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コラム「境を越えた瞬間」2023年10月号-萩原はるかさん‐

萩原 はるか(はぎわら はるか)

  • 医学部医学科6年

  • 学生ヘルパー歴2年半

他県でALS当事者の方の元で学生ヘルパーをしている子の話を聞き、「自分も誰かの力になりたい」という衝動を抱いたことをきっかけに、さっちんこと赤沼さんと出会いました。大学3年生の秋に初めてお会いして以来、時には隔日で会うほどどっぷり赤沼さんにハマってしまいました。
現在は学業との両立を図るため、週末メインでシフトに入らせていただいております。

昨年11月にColorier ALS(コロリエ)(チーム赤沼さん)主導でディズニーランドへ行った時のもの


「思いがけないプレゼントで、変わった自分」


 私は赤沼さんと出会うまで「おしゃれ」とは縁遠い人生を送ってきました。大学生になっても基本的には自分で洋服は買えず、誕生日などにかこつけて母に買ってもらうほどでした。
それが一転、今では(時間がある時限定ではありますが)出かける前にメイクをするようになったり、お出かけに合わせて洋服を買いに行ったりするようになっています。


そんな変化のきっかけを私にもたらしてくれたのが赤沼さんでした。


 赤沼さんと出会うまでの私を一言で表すならば「我が道を行くことに一寸の疑問も抱いていない自信家」といった感じでした。言葉を変えるならとても“青かった”と思います。おしゃれに気を使って来なかったこともこれに起因していて、「他の人からの見られ方なんてどーでもいい。私の興味がおしゃれに向かってないのだから気を使えなくても仕方がない。」と思っていました。

 赤沼さんはとても綺麗な方です。お顔はもちろん、身につけるお洋服やアクセサリーもとってもおしゃれなものを身につけています。私が最初に赤沼さんに出会った時、赤沼さんはWHILLという車いすに乗っていたのですが、「なんてスタイリッシュな車椅子を使われているんだろう。」ととても驚いたことを今でも覚えています。
そんな赤沼さんの元でヘルパーをするからには、私もおしゃれと無縁でいるわけにはいきません。
最初の頃は赤沼さんのメイクをするにも、全くやったことのない私は何が何だかで、一緒に赤沼さんの元でヘルパーを始めた同期に手取り足取り教えてもらうものの、、、という状況でした。


赤沼さんはよくお出かけをするのですが、ある日もいつものように「はぎちゃん、今日はお出かけしよう」ということで化粧品屋さんに行きました。
キラキラ空間に圧倒されながら、赤沼さんのお買い物に同行していたら「じゃあこれ2つ。一つははぎちゃんの分。」と。全く予想していなかった展開にびっくり仰天。「これではぎちゃんも練習できるね。」とアイシャドウのプレゼントをいただいたのです。

やりたい人がやればいい、私はメイクをすることに興味もないし、人からどう見られようが気にならないからやらない、という存在だったメイクに、自分の興味の有無に関わらず取り組まなければ機会が訪れました。


これが私が境を越えたきっかけとなる瞬間でした。


 いざメイクに挑戦するようになると、道ゆく人の見方が変わってきます。「あの人もあの人も、あっあの人もメイクしてるじゃん。」と気がつくようになり、普段自分が人から受けている印象は、メイクであったりお洋服であったり「おしゃれすること」によってより素敵にプロデュースされたものだったのだと気がつくようになりました。
おしゃれな人を見て嫌な気分になることはありません。おしゃれをする、見た目に気を使うということは、自分と対面する相手の存在を意識し、その相手を想うということだと気がついたのです。


この「相手の存在を気にかける」という姿勢は赤沼さんの元で働き始めて身についた1番大きなことです。
それまでの自分本位だった自分から、他人のことも考えられるような自分へと変化し始めました。
こどもからおとなに、境を越えることができたのです。


「障害を抱える人の力になりたい。」と意気込んで始めた学生ヘルパー、実際のところは赤沼さんやそのご家族、一緒に働いているヘルパーの皆さんに成長させてもらってばかりです。でもそれが学生ヘルパーの大きな魅力の一つだと思っています。

皆さん、今後とも私の成長のためにお力添えのほど、よろしくお願いいたします(図々しい苦笑)。


松本城の桜です。左が赤沼さん、右が私です。桜の下で写真を撮りに行く日であったため、桜とマッチするよう春らしいラベンダーカラーのお洋服を選びました。


境は至るところにあります。目に見える境もあれば目に見えない境もあります。境がないと壊れてしまうものもあれば、境があるから困ってしまうことがあるのかもしれません。
毎月、障がい・福祉・医療に関わる方に「境を越えた瞬間」というテーマでコラムを書いていただいています。
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