nuitomo

1998−2004インド+アジア旅 「インドの何がそんなに面白いの?」「毎日何してたの…

nuitomo

1998−2004インド+アジア旅 「インドの何がそんなに面白いの?」「毎日何してたの?」何度となく聞かれ何度となく答えたけど、うまく言えたことがない。いつか書いておきたかったことをくたばってしまう前に! 読んだ人が旅に出たくなったら嬉しいです。

最近の記事

涙をあつめたら【藤井風スタジアムライブ旅】

そのメールが来た時、私は車をパーキングに入れて休憩していた。「当選のお知らせ」の文字をみてコーヒーを吹き出し、しばらく呆然。ハッと我に返り急いで高校生の娘にラインを入れた。 「うおおおおお!当選じゃあ!」 「ほんと?やばい!生きててよかった!幸せ!」 ド田舎に暮らす私たち家族、毎朝鹿や狐が横切る山道を20分車を走らせ、通学のため駅に娘を送っていく。車の中にはいつも風さんの曲が流れている。ある朝は声の魅力について語り合っていた。 「例えばgraceが始まると、目の前に空がぶ

    • ミステイクはかわいい

      カルカッタの朝、賑やかな通りに面したCurd Cornerという店(Curdはヨーグルトのこと)でラッシーを飲むのが楽しみだった。 店先に大きな素焼きの壺がいくつもならび、新鮮なヨーグルトの表面にはクリーム色の膜ができている。注文を受けると店員の兄さんが壺からおたまでヨーグルトをひとすくい、砂糖や氷を加え、木の棒でぐるぐる撹拌する。カップに注ぎ仕上げに濃厚な膜のかけらをのせてくれる。外のベンチに座り、通りを眺めながら並々と注がれたラッシーを飲んで朝がはじまる。 とにかく目の

      • ペダル君 【旅で出会った犬たち:インド】

        インド東海岸のオリッサ州の聖地プリー。のんびりした海辺の町で、日中の暑い時間は町全体が昼寝しているみたいだ。太陽が傾きはじめると、通りに活気が戻ってくる。オリッサベーカリーというパン屋さんがあって、食パンや惣菜パン、夕方になるとコロッケも売っていた。お店のすぐ隣にパン工場があって、従業員がよく外の階段で休憩していた。私が通りがかるといつも笑顔で「うちの工場見ていけよ」と手招きしてくる。はじめは断っていたけど、毎回毎回「見て行け」というので一度入ってみた。大きなオーブンを指して

        • マンチュー【旅で出会った犬たち:インド】

          インドの南端ケララ州。ケララ、なんとなく楽しげな響き。現地の言葉マラヤラムで、「ヤシの木の大地」という意味だと聞いた時、やけにワクワクした。この土地がケララと呼ばれ始めた大昔から、ずっと変わらず陽気なヤシの木がニョキニョキと生えてるなんて。 私とKは州都トリヴァンドラムからビーチに向かうバスに乗った。 窓から尺取り虫みたいにヤシの木に登ってココナツを落としている人が見えた。 バスの中で話をしたインド人の若者に「これからビーチに行くなら、僕の友達の宿に来ないか?」と言われ、ひ

        涙をあつめたら【藤井風スタジアムライブ旅】

          赤チンとペコペコ【旅で出会った犬たち:インド】

          南インドの小さな山あいの村に数ヶ月部屋を借りた。マドゥライで旅人から聞いた情報を頼りにたどり着いた小さな村だった。市場やバスターミナルがある町から、車の通らないガタガタ道を歩いて小1時間くらい。 この辺りに貸してもらえる部屋はないか?道ゆく村の人に尋ねながら歩いていく。 何人目かで案内してくれるおじさんが現れ、「あそこはどうだ?空いてるけど」と指差した先は、丘の斜面に建築途中で止まったような藁葺き屋根の小屋。 中を見せてもらうと、がらんと何もないコンクリートの部屋の隅に水道

          赤チンとペコペコ【旅で出会った犬たち:インド】

          ラムーとモニー【旅で出会った犬たち:インド】 

          南インドの聖地に滞在していた時のこと。この町にはシヴァ神の聖山があり、満月になると各地から巡礼者が集まってくる。 刺激的な北インドから南下してきた私とK、始めの数日はアシュラムに泊まっていたが、もう少しこの町でのんびりすることに決め、近くに部屋を探すことにした。 スマホのない時代、情報は人が頼り。 目的を持って歩いていても、全然違うことが起きて回り道せざるを得なくなって、結果その余計な時間がミラクルだった、みたいなことが旅では日常になっていたので、私たちはいつも「犬も歩けば棒

          ラムーとモニー【旅で出会った犬たち:インド】 

          チャイ屋でチャイを飲まない人【カルカッタ#4】

          チャイ屋と言っても、やかん一つを持って売り歩くチャイ屋もいれば、小屋みたいなチャイ屋もあれば、ちゃんと店舗を構えたチャイ屋もある。写真のチャイ屋はカルカッタのいつも賑わっていた店。 壁は煤だらけ、神様の絵やカレンダーが貼られ、天井で埃をかぶった扇風機がキコキコ回っていた。どれだけたくさんの人達がここでチャイを飲んできたんだろう、長い長い時間を感じさせる店。 ある時ここでチャイを飲んでボーッとしていると、あるおじいさんが隣のテーブルに座って、何か注文した。店員が運んできたのは

          チャイ屋でチャイを飲まない人【カルカッタ#4】

          とうもろこしの芯が描く放物線【カルカッタ#3】

          インド旅も数ヶ月目になり、美味しいものを見つける勘がはたらくようになってきていた。そんなある日、カルカッタの道端でトウモロコシ売りに遭遇。アルミのタライのような容器の中で炭火を起こし、その上に並べたとうもろこしから甘い香りが漂っている。 スパイシーな味に食傷気味になっていたので、吸い寄せられるようにおじさんに1本注文。すると黙って首をくねくねさせ(これはOKの意味だと学習済み)レモンの切り口に塩とマサラをつけて、とうもろこしの表面にまんべんなく塗りつけていく。完成した焼きトウ

          とうもろこしの芯が描く放物線【カルカッタ#3】

          タイムスリップ【カルカッタ#2】

          カルカッタの路上は混沌としていて見飽きることがなかった。道脇にある井戸水のポンプの周りには、水を汲む人、洗濯する人、体を洗う人がひしめきあう。 洗濯する人は、汚れた地面の石にゴシゴシ擦ったり、叩きつけたり。 綺麗になってるのか汚れているのかわからない、洗濯の概念がひっくり返る洗濯。 体を洗う人はガムチャを腰に巻いて、地べたに座って泡だらけになり、柄杓の少しの水で器用に洗い流す。 水を汲む人はポンプの口に袋をくくりつけ、キコキコと棒を押していた。その不思議な形の黒い袋が気にな

          タイムスリップ【カルカッタ#2】

          来てしまった【カルカッタ#1】

          インドに行くつもりはなかった。 本当はアラスカに行くつもりだったのに、とうとうカルカッタまで着いてしまった。空港の出口には、人、人、人。 とんでもない数の客引きがゲートの向こうで束になってひしめきあっている。 「ヘロー!タクシ?タクシ?」 血走った目で私達に手招きしている男の群れ。 ここを突破する?そんなことできるのか?と後ずさりした1998年の1月。 私の旅のスタート地点はバリ島だった。 南の海から回遊する鯨みたいに北上し、星野道夫のアラスカを目指すつもりだったんだ。 し

          来てしまった【カルカッタ#1】