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【詩】動脈の正義 / 正義の悪役

詩『動脈の正義』は、かなり皮肉と風刺を込めました。そういう作品が苦手な方は回れ右……か『正義の悪役』から閲覧をお願いします(苦笑)。
『なかがき』も結構うんたら長くなってしまった。
『正義の悪役』は、たぶん大丈夫なはず……!




動脈の正義


可もなく不可もなく生きてきた
正しくいればいいと思っていた

罠にはまっては死んでしまう
生きるために強くなりたくて
悪には刃向かおうと決心した

陰口を叩く奴らにバツ・バツ・バツ
裁きの鉄槌が下る目印をつけた
不快な奴にバツ・バツ・バツ
これ見よがしの論破砲を

ああこれは天職
勧善懲悪は生きがい

徳を積んで幸せになりましょう
皆の者よ私に続け
この世にはびこる悪を根絶しましょう

体を脈打つ正義が心に呼びかける
正しい事をしろ 正しい事をしろ

我こそはと先陣の一太刀
ぶしゃり、と音がして
悪の根付いた者が倒れた

自業自得の死を遂げた者に
花が一輪 一輪と手向けられ
集まった奴らは鬼のメイクアップ  

償え 命を 罪を 禊を 悪人め
正義の勇者にスライムどもめが
一人 十人 百人 千人
もはや罵倒はメガの圧力へ

ああこれは投了
四面楚歌はカウントダウン

本気で善い人生を送ろうとしたんだ
それなのに寄ってたかり村八分かよ

それなら正義を刃で貫こう
ぶちゅり、と鮮血
非業の死を遂げる勇者が一人


2022/06/02


なかがき

 ずっと、内心では思っていたんです。

 噓、陰口、噂話、嫌味、誹謗中傷などの罪に問われる行為、そして戦争──それらはすべて、当人側からしたら「正義」なんだろうなと。

 虚言・悪口も「でも・だって・どうせ」と冠する言い訳がセットで、初めて成り立つ。つまり、大義名分があるから、周囲の同意を得て、悪口はやっと悪口でいられるのです。


 私は戦争をゲス行為だと思っているけれど、プーチンや周囲の人間は、少なくとも戦争に正義を見出しているはずです。というか見い出せずに行っていたら、本当のゲスですよ……。

 まぁこれは、かつての日本にも言えますが。


 戦争を起こした政治家、芸能人に誹謗中傷して自殺させた一般人、学校の人気者の陰口を叩いて孤立させた同級生、部下をパワハラしてメンヘラにさせた上司、秘密を隠したくて嘘をついた子ども、虐待をした親、そのすべての人が、本人なりの正義をもち、行動するのです。

 なぜなら「悪い事」だと自覚しながらソレを行うのは、単純にストレスだから。「正しさ」がないと孤立して面倒だから。

 身も蓋もない理屈です。
 でも、すべての人がその理屈を使い得るし、ある意味それは、悪い事ではない。だって、悪いと思ってないもの。


 だから私は正義は2つあると思っています。

 この詩でなら「動脈」と「静脈」の正義。

  • 動脈→感覚的・感情的・自然と思える正義。

  • 静脈→思考的・論理的・考えてわかる正義。

 前者は主観的、後者は客観的と解釈できるかもしれませんね。

 世の中の「本人は正義だと信じていた犯罪」は、大抵前者だと、私は考えています。

 自分にとっては正義。

 罪を許したいとは思わない。
 でも、その正義が、他者にも共感される正義であれば良かったのにと、感じてしまう時があります。

 そんな世界線……パラレルワールドがあればと。

 誰からみても筋が通っていて、これは正義だと実感できる。もしかしたら、動脈と静脈をつなぐ、心臓のような正義が、この世界には必要とされているのかもしれない……なんてね(笑)。


 すいません。これ、ずっと思っていたんです。
 こういう人生論、いずれ自分の小説に活かせるとカッコよかったのですが、カッコいいのは自分らしくないので出してみました(笑)。

 眠くさせていたらスイマセン。
 安眠に役立っていたらオッケイ!

 では、刺激的ではない、もっと眠いかもしれない正義論をどうぞ(笑)。



正義の悪役


きれいな空気
もし 汚れることが無いならば
色も匂うことはないだろう

親切な人々
仮に 罪も無いならば
痛みから守る優しさもないのだろう

不老不死の薬
たとえば 完成してしまえば
世界がはちきれてしまうだろう

理想の白も 黒もない
矛があるから盾もある
陰と陽 くるくると廻って
七転にうんざり泣く日もあるだろう
それでも八倒すれば笑うのだ

悪の根源をやっつけられるから
正義のヒーローは生きていられるのだ


2002/08/30 コピー誌に掲載
2013/02/22 改訂


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