北極星

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北極星

WordPressを使いこなせずにnoteに流れてきました。競馬を中心にギャンブル本の読書記録をまとめます。 ブクログ本棚→https://booklog.jp/users/npol

最近の記事

スポーツノンフィクション 咬ませ犬 後藤正治

競馬の世界で有名な後藤正俊氏ではなく、後藤正治氏の作品。 5つの雑誌記事を1冊にまとめたもので、ボクシング、野球2軍監督、ラグビー、登山、そして競馬厩務員について書かれている。 競馬厩務員について書かれた「ライアンの蹄音」は、題名の通り、メジロライアンを担当されていた奥平厩舎の小島浩三氏についての作品。 ほかにもメジロドーベルやエイティトウショウなどを担当されていたのだというから凄い。 クラシックの惜敗、マックイーンに勝利した宝塚記念、その後の苦悩など、メジロライアンにつ

    • 奇蹟の馬 サイレンススズカ 柴田哲孝

      柴田哲孝さんといえばライスシャワー本。 内容を見ずに、自分が持っていない柴田さんの本が平積みになっていたので買ってしまった(ハルキ文庫がなんなのかも分かってなかった)。 サイレンススズカほか、メジロパーマーやユキノビジン、ウオッカなどの名馬について柴田氏が書いたものをまとめた本。 基本的には過去に書かれたものを集めたもので、その後の各馬の状況などが加筆されている。自分が持っている版だとウオッカの清山調教助手のふりがなが間違ってるのはご愛敬。 ツインターボ、メジロパーマー、ユ

      • 馬産地ビジネス―知られざる「競馬業界」の裏側 河村清明

        アグネスデジタルの天皇賞制覇を機に書かれた本で、日本競馬がかなり暗い時期。新潟三条が廃止され、北海道も危機の最中。 このあと北関東3場が廃止される。 そんな中で、馬産地を巡って色々な人に聞き取りをした、画期的な本。 執筆当時安定扱いのメジロ牧場は既になく、マギーファーム小寺氏についてはネット上に変な噂話が載っている。マイネル岡田氏が勝負を賭けたカームとマイネルエクソンの結果も出ている。 ただ、勝負をしたからこそ成功もあれば失敗もあるので、それを後世からどうこう言うべきでは無

        • 南半球で馬主になる 川上鉱介ほか

          南半球で馬主になるには、という主題で、オーストラリア競馬についての説明がなされている。題名からして全くの初心者が買う本ではないが、ある程度の競馬の予備知識があることが前提の本。 競馬のルール説明は基本的に馬券購入者目線になるので、馬主目線で競馬の制度を見るという本はあまりない。のであるが、馬主目線の説明でも非常に分かりやすく、オーストラリア競馬の概要が頭に入ってくる。 振り返れば自分が競馬を覚えたのはWinningPostだったわけで、元々馬主目線で競馬を見るというのは競馬

        スポーツノンフィクション 咬ませ犬 後藤正治

          競馬感性の法則 角居勝彦

          週刊ポスト連載を再編して書籍化したもの。小学館新書から出ているのもその関係ですね。 最初の1・2章はレースごとのコラムをまとめている。 そのため、競馬を知っている人には当たり前の話も多く、世界の角居先生に書かせる話じゃないだろ、というものもある。 3章以降は角居先生の調教論なども出てきて、読み応えが出てくる。 厩舎を育てるためには「1人の腕利きより5人の平均的厩務員」という考えも出てきており、もしかしたらこの時点で早期引退も考えていたのかな、という気もする。 引退後の角

          競馬感性の法則 角居勝彦

          注文の多い競馬場 高橋直子

          高橋さんが海外の競馬場に行った際のエッセイが中心。岡部幸雄騎手のマカオダービーから始まるマニアックさです。 関係者への密着取材、という種類のエッセイではないため、変に現場に突っ込みすぎた話はなく、それゆえ当時の現場の雰囲気が伝わってきます。読んでいてそれが非常に心地よいです。 登場するラムタラやホワイトマズルは日本で種牡馬になっていますし、オークス馬エリンコートの母エリンバードの現役時代の話などもあり、親世代の馬の現役時の空気感も分かるのがよいですね。 当時の配偶者であ

          注文の多い競馬場 高橋直子

          挑戦!競馬革命 角居勝彦

          日本内外で素晴らしい実績を誇る、角居調教師の本。 2007年、ウオッカがダービーを勝った年に出た本。ご自身の歩みを振り返るような展開になっている。 酒でやらかしたとはいえ、基本的には人格的にしっかりした優しい先生なので(私が知っているのは引退を決めた後の先生なので、現場での姿は知らないが)、誰かを批判するような突っ込んだ暴露話はない。 それでも、中尾厩舎時代の話などは今となっては本当に遠い過去の話で、ナリタハヤブサを担当されていたことなどはもちろん知らなかったし、「世界の角

          挑戦!競馬革命 角居勝彦

          靄に消えた馬―園田の郷から 宇田遥

          小説家になろう、というサイトで全文無料で読めることを知ったのは、読み終えた後。 オオエライジンを見て人生が変わった人たちをめぐる小説である。 もちろんオオエライジンの競走成績とともに話は進んでいくが、あくまでまわりの人たちについての小説であって、オオエライジンそのものについての話はない。 正直なところ、JRAと南関メインで見ているとオオエライジンについての印象はそんなに強いものでは無く(大井に献花台が出ていたことはなんとなく知っていたような気がする)、クリフジの血をひいて

          靄に消えた馬―園田の郷から 宇田遥

          競馬の終わり 杉山俊彦

          ロシアが日本を占領し、日本の首府は新潟に、中山競馬場は荒廃し、菊花賞は大ロシア賞になった、という世界でのSF作品。 ロシアが日本を占領、というのは現在(読んだのは2022年4月)のロシアによるウクライナ侵略を思うと変なリアリティがあります。この時期に読んだのは完全に偶然(そもそもロシアものだとも知らなかった)。 おそらく競馬が分からないとかなり辛い作品で、解説にもあるとおりそのような作品が新人賞をとったというのは凄いことだと思います。 作家さんはおそらく競馬ファンで、途

          競馬の終わり 杉山俊彦

          千三百四十一勝のマーチ―選手生活32年思い出すまま 松本勝明

          2021年3月6日に亡くなった松本勝明氏の自伝。昭和58年の作品。 1949年という、本当に初期に競輪選手になった松本氏が1982年に引退するまでの作品なだけに、松本氏の歩みはまさに日本における競輪の歩みそのもの。競輪の歴史を選手視点で見ることができる、貴重な本である。 競輪学校が無い時代にデビューに至る流れ、鳴尾事件の衝撃、宝ヶ池競輪場の廃止、選手宿舎が無い時代の雰囲気、高原永伍への思い、海外遠征の様子など、どれをとっても興味深い(JKAは競輪学校創設と鳴尾事件の関係を

          千三百四十一勝のマーチ―選手生活32年思い出すまま 松本勝明

          春が来た 油来亀造

          7レース(章)からなる小説集。小説というよりは、小説のように見せかけたエッセイ集のような感じ。 序盤3レースは軽い感じで既出本や冠名について語るような内容なのだが、だんだんテイストが変わってくる。 最後の第7レース、柴田政人への思いをつづったパートが全体の4分の1程度を占めており、これがなんとも読み応えがある(下手な柴田政人伝記よりもよほど柴田政人の伝記として読める)。そして、思いが詰まりまくったストーリー展開なのに、非常に読みやすい(エッセイでなく小説にした効果かも)。

          春が来た 油来亀造

          馬主が書いた一日一言 西山茂行

          1987年秋~1991年春までの、西山氏がサンスポに書いたコラムをまとめた本。 Twitterでの西山氏の人気も相まって、一時期Amazonでの古本相場が高騰していた記憶だが、今はまた1000円台に落ち着いていた。 西山氏の期待馬についてや、シェリフズスターの購入~JC道川騎手出走プラン、急激に西高東低になる様子、馬主会vs社台問題、大橋巨泉氏の降板、「馬体重屋」という人の存在など、リアルタイムな状況を知ることができてとても面白い。なんなら、目次を眺めているだけでも楽しめる

          馬主が書いた一日一言 西山茂行

          挑戦: サクラローレル物語 月本裕

          筆者は小島良太調教助手と仲がよかったようで、サクラローレルのフランス遠征でも密着取材が許されていたようである(188頁に書かれている内容を読むと、スポーツ新聞や雑誌などは厩舎取材が禁止されていた様子)。 早いうちから海外に目を向けていた全演植氏と小島太騎手のフランスへの思いや関わりから始まり、最後の1/3が遠征にまつわる話となっている。凱旋門賞へ向けての乗り替わりの話なども、横山典騎手と良太助手の関係性の深さもあって、詳細。 ただ、全編を通じて横山典弘騎手には取材をしていな

          挑戦: サクラローレル物語 月本裕

          野球賭博と八百長はなぜ、なくならないのか 阿部珠樹

          note側にアップするのは2024年3月だが、読んだのは2022年。 書かれたのは琴光喜関らが野球賭博への関与で引退した2010年で、大相撲が八百長問題で春場所中止にまでなった2011年の議論は含まれていない。が、2011年に論じられた論点はほぼ全て網羅されている。 その意味で、非常にしっかりとした議論がなされていたことが事後的にも証明された本。ただ、まさか携帯電話のメールにしっかりした八百長の証拠を残す力士がいるとは誰も予想できなかっただろう。 本としては、「賭博は八百長

          野球賭博と八百長はなぜ、なくならないのか 阿部珠樹

          馬の瞳を見つめて 渡辺はるみ

          ナイスネイチャの渡辺牧場に嫁がれた方による本。昨今の引退馬支援ブームの中で話題に上がることも多く、絶版本ながらAmazon上でも値段が乱高下している。 読む前は、例によって引退馬支援のためのお涙本かと思っていたが、全く違っていた。サラブレッドを扱う牧場の、極めてリアルで壮絶な生と死の経験談が続く。 経済的な理由から健康な馬の命を絶つという、極めて厳しい場面も登場する。ご本人も「一方では、若く健康な子たちを先にあの世に行かせ、もう一方では、年とった不健康な子を生き長らえさせ

          馬の瞳を見つめて 渡辺はるみ

          世界一の馬をつくる 前田幸治

          キズナ~ワンアンドオンリーでダービー連覇という偉業を成し遂げた2014年に書かれた本。誰もがうらやむダービー制覇を2年連続で成し遂げた直後の本なので、基本的に自信に満ちあふれているし、もちろんその資格がある。というか、その後ノースヒルズはコントレイルで三冠を達成するのだから、これでもまだ不足していたといえるかもしれない。 1984年に牧場を開設し、「すぐに生産馬でG1を獲れると思っていた。4,5年もすれば、桜花賞もダービーも全部勝てるだろう」と考えていたのは凄い。 これを無

          世界一の馬をつくる 前田幸治