋の中で、壁際に追い詰められて震える彼女が浮かびます。
ここで暗転。ゲームオーバーです。

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完全にヤベー奴の歌でした。
JO1の曲の主人公の中で付き合いたくない男ランキング、ぶっちぎり1位です。狂気を孕んだ激しい愛は、フィクションの中だからこそ楽しめます。
良い子は真似しないでね!

タイトルが「Safty Zone」なのに、中身は超危険。その乖離で伝わるのは主人公の客観性のなさです。
「自分の隣が1番」と言いつつ、欲望に突き動かされて、彼女に自分の異常性を見抜かれ、
結果、危険人物になる。

この楽曲は「反転」の要素がよく使われています。
他人に「妄想」「幻」と必死で言うほど、真にその要素を持っているのは自分だとバレてしまう。
繰り返し出てくる「Paradise=楽園」も、
真逆の展開の示唆に思えます。
また、冒頭に「気をつけて 誰かが 永遠に君を苦しめ続けるだろう」という歌詞が出てきますが、この「誰か」は主人公が想定している「彼」ではなく、実は主人公自身なのではと思える結末です。

直接表現ではなく言外に匂わせる、作詞家さんの腕が光ります。うーん、プロフェッショナル!

細かい部分に気づくほど楽しめるスルメ曲。まるで一本の映画を見たような充実感が味わえる、非常に物語性と芸術性の高い、優れた楽曲だと思います。
この難曲をデビュー1年目で見事に表現してみせたJO1の皆さんは素晴らしい。

↑ショーケース(ライブ)バージョンもあるので、比べてみると面白いかも。

以上はあくまで私の解釈です。
当記事がJO1の楽曲の素晴らしさを伝え、
『Safty Zone』を楽しむ一助になれば幸いです。

こんな長い文を最後まで読んでいただき
ありがとうございます!

あ、私はこの曲で大活躍する與那城奨くん推しです。


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