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創業経営者だからこそ、独自性ある経営管理ができる

私は、ソニー子会社の立ち上げ業務をおこないましたが、ソニーの経営管理を実際に経験した者として、会社規模に限らず、どのような企業においてもある程度の経営管理が必要だ、と考えてきました。
理由は、優れた創業経営者が存在している企業でも経営者が進める優秀な経営戦略を推進していくのは、紛れもなく、その配下にいる多くの社員達です。
経営戦略が経営戦術となった瞬間から、これら多くの社員達によって経営戦略が具体的に実行されなければなりません。
そのためには、当初創業経営者がもっていた権限を組織機能を作って移譲させる必要がでてきます。
経営戦略が経営戦術になったときから日常業務において、当初の目標に向けた経営戦略の修正や改善をおこなうという細かな作業が発生してくるからです。

企業規模が50名程度であれば、直接社員へ指示を出し、日々、目標に近づけるための作業を経営者自身でおこなっていくほうが効率的であり、確実に事業運営の進捗管理が可能となるでしょう。
経営者が身近にいて直接指示を出すほうが、社員からみても仕事を進めていく上でわかりやすく納得がいくものになると思います。
大手企業のように、わけがわかならい中間管理職の指示や業務運営より、厳しいが働きがいがある組織(会社)とも言えます。

しかし、企業規模が社員数で50名を超えてくるようになると経営者が一人で社員を見るには管理可能な範囲に限界がでてきます。
実際、ある企業の創業経営者は、社員数70名を超えるようなステージから社員一人一人の動きが見えなくなったと、話していました。
それでもこの経営者は、300名近い社員数まで経営者自らが直接社員を管理していました。
問題が多発して、すでに企業運営に無理がきていました。

当然、このような企業の組織でも、組織と役割に対応した職制は作られていますが、ほとんど機能していません。
文鎮型のフラットな組織になります。
いわゆる組織階層がないに等しいものです。
必然的に一般社員は、職務権限がない上司の仕事を見ていますから、表面上は別として、本音では上司の仕事ぶりに滑稽さを感じているようでした。
当然ですが、部下が上司に対して尊敬の念や信頼感をもつようなこともありません。

企業の経営は、やはりある一定規模以上になった場合、企業の成長ステージを構築するために創業経営者ほど分権化と組織機能の大幅な改革をおこなっていく必要性がでてきます。
そこにこそ「経営管理」の課題があると、私は考えています。
良いビジネス書から現実の事業運営を学ぶと同時に、やはりよい経営管理ができている企業に、そのヒントを求め、創業経営者自らが変わることを決意することが必要です。

この転換ができた創業経営だけが、事業を拡大成長させていきます。
その意味では、私が経験させてもらったソニー子会社におけるマネジメントや経営管理は、中小企業ほど経営管理を機能させることが可能です。
中小企業の経営改革を進めていく上で、人を含めたマネジメントやソニーが確立させている内部監査機能など、私は中小企業やベンチャー企業ほど導入できるチャンスがあると、考えてきました。

実際には、ひとつも成功しませんでした。
ソニーが創業期からおこなっていた経営マネジメントや経営管理は、創業経営者を含めて、実にユニークな経営なのだと、私は中小企業という実験場のなかで感じることができました。
日本の創業経営者をみていると、私がみてきた範囲だけですが、似通っています。
多くの創業経営者は、社長とは「威厳」だと考えているようで、社員に対して支配的なマネジメントスタイルだったでしょうか。
このことからして創造的な経営マネジメントをしていくことがむずかしく、閉鎖的な経営に陥り、いわゆるワンマン経営になる前提ができています。

経営スタイルを変えることは、創業経営者そのものが変わることですから、なかなかむずかしいのかもわかりません。
支配欲は、そもそも人間がもつ本質的で最高の欲望だからです。
古典を読めばすぐに理解できるところでしょうか。

中小企業が変われない本質もここに存在しています。
創業経営者が変われないのです。
無理もありません。
創業経営者ほど、多くの辛酸と辛苦を重ねているからです。

それでも創業経営者ほど、残酷なようですが、変わる必要があるのです。
経営管理は、創業経営者がかわらなければ、独自性ある経営管理が生まれることもないからです。
創業経営者ほど、本来ユニークさをもっているのですが、事業が上手くいくほど支配的な経営に傾斜していく課題をもっています。
このことにはやく気づくことでしょうか。

あまりむずかしく考えることはありません。
他人に仕事を任せるが、任せた仕事をチャックする仕組みを構築しておけばよいだけです。
そもそも人を信頼できるかどうかを心配しつづけても無意味なのです。
人間とは、信頼できる場合もあれば、信頼できなくなる場合もある存在であり、しかし、事業を拡大させるための重要な要素だからです。
信頼を問うていては、人に仕事を任せることなど永遠にできないでしょう。
経営管理とは、事業を拡大させ成長させるためにあるものであり、創業経営者が目指す優秀な戦略を最前線で修正しながら闘うのは、あくまで仕事を任せた社員たちなのです。

他人に仕事を任せただけでは、ビジネスの環境のなかで、人間はいろいろな不都合な問題を生じさせる存在でもありますから、内部監査機能を構築しておくのです。
私からみれば、創業経営者ほど人を信じ過ぎています。
人情味もあるのですが、ビジネスとは、人間を信頼するかどうかではありません。
あくまで仕事を任せることができるどうかです。




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