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コロナ禍での学生団体の活動の変化 〜「実践的な学びと地域の課題解決」を目指す広島建築系学生団体scale〜

コロナ禍において、企業でもテレワークや在宅ワークが普及し、日本中でオンライン化が加速する一方で、大学のサークル活動や学生団体の活動などのオンライン化は上手く進まず、活動がストップしている団体も少なくありません。

そんなコロナ禍においてでも、継続的に活動している学生団体に話を聞くことで、全国の他の団体の参考になればと思い、まずは建築系学生団体への取材を開始しました。(本プロジェクトは、トランスコスモス株式会社からご支援をいただきながら進めております。)

第1回目となる今回は、広島で活動を展開されている、広島建築系学生団体scale代表の城本大暉さん(広島大学4年)にお話をお伺いしました。

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(左:インタビュー FUKUOKA2020パーソナリティ大嶋さん、右:scale代表 城本さん)

広島建築系学生団体scaleとは?

広島国際大学の学生が、2010年に開催した「The.談」をきっかけに立ち上げた学生団体。地域の抱える課題や依頼に建築を通して取り組む。2014年に作成した移動式映画館は、以降の活動依頼のきっかけに。2016年は、即日設計WSや廃材WSといったWS形式の活動やイベント会場の設計・監督、古民家のリノベーション等の様々な活動を推進。学校で学んだことを活かしながら、建築の魅力を多くの人に伝えながら地域貢献を目指す。

- まずはじめに、scaleさんの立ち上げ背景を教えていただいてもよろしいでしょうか

広島国際大学の教授が、広島県内の建築学生を集めて建築家の講演会を開催していた活動を元に、2010年に開催した「The.談」をきっかけに立ち上がった団体です。大学の講義の延長のような形で、立ち上がりました。

- 現在の活動について教えてください

ここ数年は、元々の講演会の開催とは別に、現場での施工などをメインに活動するようになってきました。設計する上で、やはり現場での経験が必要なので、リノベーションや、家具の施工のお手伝いなどを手掛けるようになってきたという背景があります。

現在は、企画段階のものもあるんですが、古民家のリノベーション・古屋の設計・小学校のリノベーションに携わっています。小学校のリノベーションは、知り合いの建築家から直接依頼を受けて、施工のお手伝いしています。団体メンバーの実践的な学びに加え、地域のお困りごとを一緒に解決していくことをメインテーマとして活動していて、東広島市志和町志和堀の地域の方とは、ここ数年は「ほたる荘」という場所のリノベーションプロジェクトでご一緒しています。

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(ほたる荘リノベーションの様子 -scaleさん提供-)

- 何名ぐらいで活動されていますか

広島大学の学生が2人と、近畿大学の学生が8人で合計10人ですね。男女比も大体半々ぐらいです。

- 学生だけで運営されているんでしょうか?

広島大学公認団体ではありませんが、協力してくださっている先生がいます。建築系の先生ではないのですが、リノベーションや地域活性に関心のある先生で、その先生と私で活動の方向性などを話し合いながら運営しています。

広島大学の学生だけではなく、他大学の学生も関われるようにしたいというのがあったので、広島大学公認の団体です、という風にはしないようにしています。

- 活動地域は広島県内がメインですか?

広島県内でのプロジェクトが多いですね。先ほどご紹介したプロジェクトは、東広島市の志和町や竹原市の忠海町などでの活動です。徐々に広島県内での活動が広がってきた感じです。

- 現在の活動に関して、新型コロナウィルス感染症の影響はありましたか?

主なプロジェクトは2~3人で進めているのでそこまでの影響はありませんでしたが、例えば小学校のリノベーションは多くの人が関わるプロジェクトなので、2ヶ月程度の延期されました。当初の予定では1か月程度で終わる予定でしたが、夏休みと冬休みの期間の両方を使ってやりましょう、という風になったのはあります。

メンバー間の打ち合わせにはWeb会議ツールのZoomやTeamsを活用しましたね。ただ、特に施工の部分は言葉では伝わりにくいことも多いので、図や絵などを用いて、イメージをすり合わせてます。

- 逆にプラスだった面や、ここ数年の変化はありますか?

変化という意味では、自分達で企画を考えて実行することが難しくなってきた印象です。
コロナ禍の2-3年前は、自分たちで「こういうものを作りたい!」という企画を、大学の助成金プログラムに応募して実行していましたが、今は企業や団体などから依頼を受けて施工のお手伝いをするということが多くなりました。ただ、それは団体としてマイナスというわけではなく、依頼が増えて活動が安定したので、逆に団体の基盤ができてきたなという印象があります。

依頼された案件は、他の企業や団体も関わっていることが多いので、そこで他団体や建築家さんとの繋がりもできたりなどの収穫もありました。

- ありがとうございます。他の学生団体との交流はありますか?

はい。今手掛けている小屋の設計は、同じ大学の他団体と一緒に活動しています。私たちがリノベーションで携わっている「ほたる荘」の倉は、広島大学起業部が活動拠点として利用しています。

- 新規メンバーの募集という面では、コロナ禍で影響/変化はありましたか?

はい。コロナ禍でのメンバー集めには正直苦労しています。これまでは、興味がある方には、実際に現地に見学に来てもらって、一緒に作業しながら活動を知ってもらうことが多かったのですが、オンラインでは実際に現地でどんなことをやってるのかを説明しにくいですし、参加された方も実感が湧きにくいのが現状です。

そういった状況もあり、Instagramの活用も始めました。元々Facebookを活用して、作業内容に関する写真4枚と活動内容をまとめた投稿をしていたんですが、少し堅いと感じていたので、インスタグラムで写真だけを投稿して、活動内容を把握してもらえるように工夫しています。Facebookを使っている若者が少ないということもInstagramを始めたキッカケでもあります。

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(scaleさんのInstagramアカウントから)

- 一方で、メンバーが増えすぎると発生する課題もありますか

はい。scaleは元々大人数のメンバーで作業していたんですが、現場では、人が多いと指示が通りにくいということもあります。ですので、団体として、メンバーの数に制限をかけてきた背景があります。

現場ではもちろん刃物がついたような危険な機械なども使用するので、指示が通らないと、怪我に繋がる恐れがあります。それを防ぐためにメンバー数を制限するのは妥当だと思うんですが、先ほどもお伝えした通り、そもそもコロナ禍でメンバー希望者が集まっていないので、そこが悩みの種ですね。

- メンバー集めもですが、活動資金に関して困っていることはありますか

そうですね、活動資金をどう集めるか?に関して、少し苦戦しています。以前は、自発的なプロジェクトである「小屋の設計」で大体10万円程度、「ピザ窯制作」のプロジェクトでも大体15万円程度のお金を、広島大学の学生団体に対する助成金で賄ってきましたが、現状はそれが難しい状況です。

やはり学生からの自発的なプロジェクト、やりたいことを実現していくには、それなりの予算の確保が必要だなと思っています。

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(ピザ窯作りの様子 -scaleさん提供-)

- 活動資金の問題は多くの団体が抱える悩みですよね。例えば他には、Web会議ツールの有料プランの提供や交通費の補助などあるとどうですか?

そうですね。そういうのがあると非常に助かりますね。現在のプロジェクトでも、活動地域がメンバーの住んでる地域から離れていることもあり、交通費の面でも支援を受けることができると所属メンバーの負担が減って嬉しいなと思います。

- ありがとうございます。話は変わりますが、城本さんはなぜ代表を務められているんですか?

代表になる前、一番scaleの活動に参加していたっていうのはあるんですが、ここ2-3年は少人数になってきて、団体を存続されるかどうかの議論がされている中で、「やっぱり活動を続けたい」という思いがあったので、代表に立候補しました。

ただ私はいま学部4年生なので、団体内で、次の代表候補が出てくると嬉しいなと思っています。

- そうだったのですね。それでは最後に今後の展望をお聞かせください!

活動の幅をもっと広げたいと思っています。現在メインで手掛けている「施工」も、現場での経験として大事なのですが、それだけではなく、団体として以前開催していた建築系学生向けの座談会などは、コロナがおさまってきたら再開したいなと思っています。

- ありがとうございました!

取材後記(インタビュアー:大嶋)
scaleさんはメンバー数がかなり多い方ではないものの、幅広いプロジェクトを長年続けてきており、地域からも信頼されていると感じました。メンバーを大人数抱えない理由も、現場での怪我の発生を考慮されての判断で、学生団体としてはかなり冷静な判断をされていると思います。今後は、今の活動に加え、団体としての自発的なプロジェクトや、建築系の学生向けの講演会なども再開させたいとのことで、新しいメンバー募集に苦戦されているとのことでしたが、scaleさんの今後が楽しみです!

協賛企業からのお知らせ

今回の取材プロジェクトをご支援いただいている、トランスコスモス株式会社からのご案内です。

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トランスコスモス株式会社は1984年に建設・住宅業界向けCAD運用サービスを提供してから今日に至るまで38年間の歴史を持つ一級建築士事務所です。ハウスメーカーやゼネコン等、建設業界の全てのお客様企業に対し、「業務の標準化・効率化及びDigitalの推進」を行っています。当社では現在、2023年4月入社の新卒採用として「建設設計エンジニア・土木設計エンジニア・DXエンジニア」の3職種を募集しております。最先端の技術を用いた次世代の設計に興味がある方は以下のURLよりエントリーください。
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https://www.trans-cosmos.co.jp/saiyou/chuuto/bis/



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