【99%の黒とは】ゲーム・eスポーツ界隈のチート騒動について #VALORANT #沖縄氏


第1 はじめに

 ゲーミングチーム「NOEZ FOXX」に所属していたストリーマー「沖縄に行くために」氏が、遅くとも7月頃、チート使用の疑惑によりアカウント停止の措置を受けました。これを受けて同チームを擁するDJふぉい氏が、7月15日の配信にて、沖縄氏の疑惑が99%黒であり永久BANであること、本人はチートの使用を否定している旨を明らかにしました。


第2 本人の素行と最終的な結末

 沖縄氏は、過去のゲームタイトルAPEX、レインボーシックスシージ等でもチートを使用していた事実があります。多くのユーザーからは、今回の件も疑惑は事実であろうという大きな声が上がっていましたが、本人を慕うファンからは「100%黒と言えないなら白もあり得るじゃないか」等という声も上がり大きな話題になっていました。
 最終的に、運営側は沖縄氏のアカウントについてハッキング等の痕跡があることを理由にBAN解除の措置をしましたが(7月21日付発表)、チームはこれまでの経緯を改めて検討した結果、沖縄氏と契約解除をするに至りました(7月29日付発表)。
日付の間隔から分かるとおり、7月中旬から下旬にかけての短期間において、結論が二転三転するような大騒動があったことが分かります。

 沖縄氏の契約解除に終わった案件ですが、チート騒動の大事なところが有耶無耶に終わっているように思いましたので、以下、気になったことをまとめたいと思います。

第3 パブリッシャー(Riot)側の対応について

1 基本的に問題はない

 運営に媚びるわけではないですが、外部から見る限り、基本的には概ね妥当(やむを得ない)対応だったんだと思います。
 ハッキングの痕跡が後から判明したとは言え、チートを疑うに足りる十分な情報があったわけですから、規約に則りBAN等の措置を講じることは当然です。
 オフライン検証という声もありましたが、すべてのチートアカウントについてそのような検証を行うのはキリがありませんし、一人だけを特別扱いして弁明の機会を与えるというのは妥当でありません。そもそもユーザーは所定の利用規約に同意してゲームをプレイしています。運営の裁量に基づきチート利用を認めしかるべき措置を講じることは原則相当と考えられるべきです。

2 他に考えられた対応

 唯一、意見を述べるとしたら、BANはするにしても「永久」はやり過ぎだった、と言う結果論はあります。
 一般論ですが、本件のようにスキンなどの課金ができるアカウントについて、アカウントのBANは利用者の財産権を大きく侵害し、訴訟問題になり得ます(利用規約について述べると、アカウント停止は、消費者のゲームをプレイする権利・利益を著しく害するものであり、場合によっては消費者契約法10条が問題になり得ます)。このことは、複数の文献でも記載があります。

本件でも永久のBANは解除されましたが、最初から無期限とするわけではなく、数ヶ月や1年間などの、一定期間にしておく等の措置もあり得たのではないでしょうか。

実際にはチート行為を行っていないにもかかわらず、アカウントの停止・剥奪を行った場合は、損害賠償の対象になることがあるため、慎重に対応することが必要です。

eスポーツ問題研究会「eスポーツの法律問題Q&A」

「量刑不当」というのはあり得る。・・・オンラインゲームは常時多数のプレイヤーと契約して月額やアイテム課金により収入を得る事業である以上、ゲームの面白さを大きく損ない、プレイヤーが減ることにより運営に大きな損害を与える場合は、アカウント停止も信義誠実の原則に反しないと判断されよう。逆に、それほど大きな損害を与えていないのに大きな不利益(アカウント永久停止)を与えた場合、信義誠実の原則に反し、アカウント(永久)停止が無効となり得ると考えられる。

エンターテイメントローヤーズネットワーク「エンターテインメント法務Q&A」

第4 チーム側の対応について

1 なぜ中途半端なタイミングで手続を公開したのか

 DJふぉいさんの人柄やお考えそのものを否定するつもりは一切ありませんが、本件は、途中の「99%黒」云々の流れを公表したことが原因で大きな騒動になってしまったんじゃないかと思います。

ここで、沖縄氏は黒なのか?白なのか?そもそもチート利用の是非とは?という大きなテーマで議論が紛糾し、憶測やデマも飛び交ったと思います。

 前述の通り、騒動が二転三転したことにより、沖縄氏がチート利用をしたと表現したユーザーが謝罪をする事態まで発展しました。
 不適切な表現は撤回されるべきかもしれませんが、本件は、本人の所属しているチームが公表した情報が火種となって騒動にまで発展した事案です。名誉毀損の文脈で言えば、チートを利用していただろうと信じるにつき相当な理由があったと言え、損害賠償責任が生じ得るような謝罪問題ではないともいえるでしょう。

2 そもそも沖縄氏の加入は当初から抱えていた法的リスクではないか

 また、これはそもそも論ですが、なぜ彼のような元チーターを加入させたのか、という問題提起は当然出てきます。
 ゲーム界隈においてチートは、決してしてはならない御法度の一つです。チーターがゲーム環境を壊すことで、新規ユーザーがゲームから遠のいてしまう、現在のユーザーが嫌気を指してゲームから離れてしまう、という弊害が生じます。これは結局、課金をしないため運営にとって大きな財産上の損失となるわけで、eスポーツという分野においてチーターを受け入れることはよほどの事情がなければ許されることはないでしょう。

 当初、彼が加入をした際にも「チーターを入れて良いのか」という意見はありましたが、その点はあまり重要視されていませんでした。今回のように相同に発展してから対応に追われるというのは、法的目線から見て非常に残念なところではありますし、今後の教訓にしていただきたいと思います。


第4 スポンサーについて

1 スポンサーも巻き込まれる騒動に

 最近はゲーム業界もキャンセルカルチャーや炎上リスクが盛んになっており、チームのスポンサーも対応に追われる騒動に発展しました。

2 そもそもなぜスポンサーしたのか?

 これもチームに対して書いたことと類似しますが、やはりこういうチーターがいるチームにスポンサーをすることがどういう意味を持つか、今一度慎重に考えていく必要があると思います。利潤追求は大事ですので知名度のある方に宣伝をお願いするのは必要です。しかし、その方が暴言を吐いたりチートを利用したりするような人物の場合、短期的な売上げ増加には貢献しても、長期的に見た場合のマイナスイメージ、悪影響は避けられないと思います。
 もちろん、経営方針としてこういうチーム・メンバーでも応援しますということで意見を貫き通すのであれば、経営判断の一つですから、大いに尊重されるべきです。しかし、今回の対応はやはり世論や炎上に振り回されて意見をコロコロ変えているような印象を拭うことができません。
 今後の業界の「健全な」発展に向けて、引き続き事業を続けていただきたいと思います。

第5 補足

 沖縄氏は、本件騒動を受けて以降、過去にチートを使ったことはない(ネタだ)というような話をしていたことがあるようです

本人が否定するとなるとその表現は気をつけなければいけませんが、色々TLを見てると、過去に本人自らがチート利用を認めていた投稿があったようなので、そのウェブアーカイブも参考までに載せておきます。




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