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起死回生。⑨



2022年6月25日土曜日(術後1日目)
朝の回診が始まるアナウンスが大部屋のスピーカーから聞こえてきた。
耳はちゃんと聞こえている模様。
その間にも点滴の交換などで看護婦さんが来たり、お部屋の掃除の方が来たりと私は寝ながらにしてもなにかしら病院内は忙しく動いている。
実際、痛みはあるし些細な生理現象(くしゃみや大きめの呼吸など)で「イテテテ」となることはたくさんあるのだけど、ベットで寝ながら過ごす分には我慢出来ない程でもないし、まだ麻酔が残ってもいるのだろう。

しばらくすると主治医他の先生と看護婦さん4人に囲まれて腹帯をはがしお腹の傷の確認をする。特に際立った変化(傷からの出血とかね)はナシ。

まだ手術着のままだったので点滴交換のタイミングで病衣に着替えさせてもらうことと、昼食を始めるのに「ガスは出たか」確認と(この時点で結構出てた)、午後からは歩きましょうとのことでカテーテル(尿管)も抜きに来ます、と改めて伝えられこのあとすぐ別の看護婦さんが来てカテーテルを抜いてくれた。
「点滴のせいかよく尿取れてますね。」
…いや、覚えてないけど、うがいがてら水飲んじゃってたせいかしら…
そんなことまでは申し伝えられていないのか?はたまた知ってて…
いやいや、わざわざ自分からバラすこともなかろう…。
「どうしますか?今トイレ行ってみますか?」と言われ
早期離床模範患者を目指す私は格好の元気アピールの場だと判断し行くことにした。

ベットの昇降を作動させ上半身を起こしてみる。
…まったく痛くないといえばウソだけど思ってたほど痛いわけでもない。
お尻で体を回転させて術後初めて地に足をつける。
この時に気が付いたのだけどいつの間にか足元には診察時に履いてきた靴ではなくスリッパが用意されていた。

「あ、ご主人が荷物を荷物を持ってきてくださってたようですよ」

…さすが…計5回目の入院ともなると準備が周到になされている…
テレビ棚の上には歯磨きやコップ、ティッシュ、鏡、毛抜き(なんで?)と並べられていたのだ。
ほか、大きな紙袋にはタオルも見えてますます申し訳ない気分になった。

やっぱ早く元気にならないと…。

足元のスリッパを看護婦さんが手を伸ばす前に足ですくい上げ履く。

「わぁ、すごい!昨日手術なのにそんなに動けるんですか?」
看護婦さんがとてもきれいな笑顔で褒め褒めしてくれたが、
そうしてやる気勇気をを湧かせてくれることも知ってるよ。
はい、大丈夫大丈夫、自分で行けますトイレ。
ホントに今までの術後より痛み少なく元気な感覚だった。
あれ、もしかして今回の手術でバージョンアップしたとか?

立ち上がり歩き出しても痛みはあれど立ち止まるほどの痛みでもない。

背中から肩に沿って胸元には硬膜外麻酔のタンクが入った巾着を首に掛け、点滴の機械のコンセントを抜き点滴台を支えにトイレまで…
なるほど、そうだった。
この硬膜外麻酔が効いてるから、この程度の痛みで済んでいるだった!
ドアを閉める前に尿量を測るよう言われ、無事に用も足せた。

子宮、卵巣と全て失くしてしまって、この先どうなるのかの不安しかなかったのが正直なところだったけど…
今回のメンテナンスにより大幅なリニューアルがなされたようでお昼の流動食もグビグビと飲み干し、便も出た。
午後からは点滴台をお供に院内を歩き回る。
1周約100歩をこの日は5周した。

入院って上げ全据え膳、「ゆっくり休む機会だよ」なんて言ってもらえたりすることは大変有難いことではあるし、
誰かに会いたいだとか家族が心配だとかあまりそういうのは思わない方ではあるのだけど「早く帰りたい」とは思うもの。


また生きて戻ってきたんだ、頑張ろう。

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