【ご報告】放課後現場 編(前編):自治体担当者向け勉強会『こどもまんなか社会』をSDGs×公民連携×放課後でつくろう!
2023年4月にこども基本法とこども家庭庁が同時にスタートし、現在、各自治体で求められているのは「こどもまんなか社会」への取り組み。子どもを中心とした社会づくりには、地域人材、企業、NPOなど様々なセクターによる協力が欠かせません。そこで、放課後NPOアフタースクールでは、各市町村の実践事例をご紹介しながら、実現に向けて何ができるのかを学び合う勉強会を開催しました。
〈Day2〉放課後現場 編
実践事例から考える 地域を活かした放課後のつくり方
日時:7月19日(水)15:00~17:00
会場:エル・おおさか(大阪府立労働センター
地域と企業の連携をテーマに学びを深めた1日目(6月22日)に続き、2日目の勉強会では学童保育・放課後子ども教室の実践事例をご紹介。兵庫県南あわじ市体育青少年課で青少年育成係長を務める柏木映理子さん、福島県楢葉町地域学校協働センター長の猿渡智衛さんをゲストに招いて、「地域を活かす」「地域と共に」という視点から、それぞれの地域での活動についてお話しいただきました。
当日は14の自治体から20人がご参加。ゲストお二人のお話、参加者同士の交流などを通して、今後の取り組みに役立つヒントや新たな学びを得る集いの場となりました。
■実践事例紹介:南あわじ市「アフタースクール事業」~「なりたい自分を見つける」特別な居場所~
最初に登壇いただいたのは南あわじ市教育委員会の柏木映理子さん。学童保育の事業に携わって6年目になる柏木さんは、まず南あわじ市には44,688人(約2万世帯 ※2023年6月30日現在)が暮らしていること、小学校は全部で15校(児童数2,237人)あることなど、まちの概要と教育の現状をお話ししてくださいました。
さらに、たまねぎやビーフ、乳製品などの特産品、観光・産業などの紹介があり、本題へ。
現在、柏木さんが所属する南あわじ市教育委員会体育青少年課で進めている放課後事業は以下の3つです。
①放課後児童健全育成事業(学童保育)
②放課後子ども教室事業
③アフタースクール事業
①は子ども家庭庁(令和4年まで厚生労働省)、②は文部科学省の管轄事業のため、自治体によっては①②を別の部局が担当している場合もありますが、南あわじ市ではどちらも教育委員会が担当しています。
①の対象は「保護者の就労等により、放課後留守となる家庭の児童(1~6年生)」で開設日は日曜・祝日を除く毎日、②の対象は「すべての児童(1~6年生)」で開設日は週1~3日。①には専門の資格を持つ放課後児童支援員2名以上の在籍が義務付けられ、②では主に地域住民が見守りや遊びの支援を行っています。
現在、南あわじ市では15校ある小学校の校区で、①の学童保育を13か所、②の放課後子ども教室を2か所で開設。そして、「この2つの“いいとこどり”」と柏木さんが表現するのが3つめのアフタースクール事業です。
柏木さん「本市では守本憲弘市長が教育にとても力を入れておりまして、『学ぶ楽しさ日本一』という方針を打ち出しています。その実現に向け、8つの『学ぶ楽しさ』を意識した取り組みを進めていく中で、平成31年度(2019年)に多種多様な体験プログラムを充実させたアフタースクール事業をスタートしました」
その前年(2018年)、当団体に柏木さんから連絡があり、アフタースクール事業の立ち上げに協力させていただきました。以降も市からの委託を受け、運営をお手伝いしています。
初年度はモデル校として1校で開設、翌年から毎年2校ずつ増やし、現在は9校で実施。令和8年度には全15校の開設を目指しています。
アフタースクール開設日時や場所(小学校の空き教室、公民館など)、利用料(月5,000円)は学童保育と同じですが、現場には専門講師や自身の得意なことを教える「まちの先生」がスタンバイ。滞在時間のうち30分~1時間は様々な体験プログラムを提供しています。
その内容はダンス、プログラミング、動画編集、スポーツ、将棋、書道、英語、音楽、また企業が提供するものなど多岐に渡り、なかには地元出身のシンガーソングライターや棋士、現役サッカー選手が指導するプログラムも。ちなみに、趣味のウクレレを直接指導しているのは守本市長です。
柏木さん「例えばダンスは継続的なプログラムで、その成果を地域のイベント等で発表する機会があるので、子どもたちが頑張って披露したいというモチベーションにつながっています。将棋はコロナ禍をきっかけに、オンラインで他の拠点のメンバーとも対戦できるようになったことが逆にプラスになりました」
実際にアフタースクールに通う児童、保護者からはこんな感想が寄せられました。
アフタースクール事業を開始してから、子どもたちを中心に地域の活性化は着実に進んでいます。とはいえ、人材の確保・育成、施設(場所)や財源の確保などの課題もあります。
人材である「まちの先生」(現在は45人登録)を多く集めるためにチラシを配布したり、口コミで広げてもらったり。高校生のボランティアにも参加してもらっているそうです。
また財源については、学童保育の補助金が対象にならないため、地方創生を目的とした「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用しているとのことでした。ただし、継続的な交付金ではないこともあり、今後の財源確保が課題となっています。
「私たちがアフタースクール事業で目指しているのは、地域の人材が地元の魅力を伝え、まち全体で子どもたちを見守り、育てることです。子どもたちが学ぶ楽しさを知り、なりたい自分を見つけられる特別な居場所になるよう、全小学校での開設に向けて、引き続き進めていきます」と柏木さん。
講演の終わりには、アフタースクールで子どもたちがプログラムを楽しんでいる1分間の動画が上映されました。そこに映し出されたのは、子どもたちのいきいきした姿と弾ける笑顔。映像を見つめる柏木さんの嬉しそうな表情もまた、印象的でした。
~後編へ続く~
後編は福島県楢葉町の実践事例や交流パートの様子です。
https://note.com/npoafterschool/n/n21d2cf73fea3