詰めて、詰めて
帰宅路。
閉店十五分前20%OFFになったパンを齧りながら。
パンを入れるポリ袋のカシャカシャする音、
一本奥の道で歩いてるヒールを履いたOLの足音、
猫と散歩しているおばさんの背中に、
猫の鈴の音。
どこかのお家の給湯器の音、
お風呂が沸きました。
このお家はオール電化じゃなくて、ガスを使っているんだね。
夏の蛾が、
必死にボロアパートの廊下にある電灯に衝突する音。
君は、
君からの着信音がまだ聞こえてこない。
別れた彼には春が来たらしい、
とても喜ばしいことだ。
お互い幸せになれたらいいな。
今日はエレベーターの前に、
和服のおばあちゃんが足痛いって言ってたから
「絆創膏いりませんか」て声をかけた。
要らないわ、
その言葉だけでわたしは嬉しすぎて涙が出るよと。
泣きたいのはこっちです。
急に雨が降り出す東京の夜七時、
すべてがどうでもよくなる気持ちで日々電車に乗る。
あなたのおかげで今日はとてもいい日になったよ。
今日も昨日より少し優しくなれた、
もう少しだけ、
ほんの少しだけ愛し方がわかった気がした。
写真に詩をつけろと、
その方がいいよと、
君は言うけれども。
その時は君へのメッセージだったから、
今も読む相手を君だと想定しているから、
こんなにも文字がオタマジャクシみたいに出てくるの。
答えてあげたい、
でもわたしはそんな簡単で安い女じゃない!
君は色んな人に興味を持ち、
色んな人のアートに感動する。
それ自体はすごいことだ、
君がいかにスポンジなのかがバレるけどね。
ただわたしは、
かけがえのない…
唯一の…
圧倒的な…
ちがいますね……
わたしは、
君を詰めたところでなにを欲しがっているんだろう。
寂しいゆえの願望は愛じゃない。
でも、
君にはわたしが必要だと、
今強烈に勘違いしているから、
はやく、
そばにいてあげたいんだよ。
70億分の1の私を見つけてくれてありがとう。