ダンス・ウィズ・ミー

「はい、これがラストね」

 タブレットの液晶から視線を上げると、カウンターの上に置かれた青い角皿に焼き鳥が横たわっている。食う前から分かりきって美味い。

手に取ってひとかけらを歯でこそぎ落とすと、ふわりと湯気が上がった。

表面の焼き目、歯触り、塩気、肉汁、美味い要素はいつも完璧に揃っている。

レモンサワーが進むのも、予言されたかのよう。

「相変わらず、ええ仕事してんな」

「お前、もっと良く噛んで食えよ。ホンマに太る才能あるな」

  失笑を交えながら口の中を焼いた痛みを誤魔化すようにレモンサワーを飲み干した。

「とりあえず、今日はチェックで。あれから誰か来たん?」

「ちょいちょい来とるなぁ。年末やし、こっち帰って来とる奴も多いしな。あいつも柔術まだ続いとんの?」

「うん、仕事もパパもしながら頑張っとるで」

 同級生同士、普段通りの会話をしながら会計のやりとりが始まる。

「そういえばお前、年末年始とか入れる?」

 俺の支払いをカウンターの上で受け取りながら、店主が思い出したような声色で尋ねる。

「年始の夜は洗い物くらいなら入れるよ」

「忙しくなったらバイト頼むわ。そろそろお前も、レシピ覚えたり何かアイデア持ってこいよ」

「プロの前じゃ恐縮やけど、何か思いついたら持ってくるわ・・・こないだの肝のバルサミコ焼きは大不評やったけどな」

「あー、あれは無理やったわ」

 笑い合いながらリュックにタブレットを仕舞い、帰り支度を始める。

夜10時に客は俺だけ。年の瀬も迫る日曜日の夜半は、いつもの喧騒を思えば静かだ。

「ま、こんな日も必要やわ、俺も休憩したいしな」

 店主が伸びをしながら一人言つように呟いてから手巻き煙草を巻き始めるのを見て、俺も電子煙草に葉を詰めて、スイッチを入れた。

「帰ってまた本業か?」

 煙草に火を着けて一息吐いてから、男が俺に問う。俺も煙を吐き出してから深く頷いた。

「自由業やから、やってないとニート以下やでな。最近、全然アイデア出てこんけどな」

「作品作るのも大事やけど、インスタとかも頑張れよ〜。セールスも自由業の要やぞ」

 俺の口から、ホンマやな、と自分に言い聞かせるような返事が煙と一緒に宙に浮かんで、もう一つの紫煙の塊と混ざり合う。

「ええ生活やけどな、地元に帰ってきて、友達と会いながらやりたい事出来るって」

 どちらからともなく、空に言葉と煙を浮かべながら俯き加減にニヤリとする。

ふとインスタグラムを眺めていると、海の向こうの気になるあの子が縄に縛られて吊られ、畳に映る自分の影に向かい合っているのをみた時に、俺の時が割れる音が響きそうなほど固まった。

あの子は苦痛や羞恥に耐えている気配があったが、表情そのものは禅を組んでいるように穏やかで、畳に映る影との距離感は、瞑想と呼んで差し支えない豊穣な自己対話が行われている気配すらある。

少なくとも、その姿を見た時の俺とは違う階層の世界にいるような顔だった。

嫉妬を覚えるには充分すぎるほどだが、覚えた感情はそれだけではない。

胸に溢れるこの複雑で繊細な気持ちを、何と呼ぶ?

そして、どう取り扱う?


「おい、何かあったか?」

「え?ああ、いや・・・ほんじゃ、行くわ。またバイト要ったら言うてよ」

「おう、頼むわ」

 椅子にかけたショットのライダースを羽織って、再度うす、と手を挙げあい、店の外に出た。

会社勤め最後のボーナスで買ったこの革ジャンが、買った時より少し大きく感じるものの、一年経とうとする最近になってようやく体に馴染んで来た。


商店街のメインストリートを逸れた小道の間を、ささやかな雪の混じった冷たい風が走り抜けていく。

ポケットに入ったブルートゥースイヤホンを片方だけ耳に挿して、スマホのディスプレイを撫でて再生ボタンを押すと、当たりの強いアコースティックギターのメロディが鳴り始める。

「Yeah!12から書いてたこの商売人、駅前で売ってたCD-R・・・」

 太い掛け声と共にキックの強いベースとビートが鳴り出し、隣の県のリリシストがラッパーとしての生活を綴った詩を吐き出す。

俺より一つだけ年上のはずなのに、彼は自分の音楽だけで家族を食わせている。

そして、そうなる前からずっと多くの人の心を救っている。俺もその一人だった。

どれだけメロディや詩が悲哀に満ちていても、太く硬く鳴っていればハードコアだ。

俺は力強さをどんな音と言葉にも求めている。メロディやテクニックなんてそいつの表現に必要なだけで良い。

アプリでイヤホンの設定をヒアスルーにして、革ジャンの中に着込んだパーカーのフードを被ると、自分でもよくわからないハンドサインをしながら小道からメインストリートへと歩み出した。


空を見上げると、今日はそっぽを向くような半月が遠くに見える。

淑やかにも物憂げにも見えるその横顔は、いつも誰かを思い出させる。
会いに行きたい彼女たちは、今や誰もが天体のような遠くにいる。

クリスマスが過ぎた真夜中の寂れた商店街は年末の砕けた賑わいが少し漂い初めていて、数組の酔っ払いが騒ぎながら歩いていたり、店の前で話し込んでいる。

たまに一触即発もあるが、今日はそこまでの盛り上がりではなかった。

ハリボーのようにコシがある最高のうどん屋や、気の利いた和食屋があるこの街も、今じゃすっかり夜の店が主力になっていて、こんな真夜中には暖かい日光がある時間帯の枯れた穏やかさとは少し違う、静かな緊張感が漂っている。UKドリルの硬いビートがよく響くシチュエーションだ。

田舎のゴーストタウンでも、国道を挟んだ向かい側の商社や金融のビル群があるからか、都会とそう変わらない旋風が時々通り過ぎて行く。今日はまだ優しいが、それでも頬を撫でて行く風は切り傷が出来そうなほど鋭い。雪が溶けた砥石のように風に纏わりつき、切れ味が一層増している。

チェリオの自販機を通り過ぎようとすると、その角に収まる座り込んでいた影が顔を上げて、獲物を見つけたように小走りで駆け寄る。

冷たい風に長い髪が靡いていた。

「お兄さん、マッサージ行かない?」

流暢という言葉がぴったりの、どこかネイティブとは違和感がある綺麗で力強い日本語が背後から俺を掠めて、後ろからピッタリと付き添うように足速に駆け寄る。

チャイナエステがどうこうじゃなく、あまり他人と話したい気分ではなかったので、イヤホンのせいで気付かないフリをして通り過ぎようとした。

「ねえ、お願い。気持ちイイこと、してあげるよ?」

安い演技で聞くようなつまらないセリフを囁きながら、レザーに通した俺の腕に薄いダウンを着た細い掌が絡み付く。

どことなく力強さや目的がはっきりしない抱擁が俺は好きになれない。

まだこれなら男同士、取っ組み合いで本気で手首を握られる方がいっそ気分が良かった。

緩く飲んだ酒の抜け際だからだろうか、髪の毛を引っ掴んでシャッターに思いっきりブン投げて、こめかみを踵で何度も何度も踏みつけてやりたい衝動に駆られたが、この女に対する憎悪から来る物ではなかった。

重々わかっているよ、仕事なんだろ。

「ごめん、これから俺も仕事なんだわ」

 やんわりと指を抑えるように掌を置き返した。あまりしつこければ、この束ねた指を捻り上げているだろう。もちろん、声と同じように優しくだが。

触覚に触れられるのはどんな生き物でも嫌がる。攻撃と言う拒絶、ほんの少しピリッと刺激を効かせた丁寧なお断りは効果的めんで、直ぐに女の明るい表情が消えた。

踵を返す背中に気まずさを感じて、寒いね、と声をかけたら、うん、とそっけない返事が返って来た。お互いに用がないんだから、これで良いんだと自分に言い聞かせて、再び帰路を進む。

もしかしたら、ただでさえ冷たく乾いた街角に、細い骨が折れる音が響いていたかもしれない。

乾いた音は聞きたくない。


生まれた町に帰って来た俺はここの所、好きなリリックに倣って歩いて帰れるだけの酒を飲んで帰るようにしている。

記憶がブツンと音を立てて無くなるほど酒に溺れるのも、もう一年くらいはご無沙汰だ。

味と自分の心の有り様を確かめるために舐める酒は確かに美味いが、酔い醒めの憂鬱が続くような帰路はどうしても物事の影ばかり目に付く。

寂れた田舎の歓楽街でも時々ざわめく。

それは気がデカくなった野郎共が街角で小競り合いをしたり、路地裏で女同士が何かを奪い合ったり、さっきまで良い感じだった男と女がスナックのカウンターの隅から店中ひっくり返るほどの大騒ぎを起こしたり、きな臭いよく似たファッションのナイスミドルが夕方にゾロゾロ歩いていたりと、ほとんど廃れていると言っても過言ではないこの街も、博物館や水族館に置いてあるような地域の生態系をかき集めた小さな水槽ぐらいには多種多様な生態系と景色がある。

アイツの店にも色んな客が飯を食いに来るし、店から数軒隣にある、バイト終わりにふらっと入っては年甲斐もなく酔い潰れていた、全身にタトゥーの入った真面目な年下の男の子がやっているバーでもまた違う種族がいる。

街の大小に関係なく、歓楽街にあるものはとても分かりやすいビジネスだ。

法に合うも合わざるも関係なく、金と探す気力さえあれば大抵の空虚は満たすことは出来る。

さっき通り過ぎた自販機にも、CBD入りの缶ジュースが売っていた。


夜のこの町にいる奴らは全員、仕事が終わってから何かを求めてここに来ている。

それなのに、いつ見てもみんな寂しそうにしているのは何故だろう?側から見れば、きっと俺だって一緒に違いないのに、夜の街を歩いているとどこか他人事のようにいつもそんな感情が胸に去来して、どうにも馴染めない。

もうずっと、酒でも流せず、煙にも撒けず、キスや誰かの素肌に触れても解けない冷え切った感情を抱き続けているし、みんなどれだけ心ゆくまで遊んでも、夜が明けたらまた虚しそうな顔をしているのは、きっと同じ感情を持っているのだろう。

誰かの横で目を覚ました朝、どうしても酒に酔えない夜、何も変わらないまま流れていった時間が俺を責め立てる。

俺が酔いに任せる事をやめたのは、空虚に向き合おうとする強さなのか、それとも流される事に耐えられない弱さなのか?

答えは何かしらの結果が出るまでは分からないだろう、今のところ、あまり芳しくないのは目に見えているが。


一生懸命踊ったり燥いだりする彼らの姿は、とても美しいと思える時は確かにある。

しかし、そう言う場所には俺の欲しい物も居場所もない。

5年前、今はもう去ったあの子がいた頃に聴いていたJ.コールがPVで見せたどこか虚しそうな顔を、俺は酒の席でずっとしているのかも知れない。

いつかの日曜の夜明け頃、優しい気遣いが出来る男の子が仕切っているメンズバーの喧騒を眺めていてふとそんな感情を覚えた時、パンクはおろか碌なヒップホップも流れないこの町で、もうジャパンの水割りを飲みたくないと言う感情に右脳の後ろが焼け焦げるような痛みが伴ったのをはっきりと覚えている。

十代の時と同じく、またイヤホンを持ち歩くようになったのはそれからだ。

金、酒、煙草、セックス、その他猥雑と悪ふざけを一通り覚えても、十代の頃から何も変わっていない感情のまま、ここまで来ている。きっとみんなそうなのだろう。

俺は喋るたびに誰かに何かを押し付ける気がして、酒を飲むたびに口数が減ったが、その分困っている奴らのために出来ることもずいぶん減ってしまった気がする。

気付きも足掻きも、行き先を自分で見出せなければ何の意味もない。

そう思えば思うほど、誰かと居るのはもどかしい。

消費する事にも、喧騒の間に見える誰かの疲れた顔にもうんざりだ。


それからは、程々に酒を嗜んで、そっと夜に生きる人たちの間をデカい図体ですり抜け、月の上に独りでいるような気分で実存する月を見上げながら家路に着く夜が続く。

リリシズムや凶悪なベースとキックの強いビートに導かれながら歩いている時、俺はまだ足りないまでも、どこにも居場所がない寂しさからいくらか救われているような気がする。勝手に他人と自分の痛みを混ぜ合わせて耐えきれなくなって、自分からパーティを降りたくせに、良い気なもんだ。

何も変わっていない、ずっと同じことの繰り返しだ。

でもしょうがないよな。やらなきゃいけない事がまだあるんだから、きっと。

景気良く見えて寝る暇も削ってバリバリ頑張っているアイツもいれば、順調に見えるが守るもののために頑張っているアイツもいるし、怠惰に見えても何かに怯えながらじっと独りで耐えるアイツもいる。

たまにで良い、今年も、来年でも、いつでも良いから誰も欠ける事なく、何処かでそんな奴らでまた集まりたいな。俺もアイツらも、なんの心置き無く安いヘネシーで気持ち良く酔っ払えるくらい上手く行ってるといいな。

繰り返し言う。自分で這い上がらなければ意味のない事ばかりだが、こんなしょぼくれた俺にも出来る事があれば、いつでも呼んでくれよ。

俺の方ももう少しで面白い事ができそうなんだ、その時は手を貸してくれないか?

誰も居なくならなくて良い、俺はそう思ってる。

当然だろ。


ピアノブラックのバーカウンターに敷かれたコカインのライン。

俺はまだ吸ったことは無い。

俺のライダースの上で溶ける淡い雪。

独りでいることに気付かぬうちに漏れる白い溜息。

この間寝た子の吐息、シーツの上の黒い下着。

綺麗な背中から尻のライン。

ペラペラのベビードールの向こうに見えた空虚しい闇。

あの子やあの人の素肌に刻まれたインクの意味を知りたい。


レンジローバーが背後から追い越す音を追う。

俺たちは白と黒の行間で絶えず踊る。

埋まらない俺と誰かの溝に流れる音楽。

俺を救ってくれた、誰かが命を削って残した道楽。


じゃあ、それで生きてる俺もそいつをやらないとな。


終わりの見えない仕事に向かう俺の道には、吹いたら消えそうなほど薄く頼りない雪が積もっている。

俺の足跡の影に何が見えるだろうか?


三十五の俺達も、高齢化社会の煽りからか

「クソな大人と仕事したくねぇよな」

「ロクでもない大人にしこたま飲まされたわ」

 という物言いをする。

寂しそうな少年少女を知ってか知らずか引き連れたまま、皆んなが大きくなっている。

『大人と子供の違いは持っている玩具の値段だけである』

と言ったのは誰だったか。今の頭ではどうにも思い出せない。

ただ、時々、今日みたいに月が近い夜は、色目気だった大人たちの周りを、同じ服を着た子供たちが手を引くように囃しているのが見える。

その子たちは、揃いも揃って頭からつま先までどうしようもなく赤黒くて比重の重たい液体でぐっしょりで、目玉がない。

たまにそんな血生臭い子供を連れていない、老後の顔が思い浮かばないような御仁がいるのだが、最近はトンと目にしていない。

血まみれの子供が細いデニムに身を包んでツーブロックを靡かせながら風を切って歩き、女の子は巻いた明るい髪で肩を出したニットのドレスに身を包んで、大人たちを夜の喧騒へ導くそんな夜がたまにある。

俺もそうなのだろうか?引っ込み思案だったあの頃の俺は、俺の周りで錆のような匂いをさせて息を潜めているのだろうか?

あいつら、嫌なんだよな、無邪気に歯を見せて笑うのがなんだか悍ましいんだ。


「ねえ、何を考え込んでいるの?」

 頭上から初めて聞く声が聞こえた。声の主は誰かすぐに分かった。

月が近い夜は、いつも不思議な事が起きる。

月を見上げる時よりもう少しだけ上を見上げると、頭上に半月のようなあの子が浮かんでいた。白地に花柄のワンピースを纏っている肩には紺色の荒縄が食い込んでいる。

TPOを弁えた、イケてるセンスだ。

「ああ、ちょっと今からの段取りをね…君は良い夜を過ごしているみたいだね?」

言語、時間、距離、いろんな事が俺たちを隔てているはずなのに、まるでいつもの事のように話している。声を聞いたのは、きっと初めてのはずなのに。

「インスタで君が縛られているのを見るたびに、ずっと思っている事があるんだ」

「あら、いけない気分にさせたかしら?」

「君はいつでも俺をそんな気分にさせるほど魅力的だよ、それは否定できないし、する気もない。でも、違う意味で良からぬ気分だね、詳しくは言わないけれど」

 鬱血のせいか、良いムードなのか、トロリと緩んだ彼女の目が俺は大好きだが、俺はどうしてもそいつが気まずくてどうしようもない。

そういう場面でその気になっていればいくらでも受けて立つが、残念なことに女の子を気持ちよく痛めつける技術を持ち得ない俺が作り上げた雰囲気ではないから、なんだか入り込めない。それに、カマグラを部屋に忘れて来てしまった。

宙に浮かぶ彼女を見てから、胸の中で、この街に生きる夜の子供たちが身に纏っている液体のような、見て見ぬふりをしない限りは嫉妬と分かりきった黒く重たい感情が冷たい沸点で煮えたぎっているのがはっきりと分かる。

何に対してだろう?

彼女を縛った男?

それとも、快楽に素直な彼女?

ひょっとして、対岸に取り残されている俺?まさか、ね…

「ずっと気になっていたんだ、君が縄の中で安らいだ顔をしているのを見てから。君の表情はまるで救われているように見えるよ、まるで禅でも組んでいるようにね。一体、どんな気分なんだ?そればっかり気になっているよ…あ、禅って分かる?」

 周りくどい、カッコつけた俺の話し方には自分でも虫唾が走る! 

 彼女の目尻と口角が優しく緩んだとき、そんな俺の格好悪さも少しだけ許されたような気分がした。

「そうね、この気持ちを言葉にするのは、今は少し難しいかな。でも、貴方が言ったような気持ちも、きっとある気がするわ」

「痛みも?」

「それが大事なのよ。マスターに縛られて自分の重力と痛みを感じている時、私は安堵している。きっと今、貴方がお堅い顔をして考え込んでいたような事からね」

 目をしっかりと見て、耳を貸すに値する言葉に思えた。俺の心を暴かれた気分だ。

「それと、ああ言う事からもね」

 彼女が上目遣いで見た先は俺の背後だ。俺は歩むスピードを落として振り返ると、大通りの交差点に差し掛かっていた。

角にある雑居ビルのドアがバタンと開いて、後転で吹っ飛ばされるようにジーンズ一丁の男が転がり出してきたと思ったら、スーツを着崩した見るからに堅気ではない男が怒鳴りながら出てきて、手に持ったスーツケースでその男を滅多打ちし始めた。

すると、その怒声に呼応するように小道から出てきた2、3人の男がこれまた何やら喚きながらその騒ぎに歩み寄って、双方が懐に手を突っ込んで、まるで揉め事の原因を探す時みたいに人差し指を向ける形でお互いに向き合っている。

よく見ると、その手には何かが街灯を吸い込んで鈍く光っている。

きな臭い対立に、路地裏のそこかしこから手に色々と物騒なものを持って男たちが集まって、一触即発の雰囲気がどんどん大きくなっていく。

別の街角では水商売と思わしいドレスの、この辺ではちょっと顔の知れている姉妹が口喧嘩をしている。

黒いロングドレスが姉、明るいベージュのニットワンピースが妹らしいが、二人とも妙齢過ぎてよく分からない。

やたら身振り手振りが激しいなと思ったら、街頭で手に鈍く光るものが見えた。


その後も、宙吊りの想い人に連れられて歩く背後で、続々と鉢合わせた集団が揉め出したり、どこかの店から飛び出した奴らが男も女も関係なく大声を浴びせ合っているが、どこかでガラスの割れる音が聞こえた途端、ヤクザ共はクラッカーのような音を連続して鳴らして、姉妹の包丁チャンバラはだんだんと熱が籠ったものになり、騒ぎはますます大きくなる。

俺は再び吊られたハニーと目を見合わせて笑って、苦笑混じりに空に向かってガンフィンガーを振りながら、耳の中で重たく跳ねるビートに合わせてミアとヴィンセントが踊るように歩みを続ける。

少しずつ激しさを増して行く風の中で、弾丸でぶち抜かれたスーツケースから白い粉が溢れ、鉛玉が通った後を走る血煙、包丁の鋒から走る血飛沫、クエルボ、オーパス・ワン、鏡月、めいめい誰かの頭に振り下ろされてから光を吸って煌めきながら飛び散る様々な酒の雫とガラス片、騒ぎを聞いて飛び出した中年カップルのバスローブから喧騒と風で縮み上がった逸物が震えて滴る尿と他の体液が混じった液体、折れ曲がった滲だらけの一万円札、ありとあらゆるお楽しみが雪に混じって行く。

激しく光り、鳴って、壊れて、また静かになる。

いつか滋賀のラウンジで酔えないまま眺めていたポスト・マローンのミュージックビデオを、もっと大衆演劇のようにした光景だ。

シャカシャカのダウンを着たおっさんが日本刀で撫でられ、原付に乗ったおばちゃんに流れ弾が食い込む。

姉妹はお互いの腹に包丁を突き立てながら、和解を喜ぶように寄り添いながら膝を着き、男たちはそれぞれ雪の上に倒れ込んで、その上に深々と雪が降る。

その中で最早白いだけでは無くなった雪を、さっきまで騒いでいた大人たちそのまんまの格好の子供たちがかき集め、それを投げ合ったり相撲に興じていて、何とも楽しそうだ。

だが、どうしても混じる気はしない。

彼女は縄が食い込む痛み、俺は革ジャンに包んだ孤独と耳の中で鳴る音楽で、そんな騒ぎから切り離されている。

明るい夜みたいな色のロープに委ねゆっくりと回る彼女のしなやかな曲線と、鈍く滑らかに光るレザーに包まれた俺のがっしりと重たい図体を、狂宴の暴力が使役する弾丸も血飛沫もまるで他人事のように擦り抜けていく。

生き方、生き方。酒に溺れるのも、名前が付いた生き方を身に纏うのも、自分や他人を傷つけるのも、痛みと向き合うのも、全て生き方。

それら全て、許されるが許されまいが、何もかもが起こりうる。

どこかの店から流れる775の歌うレゲエは、俺と彼女のプレイリストには入らない。

きっと俺の耳の中で鳴り続けるC.O.S.A.も彼女には…


宙に浮かぶ半月の影から吊るされているだろう、きっとその隠れた半分のように恋しい彼女の顔をもう一度見上げた。

「バロウズの『ジャンキー』を思い出したよ。読んだことある?」

「読んだ気がするけど、忘れたわ」

 俺はバロウズの言葉を思い出すためにもう一度舗装された道に視線を落とす。

「バロウズは麻薬は生き方だって書いていたよ。ざっくり言うと、快楽を通して物事を俯瞰で見ているらしいのさ。君が縛られているのを見ると、正しい気がする」

「へぇ、間違っていない気がするけど、そんなに小難しいことなのかしら?」

「古い男は小難しくて難解で険しくて破滅的なのが好きなのさ。ハードなやつがね」

「貴方もそうなの?」

「バカをやってるうちに、気付けば両膝まで浸かってるかな。でも、まだ破滅はしたくないな。やる事がいっぱいあるんだ。その中には、君に会いに行く事も入ってる。もちろん、君がOKならだけど」

 とんでもない事を口にしてしまった事に気づいた時、どうしても煙草が吸いたくなった。アルコールもニコチンも切れかけて、どうしようもなく胸がザワザワする。だが、帰るべき家はもうすぐ、つまり、話せる時間もそんなには長くない。

「ねえ、ケータイ鳴ってるよ」

 袖を引っ張る方から幼い声がする。ふと我に返ってズボンのポケットからスマホを取り出すと、LINEの通知があった。

『トラック出来たよー。メールで送ったから、確認してみて!』

 文章を確認した時、鼓動が一つ、強く鳴った。彼女の安寧に嫉妬するのと対をなす、俺の明るく青いもう半分の感情が胸に点る。

返信は聴いてからにしよう。スマホをポケットに収めて、もう一度空を見上げた。

距離が近まっている。栗色の墨で描かれた滝のような長い髪の帷の中で、化粧品の香りどころか、呼吸の温度や少し滲む痣の鉄臭さすら分かりそうな距離なのに、俺は一体何を彼女に言えば良いのか分からない。言いたいことはたくさんある筈なのに。

髪の毛に絡め取られて、彼女と一緒に縛られたかった。

一思いに唇と素肌を重ねたかった。彼女の重みが欲しかったし、俺の重すぎる体重も受け入れて欲しかった。彼女の中に居場所が欲しかった。

お揃いの縄の痕が欲しかった。痛みを分かち合いたかった。

心の痛みをわかっているつもりになりたかった。

彼女と、誰と?

俺?

お前、何処の誰なんだよ?

まだ碌に自己紹介も出来てないだろ?ほんとにこの子に相応しいのかよ、お前?

「綺麗だよ」

「キスして欲しい?」

「最高だね!でも、遠慮しとくよ」

「あら、最高を遠慮するなんて、最高に矛盾してるわね。どうしてか教えて?」

「俺にまだその資格がないからさ。だって、君をそんな表情にさせたのは俺じゃないだろ?」

 彼女の‘こいつ、どうしようもねえな’とでも言いたげな笑みも、やはり美しい。

格好付けてばかりだが、本当はどうしようもなく彼女の心も体もモノにしたい。

一方で、気になる女の子に相応しいくらい格好良く居たい俺もいる。

俺はまだまだ自分のことも分かっていない。自分を見せない奴なんてあまり魅力的じゃ無いだろう。

もっと自分に忠実になれ。自分の欲求に向き合え。

そして、飲み込まれるな。そうじゃなきゃ誰も幸せになれない。

大丈夫、両方出来る、俺なら。

葛藤の間に知った自分を誇示してやるんだ。

「それに、まだ君には俺の事を何も見せていない…今から面白い事が出来そうなんだ。君が気に入ってくれたら、ぜひお願いするよ」

「楽しみにしてるわ」

 彼女はそう言うと、2回唇を鳴らした。Kiss,Kiss.

「絶対に後悔させない。約束する」

 目が合ったのは初めてじゃないが、この言葉が熱を帯びて俺の喉を通り抜けた時、初めて彼女の目を見た気がする。

髪の毛が冷たい風に靡きながら、スッと上がっていく。

優しい彼女の微笑みを見送る俺はどんな顔をしていたのだろうか。

素敵な時間の閉幕、そして永く続く時間の何度目か分からない幕開け。気付けば、自分の住んでいるアパートの前。

後ろを振り返ると、雪はもう全部溶けていた。歩いてきた商店街を振り返れば、物陰に身を潜めるキャッチや女の子と、熟年カップルが連れ立って歩いているだけ。

誰も死んでいないし、一滴の血もない。

俺が妄想に取り憑かれているだけでほっとした。大勢死んでも困るし、気になるあの子が他の誰かの手で気分良くなっているのもわざわざ見たいもんじゃない。

それに、仕事中のイケてる奴らや、素敵なレディたちが悍ましい幼児退行をしてない事にも!

階段の横にある自販機を見た時コーヒーを飲みたくなったが、小銭が無かった。

金が要るんだ、仕事しなきゃ。細い階段を上がって、角の部屋の鍵を開けた。



革ジャンどころかコール・ハーンのローファーもろくすっぽ脱がずに作業デスクに座り込んで、また電子タバコを吸い込んでいる。

コーヒーはありがたいことにキッチンに転がっていた。基本的にアイスしか飲まないから、冬の室温で冷え切った缶はちょうど良い塩梅だった。

ニット帽を脱いで髪の毛を掻き上げると、もう一度被り直して、もう一度吸って、鼻から吐き出す。

室内の匂いを嗅ぐと、どうも錆臭い。

それもそのはず、床一面が敷いてある絨毯もわからないほど血で真っ赤に濡れて、水泳の後の更衣室でペンキが塗られたリノリウムが濡れているように輝いている。

血の赤さがそう思わせるのか、何所か淫靡な気だるさがある。そんな部屋で靴なんて脱ぐ気がしない。これからやる事がまだまだあると言うのに、なんとも気が滅入る。

血溜まりには飲み干したウォッカの大瓶が転がって、さっきまで気持ちよさそうに血塗れで寝転んでいた何処かで見た覚えのある女が、俺の足に這うようにもたれかかって俺の手巻きタバコを勝手に巻いてやがる。

全然嫌いじゃないが、今日だけは本当に鬱陶しい。

電子タバコのセッション時間が終わった俺は、デスクに置かれたヘッドホンを耳に当てて、巻き終わった煙草に火を着けようとしていた女の頭を叩いてベランダを指差す。室内は電子タバコだけだ。

女は不満そうに口を尖らせてこっちを睨んだが、大人しくベランダに向かった。もう帰って来るなよ。頼むから、吸い終わったら床も綺麗にして出ていってくれ。

それにしても、見覚えはあるが毎回姿形の違う、いつも馴れ馴れしいあの女は一体誰なんだ?喋ったこともなければ、寝るなんて以ての外だ。

これも、きっと本当に起こっている事ではない。はずなのだが、俺の部屋はご覧の通りしょっちゅう気怠い非日常が満ち溢れている。

真夜中の作業中、呼んでもいないクソうざってえ客がいつもほっつき歩いて、祭りの後みたいなかったるいセックス・ドラッグ・バイオレンスが常に充満している。

出汁ガラ同然のそれは、最早死や虚無そのものの臭いがする。

明日の金に困る生活、閉ざしっぱなしの心、コーヒーも買えないほど薄っぺらい財布、取り憑かれっぱなしの歪んだ視界…辟易する事ばかりだが、最近は何だかそんな最悪な気分すらも俺のケツを叩く。

MacBookの画面を開いて、メールボックスを開いた。

さっきのメールがちゃんと実在していた。添付ファイルを開いた。

もう一度、電子タバコからまだ熱々のフィルターを取り出して、煙草を詰め直して電源を入れた。

煙を吐き出して、いつの間にか一周したトラックがもう一度鳴り出すのに傾聴して、閉じていたノートを開いてボールペンを取った。


「ねえ、もう着替えて寝ようよ」

もう曲が何周したか分からな句なってコーヒーでも飲みたくなった時、ケツを叩いた自分とは違うが、さっきも聞いた懐かしい声が、革ジャンの裾を引っ張る。

最近、苛立つと舌打ちが癖になっている。気配がある右側のイヤホンをずらした。

「駄目だ。寝てるうちに革ジャンかっぱらう気だろ、お前」

「いいじゃんか、寝ている間だけ貸してくれても」

「駄目だ。そもそもサイズ合わないだろ」

「なんでそんな意地悪言うんだよぉ」

 うんざりした俺は、オフィスチェアをゆっくり回しながら横を向く。

コロコロに太った眼球のないガキが入り込んでいた。俺のと同じカーハートのパーカーを着て、不貞腐れるように俺を睨んでいる。睨んでいるとは言ったものの、視線ではなくて鼻持ちならない悪臭がぽっかり空いた眼窩から臭って来そうだ。ムカついから、顔に煙を吐き掛けてやった。

「カッコ付けたい時は自分で金払うんだよ、クソガキ。ずっとそうして来ただろ」

「なんで僕だけお酒を飲んだり遊んだりしちゃいけないんだ?煙草ばっかり吸って、真面目ぶって仕事してないで素直に僕と遊んでくれよ」

「革ジャン貸して下さいって素直に言えないお前が偉そうなこと言ってんじゃねえよ。大人はな、遊ぶ為に仕事するんだ」

 ガキの両目の空洞がまるで水が湧くように歪む。今にも泣きそうだ。

「カッコばかり付けるなよ、大した仕事もしてないくせに」

 意趣返しだとかそう言う子供じみた反応は相手にする必要がない。が、どうしても苛立つ。黙殺する為にもう一度ノートに向き合った。

「自分が遊べない理由がよく分かってんじゃねーか」

「大人ぶりやがって!図体だけデカくなったくせに!大人なら素直になれよ!」

 よっぽど悔しかったのか、椅子のポールをガンガン蹴り出した。もうすぐでひと段落というところでダルい絡みをされると、女子供でもブン殴りたくなる。

ゆっくりとした素ぶりでペンを置いた右手を最速で走らせて胸ぐらを掴んだ。

「お前の魂胆は分かってるんだぞ」

 自分のパーカーの裾をインナーごと掴むと、グッとたくし上げた。俺が女の子だったら良かったし、もうちょっと甘え上手なガキだったら良かったのにな。そうすりゃ、こんな痛々しいものを見なくて済んだのに。

隣の部屋に設置された姿見をちらっと見た時、自分でも気分が悪くなった。

俺の胸にはぽっかりと穴が空いていたから。綺麗そっくり心臓がくり抜かれている。きっとポーシャが機転を効かせなかったら、アントーニオはこうされたんだろうな。

「これが暴きたかったんだろ、えぇ?お前が住んでいる所をよ。こんなので酒飲んでも流れていくだけだし、女の子はドン引きだぞ。それも分かってて言ってるんだよな?お前の目玉とまるで同じだ。迷惑なんだよ、生臭ぇし居心地悪くて」

 嘘を暴かれた時と同じ、不都合な真実を突きつけられた小さくか弱い醜い自分自身が意気消沈するのが手に取るようにわかる。そりゃそうだ、胸ぐら掴んでるんだから。

左手で薄寒い胸をもう一度隠しながら、離してやった。もう何も言ってこない。

「お前の友達みんな、さっきも頑張って店やってたり、仕事で疲れてるのにトラック送ってくれたりしてくれてるんだぞ。もうみんな大人なんだよ、お前以外な」

「だって僕、どうしたらいいかわかんないんだよ・・・」

 グズるガキを一喝してやるのは大人の仕事だが、みっともないことに、それを聞いてしまうと、吸った煙と一緒に、そうだよなぁ、と哀れな本音が漏れた。

パーカーのフードを被って、もう一度ペンを握る。

「革ジャンは仕事着なんだ。今から稼ぎ方って奴を見せてやるから、大人しく待ってな」

 ペン先が最後に速く畝って、置かれた。

ノートに書かれた文字をブツブツ音読する俺しか、もう部屋にはいない。

もう良い、色々と待たせすぎた。

あとはもう、走り出さなければ分からない。

ブツブツ反芻していた音読が終わった瞬間、俺はヘッドホンのプラグを抜いて、DTMソフトの再生ボタンをクリックした。

その瞬間、床に落ちていた空き瓶がジリジリと震度するほどの重低音が部屋に響き渡る。

太くて硬いベースとドラムが胸をブチ抜いた瞬間、俺は生き返った。

大丈夫、心臓はちゃんとある。

音が鳴れば、俺の胸はいつでも真っ青に燃えている。

俺は椅子から立ち上がって、机の上にあるマイクをひったくった。

カメラは背後だな?

口下手で捻くれてる俺はこれでしか本音を出せない。

その代わり、俺の歪んだ哲学も、青臭い本音も、このやり方なら武器になる。

「Ayo!永遠のクソガキども、始めようぜ!」


誰かに何かを渡せるような善い人生が欲しいし、善い人間になりたい。

でも、まだ着たい服も飲みたい酒もあるし、良い車で気になる子を迎えに行って手を取り合いたい。
まだまだ自分でもわかっていない心の内側や、欲の先にある物を手にしたいんだ。
その為に何度でも、俺なら出来るさと言い聞かせる。

汚れを知らずに賢者や仙人ぶるのは嘘吐きのやることだ。

そんなカッコ悪い大人になりたくないね!

だから、俺は俺を救ってくれた行間の中に飛び込むことにした。

振り返ってカメラにガンフィンガーを向けたら、あとは一心不乱に音に乗り、最良のパンチラインを紡ぐだけ。

俺の仕事は生活と地続きの剥き出しなエンターテイメント、ダチの作った最高のビートの上でハニーを縛る縄と同じくらいタフで繊細な俺の感情が暴れたら、ちょっとは刺さるなりブチ上がるなり出来るはずだよな、みんな?

新しい作品が出来たら、また制作とドサ周りの毎日だ。

そんなクソみたいな環境と、いつもガイダンスをくれる俺の周りの人たち、そして今何かの気まぐれで振り返った君たちにまずは感謝だ。

ネタと報酬がありゃあ、いくらでもやってやる。

喰らったらあいつの店で声をかけてくれよ、乾杯くらいしようぜ。


今の俺は自分の渇望に忠実なんだ。安酒や手頃なセックスの出る幕はないぜ。

俺は知ってるんだよ、お前らも寂しいんだろ?燻ってるんだろ?

さあ、アートって奴は一人じゃ出来ない。ご機嫌なやつも、俯いている奴も、みんな踊れ。

そのストロングゼロもTHC-なんちゃらも後ろ暗さも、何も手放さなくていいよ。

みんなに縋り付くそのクソガキ共もな。

金払ってくれた分、綺麗に燃えさせてやるよ。



明けない夜が来るまで、音楽と言葉は振動し続ける。

何を得て何を失うか、そいつらが記録してくれるだろう。







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