「激動の時代に、多角的なチャレンジを続ける」-株式会社大賀薬局 代表取締役社長 大賀崇浩さん-【ミライロ仕事図鑑】
ミライロ仕事図鑑は、福岡商工会議所とNPO法人学生ネットワークWANのコラボ企画です。今回のインタビューは、福岡商工会議所NEWS11月号(PDF)に掲載されています。
医薬品業界の変化に柔軟に対応し、地域の人々の豊かな暮らしのために挑戦し続ける株式会社大賀薬局。今回は、 そんな株式会社大賀薬局 代表取締役社長の大賀崇浩さんにお話を伺いました。
大賀薬局が現在取り組まれている事業について教えてください。
メインの事業はドラッグストアです。
他には調剤薬局 化粧品専門店 バラエティショップ事業などを展開しています。
さらに、20年後、30年後には福岡・日本全体の市場がシュリンクしていくので、大賀薬局としてシナジーが出そうな事業を展開しています。
また、在宅医療のノウハウや採用のコンサルティング、接遇の講師などもしています。
さらに、海外事業にも取り組んでいます。
4年前から大賀薬局海外事業部を作り、それを2年前に大賀商事株式会社という形でスピンオフするなど、「大賀薬局グループ」 として新たな事業にも挑戦しています。
私の祖父が「現状維持は後退だ」という言葉を残しているように、伸びそうな分野には今のうちに種をまくべく、「未来投資」と 「既存事業の成長」 をきちんと分けた上でそれぞれにしっかりとカを入れて取り組んでいます。
大賀薬局の薬局事業の強みを教えてください。
ドラッグストア全店に薬剤師がいることです。
全社員のうち、約440人が薬剤師で、比率としては全国でトップクラスではないかと思います。薬剤師がいなければ調剤はもちろんできません。
さらに、第一類医薬品は薬剤師しか販売できません。
知識が豊富な薬剤師が全店にいるということは、そのような特殊な医薬品も含めて、お客様に合わせた最適な医薬品を提供できるということです。
お客様が病院で処方された医薬品との飲み合わせなども考慮する場合は、薬剤師が対応しないと難しいと思います。
これから日本の高齢化が進んでいく中で"とにかく安ければいい”から、“より安心・より安全であること”が大切になるので、現在の強みをさらに伸ばしていきたいと思っています。
大賀薬局といえば、 最近は「薬剤戦師オーガマン」で注目を集めていますね。誕生の経緯を教えてください。
「病気の予防」「残薬問題」「薬育」の3つを伝えたいという思いから「薬剤戦師オーガマン」 が誕生しました。
実は、医療費約45兆円(※1) のうち、およそ25%が生活習慣病(※2) などの、羅患しなくて済んだ病気だと言われています。
そして、高齢化により日本の医療費が年々膨らんでいる面からみても、病気の予防は大切です。
また、薬の飲み忘れは治療効果を半減させ、 結果として病気が長引いたり、 再入院したりすることにつながります。 残薬問題は医療費を増やす要因にもなっているのです。
服用されずに捨てられている薬の量は年間500億円にものぼるといわれています。
そのような中、薬を扱う私たちが最初にできることは、この問題を啓発していくことです。
そして、この医療問題の中でも、“薬”に関して正しい知識や使用方法などを教育していくことを、私の造った言葉で“薬育”と呼んでいます。
例えば、“食育”といえば、親から子どもに教育するものだと思いますが、 オーガマンを通した薬育のポイントは、 子どものうちからこういった問題に少しでも触れてもらい、 子どもたちから親や家族へ 「お薬飲んでね」と言ってもらうことだと思っています。
ショーの中でも「お父さんお母さんの健康を守るヒーローになってね」と伝えています。
おじいちゃん、おばあちゃんにとって最強のインフルエンサーである、お孫さんから「お薬飲んで健康で長生きしてね」「お薬忘れないでね」 と言われれば、 それだけで飲み忘れは確実に減っていくはずです。
「薬飲んで寝ろ」というオーガマンの合言葉も、子どもたちがおもしろおかしく使ってくれるといいなと思っています。
大賀社長は「社員満足」を大切にされているとのことですが、社員の皆さんの「働きやすさ」を実現するために工夫していることはありますか。
まず、社員を大事にするということは、お客様・患者様に満足していただくということでもあると考えています。
先代の教えの中にも、「社員が心身ともに健康で満足していない状態では、お客様に満足を与えることができない」とあります。
その考えを元に、大賀薬局では、 キャリアアップの方法を多様化することに取り組んでいます。
例えば、 現場で働き続けたい社員にとって、マネジメント層にならないと給与が上がらない仕組みは不公平ですよね。
特に薬剤師は現場で働く職業なので、キャリアアップが難しい側面があります。
そこで、大賀薬局では、薬剤師や調剤事務といった現場の職種でも昇給できるような仕組みを作りました。
昇給するには店長にならないといけないのではなく、 専門性を究めたらその実績をきちんと評価することを大切にしています。
その点は、一般的な流通小売業とは異なると思います。
また、年に一回実施している「チャレンジ制度」では、誰もが新規事業の提案や参画できる機会を設けています。
新規事業を立ち上げるときは、参加を希望した社員やその提案者を必ず部署異動させ、「専任」で取り組んでもらいます。
他にも、「ほめる」を見える化するアプリを活用されているとお聞きしました。
はい。パートさんも含めて全社員が、感謝の言葉をバッジと一緒に送るコミュニケーションアプリ 「ほめレター」 を使っています。
私が社員に実践してほしいことを「バリュー」と呼び、そのバリューを体現できた時に、社員同士でほめる仕組みになっています。
誰かがほめられると、 その内容がタイムラインに流れてくる設定で、 「ほめる」 が見える化されています。
もちろん私も参加していて、 どうしても関わりが少なくなってしまう現場の社員の取り組みについては管理職クラスから「○○さんのこういう所をほめて欲しい」と、 私に知らせてもらうようにしているので、私から直接、現場の社員に 「こういうことをしてくれたらしいね、ありがとう」と伝えることもあります。
最後に、コロナ禍で大きく変わったことなどはありますか。
現場の社員はシフトの関係で在宅ができない場合も多いですが、本部社員は昨年の10月からフリーアドレス化ペーパーレス化を実施して、在宅勤務をできる環境を整えていました。
ですので、社員は現在、在宅勤務と出社を併用しています。
「コロナだからできない…」ということではなく、「コロナ禍でもできる方法を考え、実践する」体制を整えています。
それに大きく役立つ、スマートフォンやタブレット、 ウェブ会議ツールなどの文明の利器は最大限に使うようにしています。
事業でも社内運営でも面白い取り組みをされている株式会社大賀薬局。
私自身も医療費問題にしっかり向き合っていきたいと思います。貴重なお話をありがとうございました!
※1…厚生労働省が令和2年8月に発表した「令和元年度医療費の動向」によると、
令和元年度の医療費は43.6 兆円
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000550869.pdf
※2…厚生労働省中央社会保険医療協議会が平成31年4月に発表した「年代別
世代別の課題(その2)」によると、生活習慣病は、一般診療医療費の約3割を占め
る(P6)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000528279.pdf
取材日:10月8日
今月の取材先 株式会社大賀薬局
〈住所〉福岡市博多区博多駅前3-9-1 大賀博多駅前ビル3F
〈電話〉092-483-8777
〈概要〉福岡県を中心に「調剤薬局事業」「ドラッグストア事業」の 2 大柱で事業展開をしている。ミッションステートメントには「社員奉仕・顧客奉仕・地域奉仕」の三つの奉仕を掲げる。
■NPO法人学生ネットワークWAN とは?
設立17年目を迎える学生主体のNPO。「学生だから~できない」「地方だから~できない」を変えるべく全国 19 地域の情報発信支援や、地域の関係人口をつくるコンテンツ企画運営をしている。
■FMラジオ番組「FUKUOKA2020」とは?
地域の情報・次世代ビジネス・地方創生などの最新情報について、大学生を中心とした若手メンバーとゲストで発信するラジオ番組。ラジオというメディアの新しい可能性を、ソーシャルメディアやスマートフォンファーストでビジネスを考えている世代が探っていきます。
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