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【詩】待っていてね

柔らかい風にくるまれているような
まだるっこい液に浸っているような
沈むように埋められているような
そんな とぼけた満月の夜を感じている

本当は激辛カレーを食べたいんだ
王様の耳はロバの耳って叫んだり
でもそれができない とぼけた私がいる

待っていてねと声がする

緩く溶けそうで
泣きたいようで泣けなくて
もう少しで飛べそうな夜だった

どうか悪い魔女だなんて呼ばないで
頭を抱えてうずくまり
私は湖畔に行く夢を見る

時空を泳いで湖面を歩いて
名前を忘れた焦りに酔いしれる
どうか堕天使などと決めつけないで

待っていてねと声がする

何処からだろうと手探りしていると
いつの間にか胸を掻きむしっていた
脈動から伝わる鼓動の滲みが
確かに生き揚々と
何かを満たそうと頑張っている

それが何かを知りたかった私は
満ちるのを待っている

少しずつ爪先から
波動や潮や砂時計が
音も無く 眠るように

満ちたときに来る未来が
とぼけた世界でどうなるのか
虎視眈々としながら──
待っているからね




2022/07/13

トップ画像は、笑い猫(細村 誠)さんよりお借りしました。
なんだかこの方のイラスト、どこかで見かけた記憶があります……。はっきりと、いつ・どこでが思い出せません。すれ違いの追憶。知っているのは何歳の私だろう……。どの絵も、眼差しが真っ直ぐで好きです!



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