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『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎


ショッキングな数字

沖縄がアメリカから返還されて50年の節目となる今年の5月、ニュースで沖縄の話題が取り上げられる中、ラジオで紹介されていたこの本を読んだ。人気観光地としてのイメージとかけ離れた沖縄のさまざまな統計データにショックを受ける。

都道府県別の県民所得では11年連続で全国最下位。賃金は全国の最低水準で貧困率は全国平均の実に2倍。沖縄は日本でも突出した貧困社会である。
優しい沖縄人、癒しの島・・・沖縄に魅せられた多くの人が、その最大の魅力は島の人の穏やかさ、温かさ、だと口を揃える。
またその一方で、沖縄社会における、自殺率、重犯罪、DV、幼児虐待、いじめ、依存症、飲酒、不登校、教員の鬱の問題は、全国でも他の地域を圧倒している。

はじめに P12


マーメー

沖縄大学の教授でもある著者は、若者と関わる中で、数字には表れない沖縄社会のリアルな陰を見て強い危機感を感じている。それは、デキる人、頑張る人が同調圧力によって潰されてしまう社会だという。

沖縄で「マーメー」と呼ばれるのは最大級の侮辱で、子どもたちが勉強に対して、消極的になり、全国最低水準の学力にとどまる主因になっていることを示唆した内容だった。

第2章 人間関係の経済

根本問題は何か?

こうした沖縄社会の裏にある補助金の話が本書で一番印象的だった。米軍の基地を受け入れていることに対する国からの補助金・交付金があるのはよく知られているところだが、酒税においても特別措置があることを知る人は少ないのではないだろうか。

沖縄では生産・販売される酒類について、泡盛は35%、ビール等は20%の酒税減免措置が続いている。このため地元酒造メーカーん商品は安価で求めやすい。

「オリオン買収」は何を意味するのか P30

この制度は、戦争やアメリカ統治によってダメージを受けた沖縄経済が自立していくための5年程度を想定して時限的に設けられたものなのに40年以上経っても延長に延長を繰り返してきた。特例のおかげで利益を出し続けてきた企業のマインドは、頑張りすぎずに、現状維持。それが翌年もまたその翌年も利益を出し続けるための合理的な判断になってきた、という。

まとめ

沖縄は身近でも旅行に行く人や、観光ビジネスで盛り上がっているため話題になることも多い。その影になる社会問題、特に沖縄の若者の問題について、ニュースにはなりにくい部分も含めて情報を得るように努めていきたいと感じた。

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