痛いおんな(ピアスのおはなし)

少し前、舌ピアスを開けた。五感での痛さのみではなく、存在としても痛々しい。ビジュアルが痛い。

数年前、交通事故に遭った際、脳の血管の一部が死んだ。おかげで結構な期間を定期的にMRIをうけることになり、都度脱装着が面倒くさすぎて、全部外した。救急車で搬送されると(状態によるだろうが)、看護師さんとレントゲン医師が数人がかかりで耳やら他の部位のピアスを外してくれたりするのだが、外されたピアスの返却はなかった。安いボディピアスだったからいいけど。ちょっと記憶が曖昧なのであれだが、ラブレット、自分で外したかどうか……もし外してもらってたとしたら、口のは気持ち悪かったろうな………申し訳ない。

年を重ねると、ちゅうに的な装飾欲というのは薄れるものだと思っていて、いや、現に薄れていってはいて、現在は無に限りなく近くて、いっぱい穴を開けのはほぼ10代の頃で、ガチャガチャ開けていたということはそういう美的感覚が土台にはある。ぐだぐだと回りくどい。舌ピアスは可愛いと思う。しかし、可愛いから開けたいというような欲が薄い。

じゃあなんでそんなイキリちゅうに的な位置に穴あけんのよ、と矛盾でしかないが、ちょっときいて欲しい。イキリではない。

痛覚は思考を止めるのに効くんですよ。

ぐるぐるぐるぐるしてたり、そんなん考えてもどうしようもないっつうのわかっていても考えるのを止めれずなんでかわからんがいつの間にか自分の死に様までシュミレーションしだす眠れない夜、いや、最早明け方、思考遮断に痛覚って最適なんすよ。異論は認める。

ぐらんぐらんしている時に、痛ってえ!痛痛痛痛無理無理無理………!!!!ってなると、闇に取り込まれた思考が痛覚に逸れてくれるんですよ。自傷の一種かもしれんが。

夜のぐるぐるした脳を刺激で殴り瞬間的に黙らせる。夜中の思考は生産性がない。一瞬でも黙らせることが出来たら、自身が滅茶苦茶疲弊している自覚が出来るし、自覚が出来たら暖かい飲み物を飲む気にもなれる。思考が休憩する。

別に痛覚でなくてもいいんですけどね。

自分の場合、たまたまいい感じに痛覚がスイッチになったので、痛覚に頼ってるだけだし。


で、舌の穴。


なんかどうしようもないどうしようもないけれどうわーーーーーーって時に、ブチンとニードル刺しまして。

なんで舌かっていうと、腕は自傷っぽくて抵抗あったし、耳は痛さの想像がついてるし、痛みで1週間固形物が食べれないとの噂が本当だとしたらさぞ痛かろう、と。

かなり出血したが(開け方が悪かった)、引くくらい痛みがなかった。吃驚した。

出血の始末に手間取っていたら、暗黒思考はどこかへ行ってくれた。


それにしても、耳より痛くないとは。噂と違う。軟骨に開けたときの方が100倍痛かった。開けて直ぐ飲み物を飲めたし(少し染みる程度)、少し痛い程度で食事も普通にとれ、腫れも3、4日で収まった。

痛みより食べにくさが酷い。あと喋りにくい。滑舌がやばくなった。もう回復したが。口内に常に異物感があるのは不思議でまだ慣れない。


ちょっとギリギリしたとき、口の中のピアスを歯でひっかけグイッと引っ張っている。痛みはないが、引っ張られる違和感で開けた時の出血と少しの痛みが思い出され、気付けになるのか意識を逸らすことが出来るようになった。パブロフの犬状態。よい。

現段階では、開けた時にやってきたような大きな虚無の訪問はまだないので何ともいえないが、リング・ア・ベルが構築出来たのはマジ良い。


おとなになると、そういうものはなくなるとおもっていた時期もありました。

おとなになるために必要な経験や技を習得しないままでいると、不安定さの種類が変わるだけで、安定はしてくれないようです。救いなのかわからんが、鈍くはなれます。

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