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いまさら聞けない、SDGsの本質と企業経営の関係性とは?

「NIKKEISHA STARTUP TABLE」では、「挑戦」と「変化」を目指す企業の「1→100」のために、成長期に直面するさまざまな悩みや課題に応えるべく、“社会との対話“の機会を提供しています。

最近聞かない日がないほどに世の中へ浸透し、ビジネス界隈でも多く取り上げられている「SDGs」。社会全体で盛り上がりを見せている一方で、後付けや表面的なものなど、事業への寄与が不明瞭なものも見受けられるようになり、取り組みそのものが本質的であるかどうかが問われるようになっています。

企業がSDGsに取り組むにあたり、どのようなことに気をつければ良いのか。青年版ダボス会議「One Young World」の日本代表で、WORLD ROAD株式会社の共同代表である平原依文氏にお話しいただいた講座から、ポイントを少しだけご紹介します。

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SDGsの達成を左右するG20と日本が取り組むべきタスクとは?

G20は、G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、欧州連合)に、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド。インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコを加えた国際会議。

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この20カ国が、実は世界の人口の3分の2を占め、世界の国内総生産数85%を占めている。貿易で言うと75%、CO2排出量は80%。「日本でもCO2をもっともっと削減しましょうというのは、こうした状況が大きな要因となっているのです」と平原氏は語る。

最近発表された国別のSDGsランキングでは、日本は19位。前年17位から2ランクダウンとなっている。

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その要因は、「12番:作る責任と使う責任」が「深刻な課題にある」と評価されたことにある。日本は世界でも電化製品で有名な国でもあるため、この「作る責任と使う責任」の項目は特に重視されている。製品を作るのはいいけれども責任ある作り方をしているのか、使う側も本当に責任ある使い方をしているのか、ここが今大きな目標課題として課せられているのだ。

なぜ企業はSDGsに取り組む必要があるのか?

そもそもなぜ急に、企業がサステナビリティ推進室の設置やサスナビリティ宣言などを掲げるようになったのか。

歴史的な背景から説明すると、実はSDGsの前身として、MDGs(ミレニアム開発目標)というものが2000年から2015年まで存在していた。

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ここで着目すべきは「主体」と「対象」、そして「解決する課題」。MDGsの主体は国連・政府で、対象も主に発展途上国。解決する課題も社会課題となっていた。しかし、2015年になっても目標が全く解決されていないと国連の中でも問題視され、企業と個人へのコミットが足りないことがその原因として挙げられた。MDGsでは発展途上国以外は明記されていなかったことから、国連はすべての国・セクターの取り組みを盛り上げるため、新たな目標としてSDGsを策定することとなった。

SDGsでは、主体は国連・政府からすべての国・すべてのセクターが対象となり、 企業はもちろん、自治体やNPO団体、そして個人も取り組むべきものとなった。また、MDGsでは社会課題を解決すれば目的・目標達成だったのに対して、SDGsは経済側面を基盤の1つに定め、経済と社会課題の解決の2つを両立させなければいけなくなった。

つまり、MDGsからSDGsへ大きく変わったのは、企業がプレイヤーとして参加したことである。日本でも最初に経団連が、もっとSDGsにコミットしなければいけないと表明。その後さまざまな企業がサステナビリティ方針を出されたのは、この歴史的な決定が大きく関わっている。

SDGsとESG、サステナビリティ、エコとの違いとは?

世の中には、「SDGs」と似た言葉が多く存在する。代表的なものでは「ESG」「サステナビリティ」「エコ」など。定義がわかりにくいため、それらの違いについて以下共有する。

1.「サステナビリティ」

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上図は国連から抜粋したもの。意訳すると「企業活動に影響を与える社会・経済・環境に関わるポリシー」とされている。つまり、サステナビリティは“方針”である。

2.「SDGs」

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社会・経済・環境のバランスを成立させるための“具体的な目標”がSDGs。 1番から17番目標があることは有名だが、実は169のさらなる詳細な指標があり、それらには具体的な数値も示されているため、企業における新たな“KPI”としても捉えられる。

3.「ESG」

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「ESG」は「環境」「社会」「ガバナンス」の略。企業や国がサステナビリティ分野において、いかに前進しているのかがわかる“評価項目”である。
企業はこれまで、第三者から株価で評価されていた。そこに「ESG」が評価項目として加わったと捉えると分かり易い。「ESG」が評価項目に加わった結果、サステナビリティ方針を出すことももちろん必要だが、その前にパーパスを明確化することがポイントとなっている。なぜなら、自社が何のために存在しているのか?にまず立ち返り、存在意義を確認することで、どういった方針が自社として適切かつ親和性があるのか、継続性があるのかを考えることができるためだ。

SDGsでは、地球への約束として本質的に取り組むことが重要である。企業のブランド戦略があり、その下にSDGsの目標が加わっていく形になっていくのが理想だ。全体戦略がしっかりと定義付けられている企業は、外部の機関から見てESGが優れた企業として評価される。今までは株価を決める要素として、企業は利益を中心に見ていたが、今や社会性やガバナンスなど複数の要素が株価に影響する時代である。企業は、新たな見られ方や評価の仕方に直面しており、今まさに対応が必要となっているのだ。

講座で取り上げきれなかったご質問へもご回答いただきました。

ISOでSDGsの国際標準化が検討されていると聴いています。SDGsに関する世界共通の評価基準が作られ、第三者機関によって認証されることについて、どのように考えますか。
→ SDGsの「当たり前化」を実現する上で、非常に重要なステップだと思います。SDGsの1番の目的である「誰一人取り残さない社会」を実現するためにも、企業の活動が自国だけではなく、他国への影響を考え、仕組み化する必要があります。そのために世界共通の評価基準を設けることは正しい判断だと私は思います。

 個人商店のレベルで企業向けコンサルをしています。そんな事業体でもSDGsへの対応をしないと、またそれを対外的に訴求できないと、業務受注できない状況になりますか。(グリーン調達のようなことをイメージしています)スタートアップがこの分野でマネタイズする為のハードル、その打開策は何だと思われますか。
→ SDGsをコストとしてではなく、投資として捉えることが、まず意識レベルで必要です。SDGsのためにではなく、そもそも自社事業はなんのために存在するのか。事業を進めていく上で、どんな社会課題の解決につながっていくのか。そのために、今「変えられるもの」と「変えられない」ものとはなんなのか。今、変えられなくても、中長期的に見て自社と取引先との事業にインパクトが大きそうなことはなんなのか。ここを整理し、できることから始めてみるのはいかがでしょうか。


SDGsを地で体現する企業様こそSDGsのwordingを出すことをためらいがちです。安易SDGsウォッシュと見られないようにする工夫・意識すべきことはありますでしょうか。
→ これまでの活動をただ並べて「SDGsです!」と出すのではなく、SDGsを会社の戦略として意識した上で、今後どうなっていきたいのか。具体的に何に対してコミットするのか。企業戦略と数字を出すといいと思います。


海外事例のご紹介有難う御座います。逆に日本発で海外でインパクトを持ち得る取組み事例で注目されている企業・事例などありますか。
→ 日本だと企業より、三方よしの概念が海外に知れ渡っております。


食品を選ぶ時にSDGを意識している「SDGsコンシューマ」は現状11.8%、という調査結果を目にしました。消費者が商品購入の際に「価格」ではなく「SDGs」を理由のトップに考えるようになるためには、何が必要だと思いますか。
→ 自分の消費が何の貢献に繋がっているのか、ブランドストーリーと商品そのものから消費者にわかるように伝えることが大事です。例えば、化粧品ブランドのshiroの商品をネットで買うと、各商品を買うことによってどのくらいのCO2の削減に貢献するのか明記されています。その結果、自分の「ワンクリック」の需要性を消費者が意識するようになり、自然と購買行動も「消費」ではなく「未来への投票」にかわります。


病院勤務です。病院などで活発にSDGsの取り組みに有名、成功しているロールモデルの病院はご存じですか。
→ 病院発ですと、佐藤病院の事例が印象的で、ジャパンSDGsアワードの「SDGsパートナーシップ賞」も受賞しております。
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00003/042000097/
それ以外ですと、例えば川崎フロンターレと病院との事例として、ブルーサンタという活動もあります。
https://www.frontale.co.jp/diary/2021/1225.html
スタートアップだと、病院の働き方改革(8番:働きがいも経済成長も)を事業として推進しているUbieという企業もあります。
https://intro.dr-ubie.com/

生産業がメインのお話だったと思いますが、エンターテイメント業では何ができるのかいつも考えています。PRはできてもそれ以外は何ができると思われますか。
→ エンターテイメント業だと、主に2つの課題に取り組めると思います。
① お弁当や1回使い捨て備品の削減
 楽屋のお弁当から出るフードロス(本当にそんなに量が必要なのか)、ペットボトルではなくマイボトルの推奨、撮影・舞台現場で使用する1回使い切りの備品などの寄付やアップサイクルなど。
② 作品のジェンダー比率の見直し
 アカデミー賞などでジェンダーや多様性の比率が指摘され見直されているように、日本のエンターテイメント業界もジェンダー比率を変える必要があると考えます。出演者のみならず、作品や番組制作スタッフのジェンダーバランスも50:50かどうかなど。多様性があってこそ、フラットで多様性あるエンターテイメントが世に残ると信じています。

小学校で英語を教えています。SDGsを子ども達に英語で絡めてできたらと思います。何か良いヒントがございましたら、お伝え下さい。
→ 英語 x SDGsでこんな企画をしております。ご参考までに!
https://www.aws-s.com/topics/detail?id=top3246
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000053875.html



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