野球賭博と八百長はなぜ、なくならないのか 阿部珠樹
note側にアップするのは2024年3月だが、読んだのは2022年。
書かれたのは琴光喜関らが野球賭博への関与で引退した2010年で、大相撲が八百長問題で春場所中止にまでなった2011年の議論は含まれていない。が、2011年に論じられた論点はほぼ全て網羅されている。
その意味で、非常にしっかりとした議論がなされていたことが事後的にも証明された本。ただ、まさか携帯電話のメールにしっかりした八百長の証拠を残す力士がいるとは誰も予想できなかっただろう。
本としては、「賭博は八百長のゆりかご」というキーワード(検索しても出てこなかったのだけれど、言葉の響き的に海外で使われている用語かもしれない)を軸に、八百長とは何か、何が許されて何が許されないのか、ファンは何を期待しているのか、などをしっかりと論じている。
日米の野球賭博の事例(必ずしも八百長が成功しているわけではないこと)、八百長が実際に成功するにはプレイヤーの能力が重要であることなど、大変に興味深い話が続く。
阿部珠樹さんのお名前は別冊宝島競馬読本世代には非常に親しみがあるのだが、文章関係から離れていたため、阿部さんが2015年に亡くなっていたことをこの本を読むタイミングで知った。
今阿部氏が再度八百長について論じるとすれば、金沢の”沖ダイブ”事案や笠松の事件、あるいは競艇の藤原菜希選手の事案や峰竜太選手の事案などをどのように書くだろうか。また、近時の米国大リーグでの水原通訳問題なども議論に上がるだろうか。
とにかく、八百長について非常に地に足がついた議論がなされており、参考文献の引用などもしっかりしている。
八百長問題に関しては、著名人の名前をバンバン出せば注目も上がるし実際に売上も上がるのだろう。しかし、こういう冷静な議論が進むことが極めて重要だとあらためて感じさせられる。
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