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いえづくりの視点|私は誰なのか

夏の青空と入道雲を見ると少し悲しい気持ちになる。
小林です。

高校生の頃に司馬遼太郎さんの本を沢山読みました。

その中で『愛しい(かなしい)』という表現に初めて出会いました。
当て字にしては凄く共感できて、心が騒ついたのを覚えています(当て字ではない)。
尊いものがいつか失われる予感を伴うと、愛しくなるんですかね。

日本語は本当に奥深くて美しいですね。

ある視点

わたしが自分の仕事(建築意匠設計)を語る上で、重要ではあるけれども、非常に長く・・・本当に異様に長く、無意味な前置きがあります。

その前置きとは、私はどこからどのような角度で物事を見て考えているのかということです。

何の価値もない、ひとりの人間の、どうでもよい話。
とはいえ、私が建築を語るならどうしても省くことのできない話なのです。

私は誰なのか

私は私を知っています。
私がどれだけ美しい考えを持ち、どれだけ誠実でかつ、どれだけ醜く後ろめたい想いを抱えているのか、自覚しています。

一方で社会の中での私は私の知っている私でしょうか?

Aさんから見た私は、頼り甲斐があり優しいかもしれません。
Bさんから見た私は、世渡り上手でズルいかもしれません。
Cさんから見た私は、居ても居なくても変わらないかもしれません。

どれもきっと私の知っている私とは違うでしょう。
でもそれは私です。

この世に生まれた時から、私は私である一方で、誰かから見た私です。

誰かから見た私を、理想の誰かに自ら創りあげる手段もあります。
セルフブランディングとか呼ばれるものです。
それは本当の私ではないけれども。

彼や彼女は誰なのか

私から見た・感じた世界は、私が見た・感じた世界で、それは私しか知りません。

誰かにそれを感想として伝えることはありますが、表現するための言葉が足りず、真にありのままに伝えるのは困難でしょう。

ということは、私が社会生活をおくる世界は、私の思い込みであり、自由自在ということになります。

私から見えない、私が見ようとしない物は存在しないも同義です。
他人との関係性においても、お互いに見えない、見ようとしない物がある以上、世界を完全に誰かと共有できる日は永遠に来ないでしょう。

私から見た彼や彼女も、私が思う彼や彼女です。
これもきっと私の思い込みであり、彼や彼女は本当は違う人なのでしょう。

孤独

私が私の頭の中で私の世界を創り出しているのであれば、そしてそれを誰かと共有できないのであれば、それは非常に孤独なことです。

誰も私を理解せず、私も誰をも理解しない世界。

でも。

そんな独り善がりで、孤独なお互いが、なんとか相互に理解し、世界を共有しようとしている。

それは不可能で、絶望的ですが、それでも何とかしようとする試み。

それこそが、創造力であり想像力であり、美しい社会を生み出すものだと私は思うのです。

私は誰に何を創るのか

私は建築の意匠設計を生業にしています。

目の前には彼や彼女が居て、彼や彼女の前には私が居ます。

お互いの『私』の中のアイデアを共有し、ひとつの建物として社会にポンッと置くわけです。

私たちの目の前に拡がる、絶望的で冷え冷えとした社会に、私たちが互いに理解し合おうと正しく努力を行い、建築を創る。

その創られた建築は社会に露出する。
それは未だ見ぬ誰かの世界にポンッと現れる。

全ての人が共有する社会に何かを生み出すこと。
それこそが物づくりの本質だと私は考えます。

建築における対話の重要性

というわけで。

勝手知ったる夫婦や仲間ですら、相互理解が非常に困難なのは致し方ないことなのだと私は思っています。

さらに、建築における顧客は初対面であることがほとんどです。

もう完全に別世界の人ですね。

初対面で自身の内面を開けっぴろげに語ることは、非常に勇気を伴うものだと思います。

けれども、私が貴方を知らないということ
これが非常に大きな問題だと考えています。

何かを創造・想像するには、何かを共創するには、あまりにリスクが高いのではないでしょうか。

私は物づくりを行うにあたって、対話(ヒアリング)を圧倒的に重視しています。

出来得る限り、私と顧客との間での世界観の乖離をなくしたいが為です。

物づくりは作り手(私)の世界観も非常に色濃く反映されます。

一体どんな考え方で、どんな人生を生きてきた人が設計するのか、それも顧客にとことん知っていただきたい

建築物の大小に関わらず、世界にポンッと置かれた建物は、社会に非常に大きな影響を与えます。
その建物を利用する人には尚更のことです。

共により良い世界を創り上げることができれば幸いです。


初めて『想い』を書きましたが、暗いですね・・・。
でも良いんです。
これこそが私らしさですから。

今後も視点シリーズとして私の内面を書き綴ってゆこうと思います。

小林でした。

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