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2021年6月の北方領土での軍事演習のまとめ(3.5)

 北方領土所在のロシア軍18師団にひ弱萌えの皆さん、お久しぶりです。(先日アップしたS-300V4配備の前に書き始めた記事なので、お許し下さい)

 今回は、師団の装備とそのスペック及び、これでもかと言う位の不遇が判明した同師団の中核部隊である機関銃・砲兵大隊以外の部隊、つまり砲兵部隊やミサイル部隊が主な内容の記事です。

 「また、どうせポンコツ赤錆び装備だろう」と思うかもしれませんが、ご安心下さい!やっと、18師団の心ばかりのチートっぷりを(もしかしたら、この記事だけかも)紹介することができそうです!

  wikipediaの「第18機関銃・砲兵師団」と各装備の日本語版とロシア語版を一部引用しました。
(日本語版https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC18%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%8A%83%E3%83%BB%E7%A0%B2%E5%85%B5%E5%B8%AB%E5%9B%A3_(%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%99%B8%E8%BB%8D)#/languages
ロシア語版https://ru.m.wikipedia.org/wiki/18-%D1%8F_%D0%BF%D1%83%D0%BB%D0%B5%D0%BC%D1%91%D1%82%D0%BD%D0%BE-%D0%B0%D1%80%D1%82%D0%B8%D0%BB%D0%BB%D0%B5%D1%80%D0%B8%D0%B9%D1%81%D0%BA%D0%B0%D1%8F_%D0%B4%D0%B8%D0%B2%D0%B8%D0%B7%D0%B8%D1%8F)         

以下が今回の内容です。時間がない方は③辺りから読んで下さい。

① 意外に強いぞ18師団の主要装備兵器、装備数、スペック
② 拡大編成された砲兵中隊
③え!ロシア陸軍の一般的な部隊よりも、砲兵部隊が強力?

④連隊砲兵戦力の編制・装備(考察、いや辻褄合わせ?)
⑤千島列島への対艦ミサイル配備についてちょっと


① 意外に強いぞ18師団の主要装備兵器、装備数、スペック

◯122mm自走多連装ロケット砲 BM-21「グラド」×18
 最大射程33~42km、破壊面積14.5ha
(投稿者注:鎌倉辺りから撃って、東京ドーム3つ分の敷地を一気に焼け野原にする能力が有ります。「点」をやっつけるのではなく、「面」をやっつける兵器です)
(https://bg.m.wikipedia.org/wiki/%D0%91%D0%9C-21_%D0%93%D1%80%D0%B0%D0%B4)

152mm自走砲2S5「ギアツィント-S」及び152mmカノン砲2A36 「ギアツィント-B」×36
 照準可能な最大射程28.5km、最大射程33.5km(投稿者注:八王子辺りから東京ドームのマウンドを狙い打ちできる精度です。どんだけ巨人が嫌いなんだよ!)
(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/152-%D0%BC%D0%BC_%D0%BF%D1%83%D1%88%D0%BA%D0%B0_2%D0%9036)

◯高射ミサイル「ブク-M1」×12
 目標発見距離100km以上、目標同時捕捉可能数24、迎撃範囲は距離45km、高度25km。迎撃可能目標の最大速度1200m/s(投稿者注:約3.5マッハ)、F-15戦闘機を最大距離42kmで迎撃可能。(投稿者注:迎撃範囲のイメージは、①頭の中で三保の松原から富士山を見て下さい。②富士山の高さを6倍半にして下さい。③その山頂で航空機が飛んでいるのを想像して下さい。想像できなかったら、今、あなたの隣にある「ブク-M1」が撃墜したのかもしれません)
(https:/ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%91%D1%83%D0%BA-%D0%9C1-2)

◯高射ミサイル「ストレラ-10」×12
 迎撃範囲は距離10km、高度5km。(投稿者注:迎撃範囲のイメージは、①頭の中で東京ディズニーリゾートからスカイツリーを見て下さい。②スカイツリーの高さを8倍にして下さい。③その先っぽで航空機が飛んでいるのを想像して下さい。想像できなかったら、今、ディズニーリゾートのアトラクションの一環として、「ストレラ-10」が撃墜したのかもしれません。
 このミサイルは、防空網の一番外側を担当する「ブク-M1」が射ち漏らした航空機やミサイルの迎撃用です)
(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/9K35)

自走高射機関砲ZSU-23-4「シルカ」×12
 23mm弾を3,400発/分で射撃可能。1,620km/h未満の航空機の迎撃範囲は距離2.5km、高度1.5km(投稿者注:迎撃範囲のイメージは①自宅から30~40分散歩したところに100人の奈良の大仏様が縦に並んで…以下同文)。また、停止・移動位置から距離2km未満の地上あるいは水上目標を破壊可能。(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%A8%D0%B8%D0%BB%D0%BA%D0%B0_(%D0%97%D0%A1%D0%A3)

122mm榴弾砲D-30×18
 最大射程15.4km(標準榴弾)、ロケット補助推進弾(投稿者注:後ろから火を吹いて飛ぶ大砲の弾らしいです)を使用すれば、最大射程21.9km。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/D-30_122mm%E6%A6%B4%E5%BC%BE%E7%A0%B2)

100mm対戦車砲×12
 最大射程2km。(投稿者注:この大砲の射程が短いのは、弾道が放物線を描くのではなく、「一直線に目標の土手っ腹に穴を開ける」ための射撃用だからです。第二次大戦の時にドイツの戦車を待ち伏せしていた対戦車砲の直系の大砲です)
(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/BS-3_100mm%E9%87%8E%E7%A0%B2)

82mm迫撃砲×18

牽引式高射機関砲×8

装軌車両×8

T-80BV戦車×94
125mm砲、射程3.7~4km、最高速度70km/h、航続距離500km、ガスタービンエンジン登載1,100馬力(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%A2-80)

MT-LB×不明

 (投稿者注:スペック不記載の装備は、投稿者が飽きたからと、余り重要じゃないと思ったからです。お許し下さい。
 戦車については、砲兵部隊ではないので後で詳しくやるつもりです。)


② 拡大編成された砲兵中隊

 戦力的に当てにならない「悪夢の機関銃・砲兵大隊」を除く砲兵部隊等の装備数と編制について考えようと思います。

 注意点は、大砲は発射装置単体では射てないと言う事です。
 目標を発見する(何しろ射つ人から目標は見えないので)係、弾薬を運ぶ係、大砲に込める係、大砲の角度や火薬の量を決めて照準する係、「テェー!」と指揮する係、爆音でひっくり返る「お約束の」係等が連動しなければならないので、少し大所帯になります。

 以下、wikipediaロシア語版の「砲兵中隊」の一部引用です。概ね、6門で中隊が編制されているようです。

самоходная артиллерийская батарея (6 152-мм САУ 2С3) — 60 человек;
гаубичная артиллерийская батарея (6 122-мм гаубицах Д-30А) — 60 человек;
реактивная артиллерийская батарея (6 122-мм РСЗО БМ-21) — 60 человек;
зенитно-ракетная артиллерийская батарея в составе мотострелкового полка на БТР (4 ЗСУ-23-4 и 4 ЗРК Стрела-10) — 60 человек;
自走砲兵中隊(152mm自走砲2S3「アカツィヤ」×6)―60名
榴弾砲兵中隊(122mm榴弾砲D-30×6)―60名
多連装ロケット砲兵中隊(自走多連装ロケット砲 BM-21×6)―60名
装甲人員輸送車装備の自動車化狙撃連隊隷下の高射ミサイル砲兵中隊(自走高射機関砲ZSU-23-4×4、高射ミサイル「ストレラ-10」×4)―60名
(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%91%D0%B0%D1%82%D0%B0%D1%80%D0%B5%D1%8F_(%D1%84%D0%BE%D1%80%D0%BC%D0%B8%D1%80%D0%BE%D0%B2%D0%B0%D0%BD%D0%B8%D0%B5)

 そして、同じくwikipediaロシア語版の「砲兵大隊」では、自走砲・榴弾・多連装ロケット砲兵大隊は、3個中隊で1個大隊のようです。

В ВС РФ дивизион как правило включает в себя 3 батареи (12—24 орудия, миномёта, боевые машины РСЗО), взвод управления со средствами связи и разведки[1].
ロシア軍では、通常、砲兵大隊は中隊×3(12~24門の大砲、多連装ロケット発射機等)、通信手段を持つ指揮小隊及び偵察部隊からなる。(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%90%D1%80%D1%82%D0%B8%D0%BB%D0%BB%D0%B5%D1%80%D0%B8%D0%B9%D1%81%D0%BA%D0%B8%D0%B9_%D0%B4%D0%B8%D0%B2%D0%B8%D0%B7%D0%B8%D0%BE%D0%BD)

 また、「高射ミサイル砲兵大隊」も、2~3個中隊で1個大隊のようです。

Состоит из двух-трёх зенитных ракетно-артиллерийских батарей (зраб) со смешанным вооружением либо из зенитно-ракетной батареи (зрб) и зенитной артиллерийской батареи (зенбатр).
 高射ミサイル砲兵大隊は、混成装備の高射ミサイル砲兵中隊×2~3、あるいは高射ミサイル中隊×1+高射砲兵中隊から編成される。(https://ru.m.wikipedia.org/wiki/%D0%94%D0%B8%D0%B2%D0%B8%D0%B7%D0%B8%D0%BE%D0%BD_%D0%9F%D0%92%D0%9E)

 まとめると、
自走砲・榴弾・多連装ロケット砲兵部隊は、
   1個中隊(6門装備)×3=大隊(計18門)

 高射ミサイル砲兵部隊は、
   高射ミサイルと高射砲の混成中隊(自走高射機関砲4門、高射ミサイル4基装備)×2~3=大隊(計8~12門、8~12基)

のようです。

 また、対空ミサイル「ブクM-1」については、前述のwikipediaロシア語版に以下のように記載されており、上記の大砲やミサイルと異なり、中隊単位ではなく、大隊(6基)単位で編制されているようです。

Как боевая единица комплекс представляет собой отдельный зенитно-ракетный дивизион, состоящий из батареи управления — КП, станции обнаружения целей и 3-х огневых батарей (2 СОУ и 1 ПЗУ).
 このように、システム(投稿者注:「ブクM-1」のこと)の戦闘単位は、指揮中隊つまり指揮所×1、目標発見ステーション×1、射撃中隊(自走発射装置×2と発射装填装置×1)×3で独立高射ミサイル大隊となっている。

 ここで思い出してください。18師団は、2つの島(択捉島と国後島)に2つの連隊を配置し、各島で独立的に戦う部隊です。
 例えば122mm多連装ロケット砲兵中隊(6門編制)×3を2つの島に配置するには、無理があります。

 従って、6門編制・人員60名とされている砲兵中隊は、18師団においては拡大され9門編制になっているのが妥当かなと思います。人員数は単純に90名ですかね。
 大砲が1.5倍増えただけと思うでしょうが、単純に、目標数や発射弾数が増え、攻撃力が増すだけでなく、射撃陣地の増加によって多くの方向からの同時射撃や相互の掩護射撃能力も防御力もアップします。

 上記の妥当性を加味して、18師団の砲兵部隊を考えると、
◯152mm自走砲及び152mmカノン砲兵中隊(6門編制)×6=大隊×2―360名

◯122mm榴弾砲兵中隊(9門編制)×2―180名

◯100mm対戦車砲兵中隊(6門編制)×2―120名

◯122mm多連装ロケット砲兵中隊(9門編制)×2―180名

◯高射ミサイル砲兵中隊(自走高射機関砲、高射ミサイル各6門編制)×2―180名

◯「ブクM-1」高射ミサイル大隊(6基編制)×2―不明

となります。
 

③え!ロシア陸軍の一般的な部隊よりも、砲兵部隊が強力?

 では、これ等の部隊を、現在ロシア陸軍の一般的な部隊(戦闘単位)である「自動車化狙撃旅団」隷下の砲兵部隊とミサイル部隊と比較してみます。
 比較対象は、18師団の兄弟部隊(ロシア語では、女性名詞なので姉妹部隊)であるサハリン所在の第39自動車化狙撃旅団です。wikipediaロシア語版では、

◯自走榴弾砲兵大隊×2

◯多連装ロケット砲兵大隊

◯高射ミサイル大隊(S-300V×8装備)

◯高射ミサイル砲兵大隊

と記載されてます。
 んー、似ているような、違っているような?

 似ているところは、39旅団の砲兵大隊が中隊(6門編制)×3を基準にしていれば、計18門で18師団とほぼ同数の装備も有ることです。自走砲兵大隊、多連装ロケット砲兵大隊、高射ミサイル砲兵大隊がそれです。

 違うところは、榴弾砲兵中隊と対戦車砲兵中隊が18師団にしか存在しないことです。
 つまり、
  18師団の砲兵戦力=
        39旅団の砲兵戦力+榴弾砲兵中隊+対戦車砲兵中隊

 と言う事です。どーです❗️やればできる子なんです❗️
 
 「そりゃあ、師団の方が旅団より大きい部隊(旅団は、1コ連隊規模のミニ師団)だから」と言う声も聞こえない訳でもありませんが、何故北方領土にわざわざ一般的ではない師団規模の部隊を配置したのでしょうか?

 戦術的には、砲の量や種類が多ければ、キルゾーンや火力ポケット(ざっくり言うと、予め各大砲の弾着を集中させる場所や射距離を決めておく運用方法)を強化できます。
 つまり、各大砲の照準はとっくに終わっており、後は、そこに相手が来たら(当然、来そうな所に設定しておくのですが)撃つだけと言うわけです。
 待ち伏せっぽいですね。着上陸のドタバタ時に、あっちこっちからタコ殴りで集中砲火されたら、どんな相手でも混乱しかねません。この辺が、島嶼防御をミッションとする18師団の砲兵部隊強化の理由だと思います。

 ここまでの情報と考察で、最小限明らかになったことを確認しておきます。
 18師団はロシア陸軍の一般的な部隊である自動車化狙撃旅団よりも、砲兵部隊が強力である可能性及び妥当性は大きいと言う事です。ついにやったぞ~!

 但し、榴弾砲兵中隊と対戦車砲兵中隊の装備とされている122mm榴弾砲や100mm対戦車砲はかなり旧式なので、現在運用されていない可能性もあります。
 一方、最近、ウクライナ東部やクリミアでも使用実績があるので、運用されている可能性もあります。
 
 ここは、盛り上がりついでに運用中と仮置きさせて下さい。今後の報道で、出てこなかったら考えましょう。

④連隊砲兵戦力の編制・装備(考察、いや辻褄合わせ?)

 最後に、今回装備と装備数から考察した18師団の砲兵やミサイル部隊の編制と、前回紹介したwikipediaの「第18機関銃・砲兵師団」に記述されている連隊の砲兵やミサイル部隊の編制とを組み合わせてまとめてみます。

  師団は、択捉島の第49連隊、国後島の第46連隊からなっています。
 前述した師団の砲兵やミサイル部隊を隷下の2つの連隊に「半分コ」して、連隊の編制に当てはめると、以下のようになります。
 

◯対戦車砲兵大隊
 152mm自走砲及び152mmカノン砲兵中隊(6門)×3+122mm榴弾砲兵中隊(9門)+100mm対戦車砲兵中隊(6門)
※榴弾砲兵中隊と対戦車砲兵中隊の存在は未確認。

◯ロケット砲兵中隊
122mm多連装ロケット砲兵中隊(9門)

◯携帯型対戦車誘導ミサイル中隊
※前に記事にした、今年8月20日のロシア国防省の記事の中で「MT-LB登載型対戦車誘導ミサイル班」が出現したけれど、現在は未確認。

◯高射ミサイル砲兵大隊
高射ミサイル砲兵中隊(自走高射機関砲、「ストレラ-10」各6門)
※ストレラ-10がトルM2に入れ換わったのかは未確認。

◯高射ミサイル大隊
「ブクM-1」高射ミサイル大隊(6基)
※先日、択捉島に「S-300V4」大隊が新編されたとの報道がありましたが、この部隊と入れ換わったのか、追加されたのかは未確認。

 
 まあ、未確認だらけですね。けど、これが今のところ最も妥当性のある択捉島と国後島所在の砲兵部隊等の編制と装備になります。
 叩き台ですね。今後、色んな報道で少しずつ明らかになると思います。

 
 次回は、あの戦車部隊の編制と装備について考えたいと思いますが、その前にいくつか、面白そうな翻訳記事を出すつもりです。

⑤千島列島への対艦ミサイル配備についてちょっと

  最近の千島列島への対艦ミサイル「バスチオン」配備の件は、18師団隷下部隊ではないので、そっとしておきます。
 なぜなら、あの報道をロシア側から見れば、「あの島は完全にロシア領なのに、なぜ旧日本名の松輪島って呼ぶ?ロシアの内海であるオホーツク海の真ん中で海上防御力を強化するのが、なぜ日本の脅威?」となるからです。

「おやおや?まさか日本はここも欲しいのかな?着上陸するのかな?じゃあ北方領土ももっと強化しなきゃ」と挙げ足取られます。

 日本が西側諸国の一員として、緊張するウクライナ正面に際し背後からの牽制をアピールしたいのは解ります。
 けど、平和的な北方領土返還、あるいはハイブリット戦的な支配を望むのなら(大規模な軍事的奪還なら話は違いますが)、過度なアピールはしない方が良いような気がします。

 今回の報道は、日本のマスコミを使って政府に何か勇ましい事を言わせたいと願うロシアの情報工作だと思います。

 日本政府も、今のところ何にもコメントしてないから同じような考えなのかもしれません。



 
  


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