見出し画像

現役世代で「ステージ4」の肺がん患者になってみたら、解脱しないと辛くなる(患者が存在している”いま”の環境1)

ステ4患者が「いる」環境:キョリ感

がん告知を受けた日を分岐点として、新たな人生の路を歩むこととなった。人生を「自分自身とその時を同じくして生きている人々とそこから生まれている環境」と定義した場合、がん告知による分岐点で変化のトリガーとなったのは、間違いなくステ4患者になったことである。

<がん告知と余命宣告を転機とした『キョリ感』の変化>

画像1

自分がステ4患者だと認識する直前までに歩んできた人生における、本人以外(外的環境)との精神的距離は、2つの視点で考えることが必要である。

1つ目は、自分自身がステ4患者だと認識してしまった時に生じる、本人以外からの距離である。がんサバイバーと称される人々において、がん告知を受けた後に「自分はがんなんだ」、「死が現実のものとなったのだ」、「いやだ、生きたい」といった感情が出てきた人も少なくはないだろう。実は、そういった感情が出てきた時に、自ら周囲の環境から精神的距離を取ってしまっているのである。これまで蓄積されてきた「過去の情報」による精神的距離とステ4患者と認識した後に起こる「未知で予測不可能」な不安から生じる精神的距離によって、ステ4患者が周囲の環境に対して感じる精神的距離は想像以上に負荷となってしまっている。

上に示した「がん告知と余命宣告を転機とした『キョリ感』」は、ステ4患者と周囲の本人以外の間に存在している感情を表現している。
「n1」は、過去の情報に基づいて従来から存在している「感情(精神)的キョリ」を表している。この「n1」は、本人以外と同じ環境に身を置いている時に、感じている自己と非自己のバランスを表現しているとも考えることができる。
「C」は、がん告知によってステ4患者本人が感じてしまった、本人が感じる「これまで」との違い(GAP)を示している。ここで感じる違いとは、「これまでの人生とは異なる、人生を歩まなくてはならなくなってしまった」という剥奪説に起因している感情と考えることができる。

2つ目は、ステ4患者だという事実を認識した”これまでと変わらないポジショニング”の本人以外が感じている、ステ4患者との新たな「キョリ感」である。「n1+C」は、この新たに生じた「キョリ感」を表しており、本人以外の置かれるポジションは、ステ4患者が置かれている精神的立場とは、完全に独立した状況にある。したがって、「n1+C」の「キョリ感」は、本人以外の人生に劇的な変化が生じない限り変わるということはない。つまり、本人以外がステ4患者を見る時の精神的距離は変わらないということになる。
本人は、本人以外をがん告知前と同じ「キョリ感」、つまり「n2」で見ることになるが、実は本人以外という同じ存在を見ているにも関わらず、その「キョリ感」は以前のそれとは異なっているのである。「n1=n2」ではあるが、「n1+C≠n1+n2」なのである。「C-n2」で生じている「Z」は何なのであろうか。

物理的な距離は、ステ4患者になる前も後も変化はない。しかしながら、確実に「キョリ感」には「Z」が存在しており、バランスがとれているとは言い難い状況が存在してしまっている。

「Z」が存在してしまったステ4患者を、本人以外はどのように認識するのであろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?