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政府の文化芸術推進基本計画に「メタバース」が明記、VR文化を振興する政策が実現へ

政府の諮問機関である文化審議会は、2022年12月22日、「文化芸術推進基本計画(第2期)(中間報告)」を公開した。この報告書は、2022年6月に文部科学大臣が文化審議会に対し行った諮問である「新時代に求められる文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進について」に対する取りまとめに位置付けられている。

文化芸術推進基本計画は,文化芸術基本法(平成13年法律第148号)に基づき,文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため,政府が策定するものです。

文化芸術推進基本計画(第1期)の閣議決定について

報告書は全56ページからなり、日本の⽂化芸術を取り巻く状況から⽂化芸術政策の中⻑期⽬標まで、詳細な施策が提示されている。

特に注目するべきは、メタバース等のデジタル文化への言及である。「デジタル技術を活⽤した⽂化芸術活動の推進」が重点取組として掲げられており、「デジタル技術を活⽤した⽂化芸術の振興を図るとともに、その有効性や課題を明らかにする」といった踏み込んだ記載も見られる。

Web3.0 時代において、AI に代表される急速なデジタル技術が、個⼈の創作活動を中⼼とし た経済活動(クリエイター・エコノミー)の発達をもたらす中、コンテンツ創造の⾼速化や⼤量化を加速させる状況や NFT やメタバースを活⽤した表現形態の多様化に対応すべく、デジタル技術を活⽤した⽂化芸術の振興を図るとともに、その有効性や課題を明らかにする。

重点取組7 デジタル技術を活⽤した⽂化芸術活動の推進

報告書には「Web3.0 にふさわしい、急速に進化する AI 技術等を活⽤した⽂化芸術活動の推推」「DX 時代に対応し、権利保護と利⽤の円滑化を踏まえた著作権制度・政策の推進によるコンテンツ創作の好循環の実現」「博物館資料等のデジタル・アーカイブ化の促進、AI 技術等を⽤いた⽂化財の保存・活⽤」「⽂化芸術と科学技術をつなぐ研究開発の促進」といった具体的な施策が並び、その本気度もうかがうことができる。

これらの施策は、NPO法人バーチャルライツが2022年から行っていた政策提言の内容と重なる部分が多く、VR文化の振興という政策の実現にまた一歩前進した形となる。

特に、NPO法人バーチャルライツは文化庁の行政官や文化審議会の委員と複数回の意見交換を行っていたことから、念願のVR文化振興政策の実現向けた施策とみることができる。

 第一に、文化庁の各種見解について基本的には賛同、更なる施策推進の立場を表明させていただきました。また、持続可能なメタバースを実現するため経済分野のみならず文化、福祉分野での活用を模索することが重要である旨の意見を述べたほか、Web3.0の考え方がクリエイターとユーザーに中長期的なベネフィットを提供できるのか慎重に見極める必要性についても述べました。後半のディスカッションでは、多様で自由な表現活動を担保することがメタバースの文化振興において極めて重要であるとの見解を共有したほか、その他、個別具体的な施策の提案を行いました。

バーチャルライツからの意見
メタバースの文化振興に向けてNPO法人や文化団体が文化庁と意見交換

また、「⽂化芸術を通じた地⽅創⽣の推進」といった重点取組では⽂化芸術資源の地方創生活用に関する記述が見受けられ、これらの施策は地方創生SDGs官民連携プラットフォームのメタバース分科会においてNPO法人バーチャルライツが推進する「メタバースを活用した地方創生のベストプラクティスの創出」と概ね一致する。

内閣府「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」メタバース分科会

VR文化の振興の実現に向け、今後も政策動向に注視していく必要がありそうだ。

著者:SUKANEKI
NPO法人バーチャルライツ理事長

※掲載されるオピニオンは著者個人の見解であり、NPO法人バーチャルライツ公式の見解ではありません。

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