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【生活力向上講座2022】質問ピックアップ!

こんにちは!

今回は、2022年の夏に開講した「生活力向上講座2022」で寄せられた質問の中から、リハビリ職でもある事務局員がピックアップしたものをご紹介します☆

生活力向上講座では、重度身体障がいに関わる皆さまに向けて、
「地域で暮らす」・「地域で暮らすを支える」ための生活力・生活サポート力を身につけよう
というテーマで講座をご用意しています。

皆さんの生活に役立つ何かがあると幸いです!
また、「アレも聞いてみたい」「コレってどうなの?」というのがありましたら、お気軽にコメントやお問い合わせをしてください。お待ちしています。

※各講師が丁寧に回答していますので、抜粋ではなく全文掲載しています。長いものもあるので目次を活用してご参照ください。

※「生活力向上講座2022」を受講された方へは、全講座の質疑応答を共有しています。Googleドライブのリンクをお知らせしていますので、そちらもぜひご覧ください。


体について

  • 体重減少によって予後が悪くなるとありましたが具体的にどんな影響があるのか知りたいです。

【講師 江田より】
体重減少による予後不良については、具体的に何が悪くなるとの報告はなく限定はしていません。神経筋疾患における予後が良い、という状態は“進行がなるべくゆっくりで、身体機能が可能な限り維持できて、生命予後がよいこと”を指すと思います。体重減少が著しかった方の多くに、進行が早くなってしまい、身体機能の低下が顕著にみられた、ということが言われているのだと思います。そうさせないために体重を維持しましょうと働きかけています。
また、体重が減る=栄養がしっかり摂れていない、ということを考えると、エネルギーを作り出すことが出来ないので、体がだるい、疲れやすいなどの症状がでます。疲れやすくなるとあまり動かなくなってしまうので、さらに筋力が低下したり、食欲がわかず食べる量が減るという悪循環に陥ります。病気の進行とは別にさらなる廃用(使わないことによる機能低下)につながってしまうので、悪循環に陥らないように、食事(栄養)・運動(軽めの)・人や社会との交流など多方面から考えてみることも必要だと思います。
また、風邪をひいたりすると咳や痰がらみが呼吸機能に負担をかけ、進行を助長させることがあります。低栄養は体力や免疫力も低下させるので、今ある体を守るためにも、食事(栄養)をしっかり摂る工夫をしていただき、もしくは胃瘻の造設も積極的な治療のひとつとして検討していただければと思います。

江田真紀(吉野内科・神経内科医院/理学療法士)


人工呼吸器について

  • 分時換気量アラームが鳴った時は吸引を行い対応していますが、他にも対応した方が良いことがあったら教えてほしい。

【講師 江田より】
分時換気量アラームには上限と下限があります。臨床的に下限アラームをつけることが多いのですが、分時換気量下限アラームで吸引対応しているということであっていますか?
分時換気量下限アラームは、1 回の呼吸で入っている空気の量が一定時間減っていると鳴ります。どのくらい減ったときに鳴るようになっているのかはアラーム設定次第ですが、空気が減っているので少し苦しく感じたり、SpO2 が下がったりすることが予測されます。
おそらく痰がある時、空気の通り道を邪魔しているので送られる空気の量が減ってしまった結果です。
その状態で吸引するとさらに空気の量は減るので、当事者の方に苦しくないか確認し、SpO2 が下がっていないか、アラーム解除されたあとでちゃんと SpO2 が戻っているかを確認してあげてください。
送られている空気の量が減っていることで鳴るアラームですので、どこかから空気が漏れている状態でも発生します。吸引対応しても改善されない場合には、回路の接続やカフ漏れがないかを確認していただけるとさらに安全だと思います。

江田真紀(吉野内科・神経内科医院/理学療法士)


カフアシストについて

  • カフアシストのいいところは、大変伝わりました。逆にデメリットなどあれば、教えてください。私も最近肺が膨らまないので、今回の講義を聞いて、取り入れてみたいな、という気になっています。ドクターは重々承知だと思うのですが、カフアシストで空気を送り込みすぎて、肺が破れたりすることはないのでしょうか?私はSMAですが、幼少期より片肺です。残っている方の肺も、普通より小さいし、側弯もあるので心配です。

【講師 伊藤より】
ご質問ありがとうございます。いきなりカフアシストを実施するのではなく、胸郭のストレッチやバックバルブマスクでの強制吸気、徒手的な呼吸介助から始め、肺や胸郭の柔軟性を確保することから始めることが必要だと思います。その後のカフアシスト導入に際しても低い圧力から徐々に始めていくことが重要と思います。側弯もあるということですので姿勢が崩れにくく、肺も潰れにくくなるようなポジショニングの検討も必要と思います。カフアシストには禁忌もありますがリスクよりも実施による効果が上回ると判断された場合は主治医の指示により導入されることもあるので、主治医の先生ともよく相談し導入における検討は必要と思います。

伊藤菜緒(境を越えて/理学療法士/介助者)

【講師 本間より】
カフアシストのデメリットとしては、カフアシストの禁忌と照らし合わせて考えるのが良いと思います。カフアシスト活用の相対的禁忌として
①不整脈や心不全のある方
②人工呼吸による肺障害の方(人工呼吸を使うことで肺に障害が生じてしまった方)
③気胸や気縦隔の疑い(肺胞が破けるなどして肺から空気がもれてしまい肺が小さくなってしまっていることが考えられる時)
④気胸や肺気腫の既往(前に一度でも肺に穴があいた経験があったり、肺を作る組織が壊れて元にもどらなくなっているようなものがある場合)
⑤気胸の基になる肺の破れやすい部位(Bulla)がある場合
等です。
なので、ご質問者様の片肺の状態や片肺であることで①~⑤に当てはまらないかを医療関係者と確認することがまず大事であると考えます。その上で、この①~⑤はあくまで相対的禁忌であり、絶対的禁忌ではないということを念頭に入れていただきたいです。実際に①~⑤の状態の方でもカフアシストを活用することで胸郭が柔らかくなったり、痰は排出できる効果があるため取り入れられている方はおります。
また、カフアシストの副作用としては、気胸、不整脈、頻脈/徐脈、不快感、悪心・嘔吐・胃への空気流入(腹部膨満)、循環動態への影響(血圧や頭蓋内圧の変動)、腹圧変動、耳への圧負荷による痛み、胸郭が広がることによる伸展痛、使用直後の喉の痛み、連続使用による過換気、新生児や乳児などの未発達な肺で使用した場合に肺胞虚脱(肺胞がつぶれてしまう(によすSPO2低下等があげられています。
ですが、実際私自身が現場導入していて出会った副作用は、
①胃への空気流入(腹部膨満感)
②耳の軽度の痛み
③胸郭が広がることによる伸展痛
が多いです。①については、吸気の時にしっかりと気道確保することや吸気圧力、時間の調節なので改善できます。②については、一瞬が多いです。③については、実施前に胸郭をしっかり柔らかくしておくこと、吸気や呼気時に胸郭を共に他動的に動かすこと、弱めの圧から徐々実施することで改善できます。ご参考になれば幸いです。

本間里美(境を越えて/理学療法士)

【講師 片山より】
私が思うデメリットは、本間さんがおっしゃった相対的禁忌で挙げられたことに加え、使用(導入)するスタッフに大きく影響を受けるということです。
在宅で保険適応になって 10 年経過しましたが、まだまだ認知不足は否めず、いくら主治医でも専門医以外であれば、全く得体の知れない装置かもしれません。導入の前に、肺が膨らまない要因を考えます。
①純粋に、呼吸機能(肺活量)の低下
②肺活量はさほど変わらないが息が吸いにくい。
①の場合であれば、血中の二酸化炭素を測定し、呼吸器の導入、または導入しているのであれば設定の変更を考慮します。②の場合であれば、伊藤さんがおっしゃったように日常生活での姿勢(胸郭・特に頸部は大事)に影響されている可能性があります。他に、疲労、無気肺、分泌物の貯留があり、息が吸いにくいことも考えられます。そういう場合も、NPPV の導入や、装着時間の延長、設定変更、そしてやはりカフアシストの導入を検討します。
個人的にはバッグバルブマスクも使用者の技量に大きく影響を受けると思っています。もちろん、慣れている方であれば使っていただくのは問題ありませんが、あまり得意でない方でしたら、毎回一定の圧が来るカフアシストの方が安心かもしれません。
ここで、もし NPPV での呼吸器の設定が従量式でしたら、呼吸器を使ってのエアスタックでも十分に胸郭を拡げる可能性があります。エアスタックというのは、呼吸器から送気された空気を一回一回吐くのではなく、2 回、3 回分を喉を締めて胸郭を膨らませる方法です。
さらに、もうひとつ別の手技ですが、舌咽呼吸という方法です。世間では、フリーダイビングなどに用いられるパッキングという呼吸法として認知されているかもしれません。少量の空気を舌や咽頭の開閉を使って飲み込むように肺に送り込む方法で、肺活量の何倍も入れられる方もいます。いざ、導入となった場合のコツですが、カフトラックというトリガー機能を使って導入するといいと思います。患者さんがマスクを当てられた状態で、息を吸うと反応して送気が始まりますので、同調性が非常に良く不快感が少ないと思います。まずは、肺活量以上の一回換気量を目指し、徐々に上げていくと良いでしょう。
※慣れたらカフトラックは off にしてください。吸気がごくわずかな場合、反応せず作動しないことがあります。

片山望(国立病院機構仙台西多賀病院/理学療法士)
  • 車椅子でカフアシストをしているのですが、横になってやったほうがいいのですか?

【講師 片山より】
私の講義の中では寝ている方もいれば車いすに乗った状態で行っていた方がいたかと思いますが、姿勢に制限はなく、どのような姿勢で行っていただいて構いません。ただし、一日の中で一番長くとっている姿勢やカフアシストを使いそうだなと思う姿勢(例えば食事を摂る際の姿勢など)で練習をしておくと安心かもしれません。
さらに余裕があれば、肺の様々な部位を拡げるという意味で姿勢を変化(臥位、側臥位、座位など)させてあげることもいいかもしれません。様々な姿勢で姿勢に制限はありませんが、車椅子で行う際はマスクを強く押し付ける為、体や頭が後ろに倒れないよ
うにしっかりと支えるなどの注意が必要です。

片山望(国立病院機構仙台西多賀病院/理学療法士)
  • カフアシストをする時のベッドの高さについてです。まずパーカッサーを5分する時はベッドの頭の高さは16度で、次に排痰をする時はベッドをフラットにしてする様に、買った当初に教えられたんですがそういう決まりはありますか?

【講師 片山より】
まず結論から言いますと、ここまで細かく決まりはありません。患者さんそれぞれだと思いますので、もしかするとその方法が質問者様にとって最適かもしれません。
ただ一つ確認させてください。色々と試してみた結果の使用方法でしょうか?
私の経験上、パーカッサーで使用するラップ(胸郭に巻く)は、背臥位で実施すると、体の重さで背側の方があまり振動しません。分泌物の移動を狙っているのであれば、もう少しhead-upして角度をつけてもいいかもしれませんし、可能であれば側臥位、車いす座位も効果的です。カフアシストも同様で、排痰目的だけではなく、無気肺予防や胸郭の可動性維持目的も兼ねて、可能であれば様々な姿勢で実施して効果的な姿勢を検討してみるといいと思います。

片山望(国立病院機構仙台西多賀病院/理学療法士)


姿勢について

  • 学校に通うようになり車椅子に乗る頻度が増えましたが、並びに側湾が気になります。何°ぐらいのギャッチアップならいいのでしょうか?もちろん休み時間にはフラットにして体をほぐしています。

【講師 伊藤より】
ご質問ありがとうございます。車椅子に乗ること、ギャッチアップすることのメリットは講座でお伝えした通りです。しかし、側弯を伴っている場合には車椅子にも色々検討が必要と思います。リクライニングの角度について、具体的に何度ということは言えませんが、角度を上げれば上げるほど時間の経過を共に側弯している側に姿勢が崩れやすい(潰れやすい)です。
車椅子上の工夫でしたら姿勢保持のためのベルトの装着や、背もたれを側弯の形に合わせてオーダーメイドで作ることも可能です。ただ成⻑に伴って車椅子の変更が必要になってくると思います。購入について、例外はもちろんありますが、基本的な耐用年数が決められているので、成⻑や身体状態の変化に対応しなければならない難しさはあるかと思います。休み時間など定期的に車椅子をフラットにしたり、身体を動かしたりは今後も継続していただければと思います。

伊藤菜緒(境を越えて/理学療法士/介助者)

【講師 片山より】
学校に行けることは素晴らしいこと、是非続けたいですね。側弯は姿勢を保持する筋力が低下することや⻑時間の偏った座位で助⻑されます。もしかすると授業一コマを頑張って起こして、休み時間に休憩だけでは、体が疲れてしまうかもしれません。授業中でも必要な時だけ体を起こして、必要のない時間は背中や頭頚部を車いすに付けて休められるといいでしょう。
ご質問の角度についてですが、必ず角度を何度にしなければいけないというのはなく、車いすの機能や脊柱の変形具合で皆さんそれぞれです。身体や頭頚部が前後左右に倒れずに安定して、呼吸や飲み込みが楽な姿勢であれば何度でも構いません。学校ですと、その倒した状態でも授業を受けられる環境を考えてもらえれば、頑張って体を起こして授業を受けなくてよくなるかもしれません。パソコンやタブレットの使用、モニターなどの位置や高さの調整などを学校の先生などに相談してみるのもいいかと思います。

片山望(国立病院機構仙台西多賀病院/理学療法士)


コミュニケーションについて

  • 患者さんが口パクで話したいと言うのですが...

【講師 山本より】
いきなり固有名詞を言われると読めないので、どういう場面なのか文脈なのかを把握すること。一文字ずつ読もうというのはとても難しいため、想像しながら読んでいます。

山本直史(吉野内科・神経内科医院/言語聴覚士)
  • 指差し文字盤ですが、プラスチックにどのように印刷しているのですか?作る工程をもう少し詳しく教えて欲しいです。穴を開ける工具もどのような物かもう一度見せて欲しいです。


情動制止困難について

  • 情動制止困難に ついてもっと勉強したいと思います。どんな方法がありますか。

【講師 本間より】
ご質問ありがとうございます。ご質問者様が支援者の方であるか当事者の方であれば、情動制止困難を理解しようという姿勢そのものが良い人間関係に必ず繋がってくると思っております。
また支援者の方であれば、どれだけ当事者の方を思っていているかということが伝わりとても嬉しく感じます。是非、一緒に考えていっていただきたいです。
今回講義でご紹介した内容が現時点での情動制止困難についての整理になりました。この基準で実際に現場であてはまるか?また Q4 の介助者の方の情動制止困難の対処法にあったようにどのような時に生じやすいのか?を記録として残しておくことが一番の学びになるかと感じます。

本間里美(境を越えて/理学療法士)


緊急特別企画を2月18日開講!!

今回の質問ピックアップでも、カフアシストに関するものが多くなっています。
「自分はどうなんだろう?」「あの人はどうなんだろう?」と思った方、ぜひ上記ページをご覧ください!

また、2023年夏には「生活力向上講座2023」を開講いたします!
2022年に取り扱ったベーシックな内容(基礎編)はより丁寧に、そしてさらに、アドバンスな内容(応用編)を盛り込んでいく予定です。

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