曾祖母の手紙と父への想い
父は昭和16年生まれで現在83歳である。彼が5歳の時に実の母を亡くし、その後祖父は再婚した。再婚後は4人の娘たちが生まれ、父にとっては腹違いの妹たちができた。
父は継母について多くは語らないが、必ずしも順調な関係ではなかったかもしれない。と私は想像している。
そんな父の母方の祖母は、父のことをとても心配していたと聞いた。実母が亡くなった後も、祖母は父にたくさんの手紙を書いて送ってくれており、父はそれらの手紙を今も大切に保管している。
継母が来てからは遠慮があったようで、堂々と父に会いに来ることはしなかったそうだ。今とは時代も違う。会いたくても会えない孫。それでも、祖母はわざわざ電車を乗り継ぎ、遠くから父の様子をそっと見守っていたらしいのだ。
私が生まれた頃には、曾祖母はすでに他界していたので直接会うことは叶わなかったが、彼女は慎ましく思いやりにあふれた人だったのだろうと思う。愛娘を失い、孫に会うことすらためらう気持ちを抱きながら、それでも父を陰から見守っていた曽祖母の想いを想像すると、胸が締めつけられるような切なさを感じた。
そんな背景を持ちながらも、父は病気一つせず、腰痛を抱えつつも今も元気に生活を送っている。人生の中で感じたさまざまな思い出や祖母の優しい想いを心に抱きながら、高齢者となり時間に余裕がある今、人生を振り返ってみて思い出すことが多くなったのかもしれない。夏に一時帰国した時、父は同級生たちがどんどん減っていくことが寂しいと言っていた。
私は、歳とともにますます頑固になっていく父を鬱陶しいと感じていた。孫たちが大好き過ぎて、気持ちが空回りしている風に見えることもある。私自身が、自分の過去を振り返る中で、父にどれだけ愛されて育ってきたか認識することができ始めている。孫への気持ちが空回りする姿も多少愛おしく思えるようになってきた。
次回帰国する際は、もう少し優しい気持ちで接することができるかもしれないと思えてきた。前回お互いにキレあっておじゃんになった旅行の計画もまた立ててみよう。もっと昔の話を聞いてみたい。
これからも父の健康が続くことを願う。