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No.1 中野良一氏〜AI出張教室のすすめ〜

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 NTSジャーナルのメイントピックス、「研究室訪問インタビュー」第1号は、NTS顧問でもある中野良一さんです。いつもおしゃれでワイシャツ&サスペンダーが印象的な中野さんは現在、私たちの事務所がある北の丸公園の科学技術館(公益財団法人日本科学技術振興財団が運営)に所属し、かつては副館長まで勤め上げられた方です。AI教育スペシャリストとして、当社顧問にご就任いただきました。改めて中野先生のご紹介を兼ねたインタビューを行いましたので、ご覧ください。

――NTS顧問としての中野先生、ただいまのご関心は何でしょうか?

2021年10月いっぱいは科学技術館の運営関係会社であるミュージアムクルーに所属していますが、<かんたんAI教育ラボ>というカンバンで、AI教育スペシャリストと名乗りながら、企業内研修や小中学校での外部講師などとして活動を始めています。(写真の出張AI教室チラシ)学生の頃からコンピュータが大好きで、パンチカードのときからプログラミングに馴染んでいたので、未来のコンピュータとしてのAI(人工知能)にとても関心があり、研究を続けています。今後は自由な時間が増えるので、AIがどこまで進化するのか、好奇心と研究心で溢れる毎日です。

――今日は私たちにAIを教えていただけるとのこと。よろしくお願いします。

 YOLO(You Look Only Once)と言うオープンソースのAIプログラムを日本語版に直し、子どもたちにもわかりやすく理解できるものを持っているので、それを使ってAIについてご説明しましょう。AIの中でもYOLOはリアルタイム・オブジェクト検出アルゴリズムと呼ばれるものです。画像認識で物体を検知して見分ける、わかる、表示するというAIは、現在様々な分野で進化を遂げています。実物のプレゼンテーションでご案内しますね。

★事例は、コンピュータがイヌとネコをどうやって識別する学習をしているかの解説でした。確か2012年グーグル猫として、数万枚のネコの写真を学習させて成功したというニュースが流れたことがありましたね。

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 コンピュータが人間と同じようにイヌとネコを見分けることができるようになったのは、2012年に画像認識の世界大会<ILSVARC>が開催され、「ディープ・ラーニング」(深層学習)という技術が紹介されたからです。ビッグデータとなるたくさんの画像を使って、識別能力を高めることにより、画像認識の精度は確実に高まりました。私は、このディープ・ラーニングという技術を分かりやすくかんたんに、身近な事例で子どもたちにも理解できるようにプログラムを工夫したので、早速やってみましょうか。
 人間と違ってコンピュータは簡単なことしかできません。それは、掛け算、足し算・引き算、そしてグラフの読み取りです。このような機能を使って、画像認識ができるようになるためには、画面で示すようなこんな数式(上記写真)で「重み」を調整してゆくことが必要なんです。ある写真の画像をピクセル単位に分解して、それらの結果が犬と猫に別れます。その時の「重み」の値をたくさん、それこそ数万回も計算してゆきながら、重みの調整を積み重ねてゆくのです。これを<学習>と呼ぶのですが、ビッグデータを使って機械が学習するということです。
 すると、ある写真を写したときに、それがネコである確率とともに瞬時に表示することができるようになります。これが、ディープ・ラーニングの仕組みなんです。
 画像認識技術はいま、たくさんの分野で活用されています。自動運転の車では、歩行者とモノを正確に見分けることができるようになりました。

――これからどんなことを目指しているのですか。

 やっぱりコンピュータが好きなんです。私がワクワクしていることを子どもたちにも、一般の人たちにも分かりやすく、「ワクワクを伝えるために」AI教育スペシャリストとしての活動を広げてゆきたいと考えています。NTSの編集の方々にも、最新のコンピュータ情報を提供するために、顧問業もちゃんとやりますよ!


★<なんて楽しそう。少年のように目が輝いていました>
「ワイングラス」「フリスビー」「シマウマ」をパソコンにつないだカメラで写すと、リアルタイムで瞬時に見分け、その名前と確率を合わせて表示します。ただ、先生のノートパソコンは最大風力でファンがブンブン回るほどの大活躍です。AIは超高性能のコンピュータが必要なんですね。

略歴:
1956年生れ、65歳(Linkedin 詳しいご経歴
 高校時代は数学が好きで、数理を目指すも担任からは「向いてないよ」とショックを受け、まだ珍しかったコンピュータを目指して中央大学理工学部管理工学科入学、パンチカードプログラムの面白さにハマる。
 在学中もFORTRANプログラムでアルバイト。新卒で現在の「科学技術館」(公益財団法人日本科学技術振興財団)に就職。公的博物館のようで、親方日の丸予算は安泰かと思ったが、実態は独立採算性でがっかり。稼ぐために各団体、企業への出向などを経て、<青少年のための科学の祭典>や<国際生物学オリンピック>などのイベントを手掛け、その苦労あって館への貢献は大きく、科学技術館副館長も務める。

<取材日2021/09/22 科学技術館会議室にて>

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私たちのオフィスは北の丸公園にある、科学技術館2階にあります。