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春が来た 油来亀造

7レース(章)からなる小説集。小説というよりは、小説のように見せかけたエッセイ集のような感じ。
序盤3レースは軽い感じで既出本や冠名について語るような内容なのだが、だんだんテイストが変わってくる。
最後の第7レース、柴田政人への思いをつづったパートが全体の4分の1程度を占めており、これがなんとも読み応えがある(下手な柴田政人伝記よりもよほど柴田政人の伝記として読める)。そして、思いが詰まりまくったストーリー展開なのに、非常に読みやすい(エッセイでなく小説にした効果かも)。

序盤では、(おそらく)山口瞳氏や石川ワタル氏をネタにしたりしているのだが、さすがに知り合いじゃない人をここまでネタにはできないだろうし、油来さんって別の名前で執筆してるのかな?油来氏の名前で検索しても出てこないのが不思議。

なお、解説で北上次郎(目黒考二)氏がこの本を激賞しており、油来氏の名前で検索するとほかのところでもこの本を薦めまくっているのが出てきてびっくり。
この解説でも様々な小説が紹介されていて、実はこれも読む価値が大きい。油来氏の文章は、藤代三郎氏の文章にも影響を与えてそう。


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