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地方視点で感じた東京

何十年も昔の話になるが梅田の某予備校に通っていた。東京の大学を目指すクラスだったこともあり、英語講師(革命家を自認する面白い人だった)が何かの拍子に「大阪の街には色がついているが、東京は無色だ」という話をしていて、なるほどと思ったことを覚えている。もちろん東京には色がないと言うことではなく、あまりにもたくさんの色がありすぎて無色になるという意味だ。
あれから幾度となく訪れている東京は、さらに巨大で多様な色の坩堝になり、行くたびに無色度を増している。

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昨日まで遊びに行っていた東京。
今回は、渋谷を中心に最先端な今の東京を見て回った
僕の住む神戸だけでなく地方は完全に人口減少局面に突入している。それと反比例するかのようにますます成長を加速させているように見えた東京には、眩しさと同時に危うさを感じた。

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地方から見る東京

一口に「東京」と言っても、首都圏に住む人とそれ以外では捉える範囲が異なっていることだろう。
地方から見る東京の範囲は行政区の単位ではなく鉄道沿線単位であり23区よりもかなり広いエリアだ。神奈川県や千葉県の一部も「東京」になる。(兵庫県にある尼崎市や甲子園が大阪と思われているのと近い感覚)

また、首都圏出身者以外の日本人は意識しているかどうかは別にして、自分たちの住む地域を通して見る世界と、東京を通じて見る世界という二つの視点を持っている。地方人は複眼だ。
メディアや映像作品などを通じて日々入ってくる東京の情報。神戸愛を語る僕も(まだnoteでは語ってないけど)、神戸周辺の地域のことよりも東京のことに妙に詳しくなっていることに自分で驚く。

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◎渋谷の変貌

渋谷を訪問したのは3年ぶりぐらい。話には聞いていたけど、その変貌ぶりには驚いた。
常に人や車でごった返しているものの、スペースもないし再開発なんてできそうにも思えなかった渋谷が立体的な街として生まれ変わろうとしていた。壮大なプロジェクトが着々と進行し、その一部が姿を現しているのには素直に感動した。

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もともとIT企業が集積していた渋谷。幸いなことに、新しくできた超高層の渋谷スクランブルスクエアに本社を移した某IT企業のオフィスを案内してもらうことができた。
そのオフィスは渋谷駅前の喧騒が嘘のように静かで、広々としていた。コワーキングスペースのWeWorkのような上質な空間を自社で持っているような感じだ。窓の外には視界を遮るビルはなく、壮大で素晴らしい景色が広がっている。
世界から有能な若者を集め、創造的な能力を発揮してもらおうとすればそれぐらいの環境を用意することが必要なのだろう。向かいの高層ビルは一棟丸ごとGoogle日本法人の本社だという。

◎東京以外の選択肢もある

渋谷の上空に広がる別世界。
ふと思ったのは、渋谷のど真ん中にあれだけの空間を確保するのにどれだけのコストが必要なのかということだ。

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世界の中でも最高に過密とも言える場所に、それだけのスペースを確保することは会社の実力だし、人材獲得にもつながることだろう。
でも、空間を確保するために投下されるコストとそこから生み出されるもののバランスを考えた時に感じたのは、場所にこだわりすぎることの危うさだ。それは渋谷という特定のエリアではなく、東京全体の問題といっても良いかもしれない。
半世紀ほど前の大阪には、東京と競えるほど多くの大企業の本社があった。今ではそのほとんどが東京に本社を移し、大阪は東京からみるとその他大勢の都市の一つでしかなくなった。地方の人は複眼を持っているという話をしたが、企業も東京に行ってしまうと東京からの目しか持たなくなる。そこに危うさが潜んでいる。
政治、行政、企業の中枢機能が集中する東京。「東京にいると東京しか見えなくなる」という問題は、実はとても根深いものではないだろうか。それは複眼を持つ地方人だからこそ感じることかもしれない。

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◎振り子には揺り戻しがある

過密度合いも行くところまで行き着き、地下を掘り返し、巨大なビルへの建て替えを進め、できたスペースに新たな企業や人を呼んで来るというループを続けている東京の現状。再開発はさらなる過密の呼び水となる。
しかし、振り子と同様に、行き過ぎた「状況」というものには必ず揺り戻しがある
帰りの新幹線の車窓から現在進行形の東京駅や品川駅周辺の大規模な再開発状況を眺めながら、そろそろ戻り始めているように感じる振り子の行き先に思いを馳せた。

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先進国を中心に世界の国々が今後直面する人口減少という問題では、日本は世界の先端を走っている。
その日本で、何年も前から人口減少問題に直面しているのは地方だ。東京で数日を過ごして感じたのは、東京にいると人口減少問題が他の国の出来事のようにリアリティのない問題に感じられてしまうこと。東京の人口が減り始め、首都圏の人たちが人口減少問題を自分ごととして目の当たりにした時、何が起こるのだろうか。

◎新たな流れ

東京一極集中の流れからすると微々たる動きかもしれないが、最近では徳島県神山町や岡山県西粟倉村のような地域への移住者の増加が話題になっている。秘境とも言って良いそれらの場所へ移住しても最先端の仕事が可能になったのはIT環境の浸透によるものだ。
実は僕の周りでも、東京からの移住者に出会う機会が増えている。それらの方々は、僕から見てもとても魅力的で、自分なりの価値観を持って考え、周りに流されず行動している人たちだ。
時代の先を感じる感性を持ち、自分の頭で考えて行動する人たちは、東京以外という選択肢の可能性を見て動き始めている。

ゆとりがあって創造性を喚起されるような環境は、地方であれば格段に低いコストで手に入れることができる。
交通手段が発達し、オンライン会議などで直接顔を合わせるのと同様にミーティングができる現代では、必ずしも東京にこだわる必要がない仕事も増えている。ちなみに、僕の住む神戸から東京まで、神戸空港を利用すれば羽田へ1時間で着く。

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地方創生の掛け声が日本中にこだましていた最中には、ますます東京への一極集中は進んだ。巨大な流れは慣性の法則と同じで急には止まらないが、振り子は必ず戻ってくる。

現在も膨張を続けている東京は、過度な集中への振り子が戻るタイミングと人口減少の本格化が重なることになる。これからは知恵を絞り、振り子の速度を試行錯誤しながら調整していくフェーズになることだろう。東京からの視点しか持っていないと思う人は、これからの時代に備えて積極的に複眼を養っておくことをお勧めしたい。

2020年最初のnoteはとりとめのない話となってしまったが、大好きな東京にはこれからもちょくちょく遊びに行くし、その都度感じたことを書き記していきたいと思っている。

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