血羽館の殺人
この前見た夢を、書き起こした。
支離滅裂でよく分からない話。
チバシティの中心部から車から1時間、さらに船で30分。ようやく今回先生が招待されたK氏夫婦のゴシック風の館にたどり着いた。K夫婦は推理小説好きでなんとしても先生に来てほしいと以前から何度もお誘いしてくれたそう。わたしはその夫婦のミステリ愛が良くわかる館のデザインに感動する。
今回は一泊二日のミステリ館ツアーのイベントで、私たちの他にも50代の男性一人、30代のカップルに20代の女性二人、合計7人の参加者。具体的にどのような事をするかは誰も知らされていないようだ。
K氏夫婦二人は最初に挨拶しただけですぐに船乗って消えた。最終日、日が暮れる前に迎えに来てくれるだそう。怪しい館にクローズドサークルな環境、しかも推理作家と新人のアシスタント。つまり舞台も探偵役もワトソン役もそろっている、あとは犯人と被害者がいれば完璧だ。
不謹慎かもしれないがわたしはこのツアーのことを聞いてからずっとワクワクしていた。推理小説ではよく読むけど実際に殺人事件に立ち会ったことはなかった。もしかしたらK夫婦はそんな人たちの為に手の込んだ新しいタイプのマーダーミステリーゲームでも用意してくれたんじゃないかと期待していた。参加者7人ていうの数も意味ありげに感じた。
先生は館に到着した後すぐにA4サイズのノートを広げた。そこに参加者全員の名前とそれぞれ自己紹介の時に話した内容のまとめ、隣には時刻を記録する欄とその時の行動、表情が細かく書き込んである。他にも館と来た時の通った池とその中に細かく分散しているダムのミニチュア模型の簡易地図、館の平面図にメイン家具の配置。名探偵は鋭い観察力と常人の記憶力以外にもマメさが必要だなと思って自分のメモ帳に書いた。先生のノートを真似て万が一事件が起きた場合にも対応できるように参加者の「怪しい」行動と発言をメモする。
朝8時に到着し、そこからの行動は全て自由だが冬だから日が暮れるが早いのでみんな明るいうちに外を探索して夜は暖炉の側でお話でもしようという流れになった。
昼、50代男性の死体を発見。書斎の長いテーブルの上に伏せ身になっていて、周囲は古いハードカバーの洋書とゴシック風のクッションやランプなどが散らばっている。彼の背中に刺し傷があった。彼の黒いワイシャツが血に染められ、光の加減によって綺麗に光ってすらいた。
昼、討論時間。みんな冷静で誰も警察呼ぼうとしなかった。もちろん本当に死んでいる訳ではないから救急車を呼ぶ必要もない。妙にリアルな現場ですごいなーと感心した。参加する前にマーダーミステリーのルールを調べた、謎解きも大事だがそれよりもちゃんと役になりきってその世界に生きている心構えの方が重要だそうだ。だからわたしも先生もその場の人たちに合わせて、探偵役とワトソン役を徹底しようと決めた。まだ到着して2、3時間しか経っていないからこの後も事件が起こるだろうと密かに思った。
この時点に犯人の正体を暴く確証は絶対ないと思うが、終盤に大事な役目を果たすヒントが隠されていると信じ、とにかくまず現場を捜査しなければと思った。
予想通り事件は続く。初日の午後、20代の女性二人が狂い始める。そのまま二人は池に投身自殺。さらに初日の夜、カップルの男性の方が亡くなる。
流石におかしいと思ったが連絡手段も脱出手段もない先生とわたしは残り一人と一緒に謎解きをする。二日目の朝、その女性も亡くなる。夫と同じく刺殺。
もしかしたら別の参加者がいる、もしくは主催者が黒幕か色々仮説を立てるがどれも違った。時間になってもK氏夫婦とは連絡が取れない、わたしはパニックになる。その後K氏夫婦の死体も船と一緒に見つかる。
先生は館にあったカセットテープと手書きの詩の謎を解く。どんなことがあっても書き続ければ真実は見えてくるはずだとわたしを慰める。その館は主催者の夫婦の夫側の先祖が所有するものだと判明。詩からヒントを得て、書斎にあったアートナイフで死体の背中を切る。その中から羽がでてくる。その血の羽が一族の印であった。
ここからは朝起きてこの夢に対しての予想。
亡くなった人たちとK氏夫婦はみんなその一族の人間でした。今回のツアーはその一族の残酷な伝統に絶望し、そんな一族の真実を世間に伝えたい思いで企画した。その一族は日本の全てのダムを裏でコントロールしていた。ダムは地域の有権者たちの罪を隠し、邪魔者を消す道具であった。その全ての証拠をこの館に隠し、先生にはその証拠と一緒に自分たちの死を本にして欲しいと願っていた。
先生は血羽一族の出来事を書き、ベストセラーを生み出す。ただ世間にとってそれはフィクションであり、エンターテイメントでしかなかった事に気づく。先生はわたしに一部始終を忠実に再現した本を書いてほしい、自分の名前では自由に書けない方わたしの名前で世間に真実を伝えてほしいと。